隣は譲れねェ
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季節は巡り、初めて花巻と隣り合った頃には少し肌寒く感じていた長袖の制服も、今ではすっかり風通しの良い半袖へと衣替えした。
そして、ついに3度目の席替えがやってきた。
前回の席替えで、私は一生分の運を使い果たしてしまった。
さすがに、3回連続近くの席なんてあるワケがない。
クラスメイトたちが一喜一憂している中、私は淡々と自分の番号が記された席へと向かう。
新しい席は、窓際の1番後ろ。
1番落ち着く特等席だけれど、どこか寂しい。
隣にあの賑やかな気配がないことに慣れなくてはいけないんだと、自分に言い聞かせた。
けれど。
「……嘘でしょ」
隣の席に、見慣れた長い足が滑り込んできた。
ピンクがかった髪、少し眠そうに細められた目、そして私を見て満足そうに持ち上げられた口角。
今度は右隣。
「……ねえ、ここまで一緒だと、さすがに怖いんだけど」
呆れを通り越して戦慄すら覚える私に、花巻は教科書を机に放り投げ、声を上げて笑った。
「ははは!マジかよ。俺たち磁石なのかもな」
「笑い事じゃないって。呪われてるんじゃないの?」
「ひでーな。神様が、俺たちの仲を引き裂くのはまだ早いって言ってるんだろ」
冗談めかして言った彼の言葉が、耳の奥にいつまでも残る。
周囲の女子たちが、
「また花巻君と隣!?」
「仲良すぎでしょ」
と騒ぎ立てる中、花巻は私の反応を楽しむように、肘を突いて顔を覗き込んできた。
「ま、そういうワケだからさ。また1ヶ月よろしくな」
その声は、いつもの軽薄なトーンよりもずっと低く、熱を帯びていた。
「嫌だ」なんて突き放す言葉は、もう出てこない。
不意に彼が、イタズラっぽく片目を細めた。
「で、早速で悪いんだけど、次の授業の教科書忘れたから見せてくんね?」
……やっぱり前言撤回。
さっきまで感じていた、心臓が脈打つような高鳴りを返してほしい。
この男はいつもそうだ。
心臓が跳ねるようなセリフをさらっと吐いた直後に、こうして平然と台無しにする。
「嫌よ」
冷たく言い放ったけれど、花巻は笑いながら当然のように自分の机をガタンとこちらへ寄せてきた。
鉄製の脚が床を擦る、耳慣れた音が響く。
数センチの隙間もなくなった机同士。
境目なんてどこにもない。
「いいじゃん、減るもんじゃないし。な?」
彼は少しだけ椅子をこちら側に傾け、私の肩が触れそうな距離まで顔を近付けてくる。
ふわりと漂う柔軟剤の匂い。
「嫌だ」と口では言いつつも、彼が図々しく踏み込んでくるこの距離に、どこか安心している自分がいた。
「こ、今回だけだからね」
「おっ、さすが◯◯。話が分かる」
結局、私は負けてしまう。
教科書を机の真ん中に広げると、花巻は満足げに笑った。
私は文字を追うフリをして必死に平静を装った。
そして、ついに3度目の席替えがやってきた。
前回の席替えで、私は一生分の運を使い果たしてしまった。
さすがに、3回連続近くの席なんてあるワケがない。
クラスメイトたちが一喜一憂している中、私は淡々と自分の番号が記された席へと向かう。
新しい席は、窓際の1番後ろ。
1番落ち着く特等席だけれど、どこか寂しい。
隣にあの賑やかな気配がないことに慣れなくてはいけないんだと、自分に言い聞かせた。
けれど。
「……嘘でしょ」
隣の席に、見慣れた長い足が滑り込んできた。
ピンクがかった髪、少し眠そうに細められた目、そして私を見て満足そうに持ち上げられた口角。
今度は右隣。
「……ねえ、ここまで一緒だと、さすがに怖いんだけど」
呆れを通り越して戦慄すら覚える私に、花巻は教科書を机に放り投げ、声を上げて笑った。
「ははは!マジかよ。俺たち磁石なのかもな」
「笑い事じゃないって。呪われてるんじゃないの?」
「ひでーな。神様が、俺たちの仲を引き裂くのはまだ早いって言ってるんだろ」
冗談めかして言った彼の言葉が、耳の奥にいつまでも残る。
周囲の女子たちが、
「また花巻君と隣!?」
「仲良すぎでしょ」
と騒ぎ立てる中、花巻は私の反応を楽しむように、肘を突いて顔を覗き込んできた。
「ま、そういうワケだからさ。また1ヶ月よろしくな」
その声は、いつもの軽薄なトーンよりもずっと低く、熱を帯びていた。
「嫌だ」なんて突き放す言葉は、もう出てこない。
不意に彼が、イタズラっぽく片目を細めた。
「で、早速で悪いんだけど、次の授業の教科書忘れたから見せてくんね?」
……やっぱり前言撤回。
さっきまで感じていた、心臓が脈打つような高鳴りを返してほしい。
この男はいつもそうだ。
心臓が跳ねるようなセリフをさらっと吐いた直後に、こうして平然と台無しにする。
「嫌よ」
冷たく言い放ったけれど、花巻は笑いながら当然のように自分の机をガタンとこちらへ寄せてきた。
鉄製の脚が床を擦る、耳慣れた音が響く。
数センチの隙間もなくなった机同士。
境目なんてどこにもない。
「いいじゃん、減るもんじゃないし。な?」
彼は少しだけ椅子をこちら側に傾け、私の肩が触れそうな距離まで顔を近付けてくる。
ふわりと漂う柔軟剤の匂い。
「嫌だ」と口では言いつつも、彼が図々しく踏み込んでくるこの距離に、どこか安心している自分がいた。
「こ、今回だけだからね」
「おっ、さすが◯◯。話が分かる」
結局、私は負けてしまう。
教科書を机の真ん中に広げると、花巻は満足げに笑った。
私は文字を追うフリをして必死に平静を装った。
