隣は譲れねェ
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
翌朝、重い瞼を擦りながら教室に入ると、そこにはいつもと変わらない様子で笑う花巻の姿があった。
「よお、◯◯。おはよ」
「……おはよう」
昨夜、あんなに泣いたことなんて露知らず、彼は飄々とした態度で接してくる。
私はその屈託のない笑顔をまともに見ることができず、逃げるように自分の席に着くと、鞄から昨日の授業で使った教科書を取り出した。
気まずさを紛らわせるように、意味もなくパラパラとページをめくる。
けれど、あるページで指が止まった。
先日の授業中、彼が「忘れたから見せて」と言って机をくっつけてきた、あのページだ。
白地の余白に、見慣れた少し癖のある文字で、ぽつんと書き置きがされていた。
“好きだ”
心臓が、ドクンと大きく跳ねた。
紛れもなく花巻の字だ。
あんなに軽口を叩いていた合間に、彼は私の隣で、誰にも気付かれないようにこの言葉を書いていたのだ。
「……っ、ねえ、花巻」
震える指で教科書の端を指し示し、私は彼を問い詰める。
花巻は椅子をくるりと回転させると、意地悪そうに目を細めて笑った。
「やっと気が付いたのかよ。遅すぎ」
「なんで……?だって、花巻の好きな人は他校にいるんじゃ……っ」
私の声が上ずったのを聞いて、彼は少しだけ表情を和らげ、イタズラが見つかった子供のような顔をした。
「だってよ、◯◯、全然気付いてくれなかったからさ。……ちょっとくらい焦らせてもいーかなって、意地悪した」
「なっ……!意地悪!?私、昨日どんなに……」
どんなに泣いたと思っているのか。
詰め寄ろうとした私の言葉を遮るように、花巻は机に身を乗り出して、私との距離をグッと縮めた。
「それで?散々待たされた俺に、返事は?」
その瞳は、いつもの冗談めかしたものではなく、真っ直ぐに私の反応を待っている。
教室の喧騒が遠のき、世界には隣り合う私たち2人しかいないような錯覚に陥る。
「……ズルいよ」
私は顔が熱くなるのを必死に抑えながら、蚊の鳴くような声で、けれどはっきりと、教科書の文字の想いに応えた。
「……私も、花巻のことが、好き……」
私の答えを聞いた瞬間、花巻の顔がパッと明るく綻び、自分の手で口元を覆って顔を逸らした。
耳の裏までほんのりと赤く染まっている。
「……ま、まあ知ってたけど」
「嘘吐き。今、すごくホッとした顔したでしょ」
「うっせ……」
私はようやく、隣にいる彼と真っ向から、心からの笑顔で見つめ合うことができた。
ーーFinーー
「よお、◯◯。おはよ」
「……おはよう」
昨夜、あんなに泣いたことなんて露知らず、彼は飄々とした態度で接してくる。
私はその屈託のない笑顔をまともに見ることができず、逃げるように自分の席に着くと、鞄から昨日の授業で使った教科書を取り出した。
気まずさを紛らわせるように、意味もなくパラパラとページをめくる。
けれど、あるページで指が止まった。
先日の授業中、彼が「忘れたから見せて」と言って机をくっつけてきた、あのページだ。
白地の余白に、見慣れた少し癖のある文字で、ぽつんと書き置きがされていた。
“好きだ”
心臓が、ドクンと大きく跳ねた。
紛れもなく花巻の字だ。
あんなに軽口を叩いていた合間に、彼は私の隣で、誰にも気付かれないようにこの言葉を書いていたのだ。
「……っ、ねえ、花巻」
震える指で教科書の端を指し示し、私は彼を問い詰める。
花巻は椅子をくるりと回転させると、意地悪そうに目を細めて笑った。
「やっと気が付いたのかよ。遅すぎ」
「なんで……?だって、花巻の好きな人は他校にいるんじゃ……っ」
私の声が上ずったのを聞いて、彼は少しだけ表情を和らげ、イタズラが見つかった子供のような顔をした。
「だってよ、◯◯、全然気付いてくれなかったからさ。……ちょっとくらい焦らせてもいーかなって、意地悪した」
「なっ……!意地悪!?私、昨日どんなに……」
どんなに泣いたと思っているのか。
詰め寄ろうとした私の言葉を遮るように、花巻は机に身を乗り出して、私との距離をグッと縮めた。
「それで?散々待たされた俺に、返事は?」
その瞳は、いつもの冗談めかしたものではなく、真っ直ぐに私の反応を待っている。
教室の喧騒が遠のき、世界には隣り合う私たち2人しかいないような錯覚に陥る。
「……ズルいよ」
私は顔が熱くなるのを必死に抑えながら、蚊の鳴くような声で、けれどはっきりと、教科書の文字の想いに応えた。
「……私も、花巻のことが、好き……」
私の答えを聞いた瞬間、花巻の顔がパッと明るく綻び、自分の手で口元を覆って顔を逸らした。
耳の裏までほんのりと赤く染まっている。
「……ま、まあ知ってたけど」
「嘘吐き。今、すごくホッとした顔したでしょ」
「うっせ……」
私はようやく、隣にいる彼と真っ向から、心からの笑顔で見つめ合うことができた。
ーーFinーー
