枯れ木に花火を咲かせましょう
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〜枯れ木に花火を咲かせましょう〜
10月の終わり。
日没が早くなり、外は既に暗くなり始めていたけれど、放課後の教室はまだ何人かの生徒が残って私語を交わしたり、明日の準備をしたりと、ざわめきが残っていた。
私も今日の授業で分からなかったところを先生に聞きに行こうかと、質問箇所を整理していた。
そんな時、不意に影が差した。
顔を上げると、そこにいたのは山口君だった。
ドクンと心臓が一瞬大きく跳ねる。
彼が突然声をかけてくるだけで、いつもこうなってしまう。
「あ、山口君。どうしたの?」
山口君は、いつもより少しそわそわしているように見える。
「えっと……」
彼は視線を泳がせていたり、手元では指を組んだり、こすり合わせたりしていた。
山口君とは、クラスが始まって以来、なんだかんだと話す機会が多い。
前期の委員会が同じだったり、席が隣になったこともある。
だからか、勝手にクラスの中の異性で私が一番仲が良いとさえ思えてしまう。
そんなことを考えていると、山口君が思い詰めたような顔で口を開いた。
「あのさ、◯◯さん」
彼の声は、少しだけ低くて、真剣なトーンに聞こえた。
「えっと、来週末に隣の市で秋祭りあるの知ってる?」
「うん、知ってる。毎年凄い賑わうらしいね」
行ったことはないけれど、打ち上げ花火が特に有名だと、地元テレビで取り上げられたのを見たことがある。
私の返事に、彼は一瞬ほっとしたような表情を見せた。
でも、すぐにまた緊張した面持ちに戻る。
「それで、もしよかったらなんだけど……一緒に、行かないかな?」
その言葉が、私の鼓膜に届いた瞬間、耳を疑った。
夢なんじゃないかと頬をつねりたい衝動に駆られる。
山口君が私をお祭りに……?
いや、ひょっとしたら他にも何人か誘って行くのかもしれない。
逸る気持ちを抑えて、私は質問した。
「一緒にって……他には?」
山口君は顔を赤くさせた。
「あ、いや!クラスの何人とかじゃなくて、その……」
彼は言い淀み、両手の拳にぎゅっと力が込められるのが分かる。
その必死な姿が、私の期待を確信に変えていく。
「2人で……ってつもりだったんだけど……。あ、でも、もし、他に約束とか、都合が悪かったりしたら全然断ってもらっても構わないから!……どうかな?」
彼の真っ直ぐな視線が、私を射抜く。
それは、紛れもなくデートの誘いだ。
いつも周りに流されるような温厚な彼が、こんなにも顔を赤くして、勇気を出して私を誘ってくれている。
それに答えるように、私は精一杯の笑顔を作った。
「もちろん行く!絶対に行く!」
そう答えると、彼の顔はパッと明るくなった。
「本当!?じゃあ、詳細とか、また連絡するね。ありがとう、◯◯さん!」
山口君はまるで緊張が解けたようにホッとした表情を見せて、教室から出ていった。
彼の背中を見送ってから、私はそっと自分の胸に手を当てた。
心臓が煩すぎて、今にも弾け出しそう。
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