隣は譲れねェ
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翌朝、眠い目をこすりながら席に着くと、不意に声が飛んでくる。
「よお、◯◯」
「……」
そう言えば、前の席は花巻になったんだっけ……。
私はあえて目を合わせず、鞄から教材を取り出し、朝の支度を始めた。
だけど、彼は背後から、無視できない言葉を投げかけてくる。
「……ぷっ、お前。寝癖ついてんぞ」
「えっ、嘘!?……ちょっと、見ないでよ!」
慌てて手櫛で後頭部を整える私を見て、彼は椅子の背もたれをギシギシと鳴らしながら、肩を揺らして笑う。
「右側、まだハネてる。……ほら、そこそこ」
と、指差す指先までどこか余裕があって、朝イチからペースを乱されるのがたまらなく癪だった。
そんな攻防は、その日1日で終わるはずもなかった。
ある日の休み時間、返却されたばかりの数学のプリントを、彼はひょいと首を傾けて背後から盗み見てきた。
「うわ、平均点ギリギリじゃん。お前、あんなに真面目に勉強してたのに?」
「うるさい!花巻だって褒められた点数じゃないクセに!」
「俺はほら、部活が忙しいんだよ」
そう言ってニカッと笑う彼の顔は、悔しいけれどどこか憎めない。
最初はあんなに無視を決め込んでいたのに。
放っておいてほしいと願っていたはずなのに。
気付けば、彼のしつこい構いに対して、私も食い気味に言い返すようになっていた。
授業中だって例外ではない。
必死にノートに向き合う私の視界に、不意に白い紙切れが滑り込んでくる。
ルーズリーフの端っこに描かれた、授業中の先生の絶妙に似ている似顔絵。
「上手くね?」
くだらないことなのに、つい応えてしまう。
「下手くそ」
「おっかしいなー。特徴捉えてると思ったんだけど……。◯◯描いてみてよ」
私は空いているスペースにサラサラと先生の似顔絵を描き始めた。
中々の力作だ。
そう思っていたのに、花巻は信じられない物を目にしたと言わんばかりの表情を浮かべている。
「……本気か?」
「本気だけど?」
「そっか……」
「そんな憐れんだ目で見ないで」
改めてルーズリーフを見ると、残念な似顔絵が2つ。
私たちは声を押し殺し、肩を震わせて笑い合った。
その時。
「花巻、◯◯。そこ、うるさいぞー!」
教卓から担任の鋭い声が飛んできた。
クラス中にクスクスという笑い声が広がり、私は顔が熱くなるのを感じて俯く。
やってしまった……。
勉強に集中するって決めたのに。
自己嫌悪に陥りかけたその時、前の席に座る花巻の背中が小さく動いた。
彼は先生に見えない角度で、私に向かって「ごめん」と小さく手を合わせていた。
その仕草には相変わらず茶目っ気がある。
その背中を見つめながら、ふと思った。
勉強に集中したいとか、住む世界が違うとか。
あんなに頑なに毛嫌っていたはずなのに、いつの間にか彼に心を許していた。
彼と話すのは、思っていたよりもずっと楽しい。
そして、その楽しいという自覚が、私の胸を少しだけ騒がせ始めていた。
「よお、◯◯」
「……」
そう言えば、前の席は花巻になったんだっけ……。
私はあえて目を合わせず、鞄から教材を取り出し、朝の支度を始めた。
だけど、彼は背後から、無視できない言葉を投げかけてくる。
「……ぷっ、お前。寝癖ついてんぞ」
「えっ、嘘!?……ちょっと、見ないでよ!」
慌てて手櫛で後頭部を整える私を見て、彼は椅子の背もたれをギシギシと鳴らしながら、肩を揺らして笑う。
「右側、まだハネてる。……ほら、そこそこ」
と、指差す指先までどこか余裕があって、朝イチからペースを乱されるのがたまらなく癪だった。
そんな攻防は、その日1日で終わるはずもなかった。
ある日の休み時間、返却されたばかりの数学のプリントを、彼はひょいと首を傾けて背後から盗み見てきた。
「うわ、平均点ギリギリじゃん。お前、あんなに真面目に勉強してたのに?」
「うるさい!花巻だって褒められた点数じゃないクセに!」
「俺はほら、部活が忙しいんだよ」
そう言ってニカッと笑う彼の顔は、悔しいけれどどこか憎めない。
最初はあんなに無視を決め込んでいたのに。
放っておいてほしいと願っていたはずなのに。
気付けば、彼のしつこい構いに対して、私も食い気味に言い返すようになっていた。
授業中だって例外ではない。
必死にノートに向き合う私の視界に、不意に白い紙切れが滑り込んでくる。
ルーズリーフの端っこに描かれた、授業中の先生の絶妙に似ている似顔絵。
「上手くね?」
くだらないことなのに、つい応えてしまう。
「下手くそ」
「おっかしいなー。特徴捉えてると思ったんだけど……。◯◯描いてみてよ」
私は空いているスペースにサラサラと先生の似顔絵を描き始めた。
中々の力作だ。
そう思っていたのに、花巻は信じられない物を目にしたと言わんばかりの表情を浮かべている。
「……本気か?」
「本気だけど?」
「そっか……」
「そんな憐れんだ目で見ないで」
改めてルーズリーフを見ると、残念な似顔絵が2つ。
私たちは声を押し殺し、肩を震わせて笑い合った。
その時。
「花巻、◯◯。そこ、うるさいぞー!」
教卓から担任の鋭い声が飛んできた。
クラス中にクスクスという笑い声が広がり、私は顔が熱くなるのを感じて俯く。
やってしまった……。
勉強に集中するって決めたのに。
自己嫌悪に陥りかけたその時、前の席に座る花巻の背中が小さく動いた。
彼は先生に見えない角度で、私に向かって「ごめん」と小さく手を合わせていた。
その仕草には相変わらず茶目っ気がある。
その背中を見つめながら、ふと思った。
勉強に集中したいとか、住む世界が違うとか。
あんなに頑なに毛嫌っていたはずなのに、いつの間にか彼に心を許していた。
彼と話すのは、思っていたよりもずっと楽しい。
そして、その楽しいという自覚が、私の胸を少しだけ騒がせ始めていた。
