彼氏彼女役
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~彼氏彼女役~
教室の中はムワッとした熱気と、油や溶接の臭いがこもっていた。
窓を開けても、その臭いはしぶとく残り、それはお昼休みになっても消えなかった。
私はサエコに、
「今日は教室が油や溶接の匂いで臭いから、空き教室で食べよー」
と声をかけた。
「じゃあ、他のクラスの子にも連絡するね」
サエコがスマホを手に取る。
伊達工は女子生徒が少ないため、お昼はいつも他学科の子たちと集まって食べるのがお決まりだ。
集まっても片手で数えられるくらいの人数だけど、そのアットホームな感じが私にはちょうどいい。
そんな中、普段は彼氏と食べるからと誘いを断っていた夏目さんが、今日は珍しく参加してくれていた。
みんなで恋バナや次の授業の話で盛り上がっていると、
「ボディガードを頼むなら誰?」
唐突にサエコが質問を投げかけてきた。
ボディガード選手権の始まりだ。
男子たちはエロだのAVだのしか話をしないけど、女子だって大概下らない話をしている。
まず初めに、言い出しっぺのサエコが口火を切る。
「断然二口!イケメンに勝るものなし!」
確かに二口は目の保養になる。
だけど、いざという時にちゃんと守ってくれるかはちょっと怪しい。
そんなことを考えながら、私は迷わず自分の推しを告げる。
「私は青根君一択!」
彼は巨体で、眉なしの厳つい顔。
初めて会った人は、その迫力に思わず足がすくんでしまうかもしれない。
でも、本当はすごく素直で優しい、そのギャップがたまらない。
そして、何を隠そう、彼は私の片想いの相手だ。
みんなが次々と名前を挙げていき、夏目さんの番になった。
静かに考え込んでいた彼女が、ポツリと呟く。
「私も青根君……かな」
その言葉に、私は少しだけ驚いた。
てっきり、彼氏の名前を挙げるものだと思っていたから。
「えー、彼氏が悲しむぞー」
冗談交じりにサエコが言う。
夏目さんの彼氏がどんな人か知らないけど、きっと優しい人なんだろう。
すると、彼女は困った顔で答えた。
「実はね、最近彼氏と別れたの……」
彼女の告白に、私は息を飲んだ。
知らなかった。
だから、今日は私たちの輪に入ってくれたのか。
そして、彼氏の名前を挙げなかったのか、と妙に納得した。
夏目さんは少し俯きながら、さらに言葉を続ける。
「その彼に付きまとわれてて……。本当に青根君にボディガードを頼んでみようかな」
その瞬間、私の心臓がギュッと締め付けられた。
元カレに付きまとわれているのは不憫に思う。
でも、だからって、どうして青根君に頼むの?
利用しないでほしい。
彼女が頼めば、青根君はきっと引き受けてしまうだろう。
学年一可愛いと言われている夏目さんのお願いだからじゃない。
青根君が、誰に対しても分け隔てなく優しいからだ。
彼の優しさが、彼女に利用されてしまう。
モヤモヤと渦巻く感情で、目の前のお弁当どころではなくなった。
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