隣は譲れねェ
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〜隣は譲れねェ〜
「よし、全員くじ引いたかー?移動しろよー」
担任の気の抜けた声が教室に響く。
高校3年生になって初めての席替え。
この時期の席替えは、受験生の私たちにとっては単なる座席の移動以上の意味を持っていた。
落ち着いて勉強できる席がいい……。
心の中で小さく願いながら、私は「21」と書かれたくじを握りしめる。
番号を頼りに席へと向かうと、そこは角の落ち着く場所だった。
「ふぅ……」
少しだけ安堵して椅子を引いた、その時。
「おっ!後の席、◯◯じゃん。よろしくな」
聞き覚えのある、少し低くて余裕のある声。
顔を上げると、そこには独特なピンクがかった髪を無造作に揺らした花巻貴大が、椅子の背もたれに腕を乗せてこちらを振り返っていた。
「げっ……花巻……」
「げってなんだよ。挨拶くらいしてくれてもいーだろ?」
彼はフッと口角を上げて笑う。
私は、この男が苦手だ。
派手な髪色。
誰とでも壁を作らずに打ち解ける、天性のコミュニケーション能力。
そして、バレーボール部のレギュラーとして、いつも誰かしらに囲まれている陽のオーラ。
彼の近くにいれば、否応なしに騒がしい日常に引きずり込まれる。
真面目に、静かに過ごしたい私とは、住む世界が違う。
平穏な日々が脅かされるヴィジョンが容易に想像できて、私は思わずため息が出た。
「……話しかけないでくれない?私、今年は勉強に集中したいから」
あえて突き放すような冷たい声を出して、私は鞄からノートを取り出す。
だけど、彼は気分を害した様子もなく、むしろ面白そうに目を細めた。
「つれないなー。俺、◯◯と仲良くしたいだけなんだけど?」
「……嘘言わないで」
「マジだって。ま、よろしくな!」
窓から差し込む日差しが、彼の派手な髪をいっそう鮮やかに彩る。
花巻はそのまま正面を向き、隣の席の佐藤君と話し始めた。
彼にとっては、この席替えも数ある交流の1つに過ぎないのだろう。
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