猛暑とエアコン
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
季節はすっかり移り変わり、窓を開けても冷たい風が入ってくるようになった。
猛暑の中、貴大の部屋に転がり込んだあの日々が、まるで遠い夏の夢のように思える。
仕事終わり、花粉に備えてマスクでも買っておこうと、近所の薬局に立ち寄った。
ついでに他に必要なものがないかと店内を見回すと、生理用品のコーナーで手が止まる。
そういえば、最近購入した記憶がない。
立ち止まってスマホのカレンダーアプリを開く。
確認して、息を呑んだ。
「……え、2ヶ月?」
まさかね、と心臓がドクンと跳ねる。
あの夏の、避妊具なしの、流されるままの行為。
思い返せば、居候を始めた頃から生理が来ていないかもしれない。
ただの不順か、ストレスだろう、と自己暗示をかけていたけれど、この2ヶ月の遅れはあまりにも不自然だった。
念のため、と妊娠検査薬を手に取りレジへと向かった。
……。
…………。
家に帰ってすぐ使用する。
待つ間の数分間が、永遠のように感じられた。
そして、結果は……。
「2本線……」
薄い線ではない。
どう見てもくっきりと出ている2本の線が、そこにはあった。
相手は貴大しか考えられない。
どうしよう。どうするべき?
頭の中で思考が渦巻くが、最初に行動しなければならないことは決まっていた。
私は震える手でスマホを持ち、貴大の連絡先を開き、電話マークをタップした。
“もしもし”
コール音は数回で終わり、電話はあっさりと繋がった。
もしかして、まだプー太郎のまま、家にいるのだろうか。
「貴大……」
声を出すと、喉が震えた。
“おん、どうした?なんかあったか?”
「大事な話があるの」
貴大の声のトーンが一瞬下がるのが分かった。
沈黙が重い。
「私……妊娠したみたい。貴大との子を」
固唾を呑み込み、受話器の向こうの反応を伺う。
数秒の間が、恐ろしく長かった。
“まじか……●●、今家か?”
「うん」
“ちょっと待っとけ”
それだけ言い残すと、ツーツーという冷たい電子音が響いた。
通話は一方的に終了した。
来てくれるの……?
私は、検査薬を握りしめたまま、玄関のドアの周りを行ったり着たりと落ち着かなかった。
貴大の家から私の家まで、歩いても15分程度の距離だ。
だけと、15分経っても、30分経っても、貴大は来なかった。
スマホを耳に当てたまま、貴大に電話をかけた時のことを思い出す。
電話越しにテレビの音が聞こえた。
彼は確実に室内にいたはずだ。
待っている間、私のスマホの検索履歴は「シングルマザー」「怠惰 費用」「妊娠 逃げられた」「堕ろす 周期」などと不吉な言葉ばかりに染まっていった。
そして、1時間後。
……来ない。
結局、来ないんだ。
私は、電話を切ったときの彼の「ちょっと待っとけ」という言葉が、実は「これで最後だ」という貴大からの、別れだったのではないか、という最悪の解釈を受け入れ始めた。
逃げられた。
たった一つの命の重さから、彼は逃げたのだ。
検査薬を握る手に力がこもる。
視界が滲み、2本の線が歪んで見えた。
そして、冷たい涙が、頬を伝ってポタポタと床に落ちた。
猛暑の中、貴大の部屋に転がり込んだあの日々が、まるで遠い夏の夢のように思える。
仕事終わり、花粉に備えてマスクでも買っておこうと、近所の薬局に立ち寄った。
ついでに他に必要なものがないかと店内を見回すと、生理用品のコーナーで手が止まる。
そういえば、最近購入した記憶がない。
立ち止まってスマホのカレンダーアプリを開く。
確認して、息を呑んだ。
「……え、2ヶ月?」
まさかね、と心臓がドクンと跳ねる。
あの夏の、避妊具なしの、流されるままの行為。
思い返せば、居候を始めた頃から生理が来ていないかもしれない。
ただの不順か、ストレスだろう、と自己暗示をかけていたけれど、この2ヶ月の遅れはあまりにも不自然だった。
念のため、と妊娠検査薬を手に取りレジへと向かった。
……。
…………。
家に帰ってすぐ使用する。
待つ間の数分間が、永遠のように感じられた。
そして、結果は……。
「2本線……」
薄い線ではない。
どう見てもくっきりと出ている2本の線が、そこにはあった。
相手は貴大しか考えられない。
どうしよう。どうするべき?
頭の中で思考が渦巻くが、最初に行動しなければならないことは決まっていた。
私は震える手でスマホを持ち、貴大の連絡先を開き、電話マークをタップした。
“もしもし”
コール音は数回で終わり、電話はあっさりと繋がった。
もしかして、まだプー太郎のまま、家にいるのだろうか。
「貴大……」
声を出すと、喉が震えた。
“おん、どうした?なんかあったか?”
「大事な話があるの」
貴大の声のトーンが一瞬下がるのが分かった。
沈黙が重い。
「私……妊娠したみたい。貴大との子を」
固唾を呑み込み、受話器の向こうの反応を伺う。
数秒の間が、恐ろしく長かった。
“まじか……●●、今家か?”
「うん」
“ちょっと待っとけ”
それだけ言い残すと、ツーツーという冷たい電子音が響いた。
通話は一方的に終了した。
来てくれるの……?
私は、検査薬を握りしめたまま、玄関のドアの周りを行ったり着たりと落ち着かなかった。
貴大の家から私の家まで、歩いても15分程度の距離だ。
だけと、15分経っても、30分経っても、貴大は来なかった。
スマホを耳に当てたまま、貴大に電話をかけた時のことを思い出す。
電話越しにテレビの音が聞こえた。
彼は確実に室内にいたはずだ。
待っている間、私のスマホの検索履歴は「シングルマザー」「怠惰 費用」「妊娠 逃げられた」「堕ろす 周期」などと不吉な言葉ばかりに染まっていった。
そして、1時間後。
……来ない。
結局、来ないんだ。
私は、電話を切ったときの彼の「ちょっと待っとけ」という言葉が、実は「これで最後だ」という貴大からの、別れだったのではないか、という最悪の解釈を受け入れ始めた。
逃げられた。
たった一つの命の重さから、彼は逃げたのだ。
検査薬を握る手に力がこもる。
視界が滲み、2本の線が歪んで見えた。
そして、冷たい涙が、頬を伝ってポタポタと床に落ちた。
