ーー花巻sideーー


ハロワに行ったはいいけど今日も収穫なし。
次こそはホワイトな仕事に就きたい。
そう思って選り好みをして決まらない。

有給、あと何日残ってたっけ。
俺はカレンダーとにらめっこをしながら帰路に着いた。

玄関を開けるといい匂いが漂ってきた。


「おかえり」


エプロン姿の●●。俺、いつ結婚した？
って違う違う。存在しない記憶を見ていた。


「何作ってるんだ？」

「煮物と焼き魚と味噌汁」

「へー料理できたんだ」

「まーね。それよりご飯にする？お風呂にする？」

「………」


それとも……わ・た・し？………いや、そんなこと言ってないだろ。
幻聴が聞こえたわ。


「風呂入る」


俺はそそくさと脱衣所へと向かった。これじゃまるで新婚じゃないか。

頭を冷やすためにシャワーの水を浴びた。