キミのつむじを見たい
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
帰りのホームルームが終わり、鞄に教科書をしまっていると、
「◯◯さん」
大量のノートを抱えた山口君に話し掛けられた。
「何?」
もしかして、お昼休みに見ていたことを聞かれる?
そう思っていたら、
「数学のノート出していないの、あと◯◯さんだけだよ」
全く関係のないことだった。
「あ、ごめんね」
提出期限今日までだっけ。
山口君が数学の係りだったのか。
慌ててノートを机から出すけれど、あることを思い出した。
1問解けなかった問題があったことに。
「山口君……急いでいるよね?」
「まあ、この後部活だから」
職員室に届けた後、そのまま部活に行けるようにか、山口君はノートの他に鞄を肩にかけていた。
「迷惑承知で聞くけど……。そのノート、私が先生のところに持っていくから、この問題だけ教えてもらえないかな?」
「えっ?!」
入学して数ヶ月しか経っていないのに、いきなり提出期限を守らない印象を先生に与えたくない。
私は両手を合わせて山口君に頼み込んだ。
あからさまに困った顔をした山口君。
だけど、私の必死さが伝わったのか、参ったな、なんて言いながらも、
「どの問題?」
山口君は持っていたノートと鞄を側の机に置いて、私のノートを覗き込んできた。
「ありがとう、これなんだけど」
該当の問題を指さす。
「あー、それね。図を描くと分かりやすいよ」
そう言って山口君は私のシャーペンを取ってノートにスラスラと図を描いていく。
「この図に分かっている値を当てはめて……ってごめんね、勝手に書いちゃって」
「ううん、いいよ。それより凄く分かりやすい!説明続けて」
「そう……?えっと……だから、当てはめると────になるから、それを式に起こすと────で……」
みるみるうちに見覚えのある数式に辿り着いた。
「あ、ここまで来たら解けそう」
「なら、良かった」
山口君に取られたシャーペンを回収して、続きの数式に答えを解いていく。
ノートは私が運ぶから山口君は部活に行けばいいのに、何故か最後まで見届けてくれた。
「できた!」
「うん、正解」
「やったー、ありがとう!」
これで提出期限を守れないレッテルは回避できる。
あまりにも嬉しくて、変なテンションで山口君に両手の平を向けた。
「いえーい!」
「?」
だけど、全く反応してくれない。
そんな彼に再度掛け声を掛けた。
「いえーい!」
「あ……い、いえーい」
ようやく察してくれて、恐る恐る出された山口君の手に私の手を勢いよくパチンと叩きつけた。
「さて、と。じゃあ約束通りノートは私が持っていくから、山口君は部活に行っていいよ」
自分のノートを机に置かれた他の人のノートに重ね、よいしょと持ち上げる。
「本当にありがとう。部活頑張ってね」
「あ……えっと……」
別れの挨拶をしたのに、なぜか私の後ろを付いて来る。
さながら金魚の糞のようだ。
それが気になって、私は途中で山口君に尋ねた。
「部活遅れちゃうよ?」
「でも、数学係だから、やっぱり俺が持っていかないと」
そう言うと、山口君は私の腕からノートを奪う形で取り上げた。
「そんなことされたら、悪いよ」
「これくらい大したことないよ。それに女の子にノートを持たせる方が悪いから」
大して重くもないノート。
それなのに紳士のような対応をサラッとするなんて……。
もしかして、
「山口君ってお姉さんいたりする?」
女性には優しく接するように、みたいに扱 かれたとか。
ところが、
「弟がいるだけだよ」
俺にそっくりな、と付け加えて笑いながら答えた。
じゃあ、素で紳士なのか。
他愛もない話をしていると、いつの間にか職員室の前まで来ていた。
「俺、先生に提出してくるから。またね、◯◯さん」
山口君は優しく微笑んでから職員室へと入って行った。
両手が塞がっていて手を振れなかったからだろうけど、その笑った顔に少しだけときめいてしまった。
それから、教室から職員室まで並んで来たけど、相変わらず威圧感がない。
本当に不思議だ。
私は職員室の扉をしばらく見つめてから、帰るために昇降口へと向かった。
「◯◯さん」
大量のノートを抱えた山口君に話し掛けられた。
「何?」
もしかして、お昼休みに見ていたことを聞かれる?
そう思っていたら、
「数学のノート出していないの、あと◯◯さんだけだよ」
全く関係のないことだった。
「あ、ごめんね」
提出期限今日までだっけ。
山口君が数学の係りだったのか。
慌ててノートを机から出すけれど、あることを思い出した。
1問解けなかった問題があったことに。
「山口君……急いでいるよね?」
「まあ、この後部活だから」
職員室に届けた後、そのまま部活に行けるようにか、山口君はノートの他に鞄を肩にかけていた。
「迷惑承知で聞くけど……。そのノート、私が先生のところに持っていくから、この問題だけ教えてもらえないかな?」
「えっ?!」
入学して数ヶ月しか経っていないのに、いきなり提出期限を守らない印象を先生に与えたくない。
私は両手を合わせて山口君に頼み込んだ。
あからさまに困った顔をした山口君。
だけど、私の必死さが伝わったのか、参ったな、なんて言いながらも、
「どの問題?」
山口君は持っていたノートと鞄を側の机に置いて、私のノートを覗き込んできた。
「ありがとう、これなんだけど」
該当の問題を指さす。
「あー、それね。図を描くと分かりやすいよ」
そう言って山口君は私のシャーペンを取ってノートにスラスラと図を描いていく。
「この図に分かっている値を当てはめて……ってごめんね、勝手に書いちゃって」
「ううん、いいよ。それより凄く分かりやすい!説明続けて」
「そう……?えっと……だから、当てはめると────になるから、それを式に起こすと────で……」
みるみるうちに見覚えのある数式に辿り着いた。
「あ、ここまで来たら解けそう」
「なら、良かった」
山口君に取られたシャーペンを回収して、続きの数式に答えを解いていく。
ノートは私が運ぶから山口君は部活に行けばいいのに、何故か最後まで見届けてくれた。
「できた!」
「うん、正解」
「やったー、ありがとう!」
これで提出期限を守れないレッテルは回避できる。
あまりにも嬉しくて、変なテンションで山口君に両手の平を向けた。
「いえーい!」
「?」
だけど、全く反応してくれない。
そんな彼に再度掛け声を掛けた。
「いえーい!」
「あ……い、いえーい」
ようやく察してくれて、恐る恐る出された山口君の手に私の手を勢いよくパチンと叩きつけた。
「さて、と。じゃあ約束通りノートは私が持っていくから、山口君は部活に行っていいよ」
自分のノートを机に置かれた他の人のノートに重ね、よいしょと持ち上げる。
「本当にありがとう。部活頑張ってね」
「あ……えっと……」
別れの挨拶をしたのに、なぜか私の後ろを付いて来る。
さながら金魚の糞のようだ。
それが気になって、私は途中で山口君に尋ねた。
「部活遅れちゃうよ?」
「でも、数学係だから、やっぱり俺が持っていかないと」
そう言うと、山口君は私の腕からノートを奪う形で取り上げた。
「そんなことされたら、悪いよ」
「これくらい大したことないよ。それに女の子にノートを持たせる方が悪いから」
大して重くもないノート。
それなのに紳士のような対応をサラッとするなんて……。
もしかして、
「山口君ってお姉さんいたりする?」
女性には優しく接するように、みたいに
ところが、
「弟がいるだけだよ」
俺にそっくりな、と付け加えて笑いながら答えた。
じゃあ、素で紳士なのか。
他愛もない話をしていると、いつの間にか職員室の前まで来ていた。
「俺、先生に提出してくるから。またね、◯◯さん」
山口君は優しく微笑んでから職員室へと入って行った。
両手が塞がっていて手を振れなかったからだろうけど、その笑った顔に少しだけときめいてしまった。
それから、教室から職員室まで並んで来たけど、相変わらず威圧感がない。
本当に不思議だ。
私は職員室の扉をしばらく見つめてから、帰るために昇降口へと向かった。