はいチーズ
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賑わっていた文化祭が嘘のように幕を閉じた。
残すは片付けと後夜祭のみ。
教室内を覆っている段ボールの迷路。
あんなに作るのは大変だったのに、壊すのはあっという間だった。
段ボールを荷造り紐で括りながら、文化祭を思い返す。
「楽しかったね」
「何言ってるの、●●にはまだやることがあるでしょ?」
「そうだね」
チヨリの言う通り、貴大先輩との後夜祭が待っている。
「一度家に帰る?」
「うーん、そのまま参加しようかな」
着替えたり化粧をしに帰ったら、変に張り切っていると思われるかもしれないから。
それだけは避けたい。
ーーーー
すっかり片付いた教室で後夜祭の時間になるまで1人待つ。
窓の外を見ると、グラウンドで業者さんが特設ステージの設営をしていたり、ファイヤーストームの準備をしていた。
ファイヤーストームとは生徒たちが炎を囲んで歌いながらグラウンドを駆け回り、絆を深めるイベントのこと。
話を聞いただけで実際には体験したことないけど、キャンプファイヤーのようなものだと思っている。
「日が暮れてきたな……」
貴大先輩とはグラウンドのステージ横で落ち合うことになっている。
「後少ししたら行こうかな」
時計を見ながら1人つぶやくと、教室のドアがガラガラと開いた。
クラスメイトの誰かが忘れ物を取りに来たのだろうか。
何の気なしに振り向くとそこには、
「貴大先輩?!」
夕日に照らされる先輩がいた。
なんで、ここに?!
「グラウンドから●●ちゃんが教室にいるのが見えたから」
だとしても、もう少ししたら私もグラウンドに行こうと思っていたのに。
「わざわざ外出なくても、ここからでもステージもファイヤーストームも見れるし、いいんじゃね?」
そう言いながら私の向かいの席にドカッと座ってきた。
教室に入ってきたときは顔しか見ていなかったけれど、まじまじと先輩の姿を見ると、
「なんでジャージなんですか?」
昼間に会ったときはちゃんと制服を着ていたのに。
「さっきまで市民体育館借りてバレーしてた。ほら、来週は大会だからさ」
学校の体育館は椅子が出ていて使えなかったのかな。
本当にバレーが好きなんだ。
「卒業後もバレーやるんですか?」
きっとやるんだろうな。
ずっとバレー優先しているんだもん。
それなのに、
「多分やらねぇかな」
即答だった。
「え、勿体ない!なんで……」
「俺にはうちの主将のように努力する根性も、インハイの決勝で当たった白鳥沢のような才能もない。だから、高校で最後」
その高身長は充分恵まれていると思うのに。
私の知らないスポーツの世界があるようだ。
雑談をしていると、いつの間にかファイヤーストームに火が灯っていた。
「始まりますね」
「ああ」
ここからでも聞こえてくる雄叫び。
グラウンド一帯に広がる熱気が伝わってくる。
まさに“青春”。
貴大先輩を見ると、炎で顔の半面だけがメラメラ光って見えた。
そのとき気が付いた。
お空は真っ暗で、それなのに教室内の電気が点いていないことに。
「電気……」
だから、点けるために立ち上がろうとしたら、
「いい、このままで」
先輩に腕を掴まれて阻止された。
その手が熱くて、側にいろと言われているようで、私はいつの間にか言うつもりのない言葉を口にしていた。
「私、貴大先輩のことが好きです」
一目惚れだとは伝えたことがあったけれど、面と向かって好きだとは言っていない。
言うつもりだってなかった。
だって先輩の態度を見ていたら分かるから。
私には脈なしだと言うことが。
それでもほんの少し、万が一、もしかして……。
そんな希望を持って先輩を見る。
彼は一瞬驚いたかと思えば、直ぐにいつもの無表情に戻った。
「……ありがとう」
“俺も”だとか“ごめん”とも言わず感謝を述べる、ただそれだけ。
これは私が悲しまないようにやんわり断ったんだ。
“ありがとう”、その言葉は優しいようで優しくない。
先輩の気持ちはよく分かった。
だけど、せめて卒業までは鈍感なフリをさせて。
そしたら今度こそ諦めるから。
だから今日も私は、
「貴大先輩、写真撮りませんか?」
写真を撮る。
「はいチーズ!」
カシャッ
背景の星は輝いていて、こんなにも綺麗なのに、私は泣きそうな顔をしていた。
残すは片付けと後夜祭のみ。
教室内を覆っている段ボールの迷路。
あんなに作るのは大変だったのに、壊すのはあっという間だった。
段ボールを荷造り紐で括りながら、文化祭を思い返す。
「楽しかったね」
「何言ってるの、●●にはまだやることがあるでしょ?」
「そうだね」
チヨリの言う通り、貴大先輩との後夜祭が待っている。
「一度家に帰る?」
「うーん、そのまま参加しようかな」
着替えたり化粧をしに帰ったら、変に張り切っていると思われるかもしれないから。
それだけは避けたい。
ーーーー
すっかり片付いた教室で後夜祭の時間になるまで1人待つ。
窓の外を見ると、グラウンドで業者さんが特設ステージの設営をしていたり、ファイヤーストームの準備をしていた。
ファイヤーストームとは生徒たちが炎を囲んで歌いながらグラウンドを駆け回り、絆を深めるイベントのこと。
話を聞いただけで実際には体験したことないけど、キャンプファイヤーのようなものだと思っている。
「日が暮れてきたな……」
貴大先輩とはグラウンドのステージ横で落ち合うことになっている。
「後少ししたら行こうかな」
時計を見ながら1人つぶやくと、教室のドアがガラガラと開いた。
クラスメイトの誰かが忘れ物を取りに来たのだろうか。
何の気なしに振り向くとそこには、
「貴大先輩?!」
夕日に照らされる先輩がいた。
なんで、ここに?!
「グラウンドから●●ちゃんが教室にいるのが見えたから」
だとしても、もう少ししたら私もグラウンドに行こうと思っていたのに。
「わざわざ外出なくても、ここからでもステージもファイヤーストームも見れるし、いいんじゃね?」
そう言いながら私の向かいの席にドカッと座ってきた。
教室に入ってきたときは顔しか見ていなかったけれど、まじまじと先輩の姿を見ると、
「なんでジャージなんですか?」
昼間に会ったときはちゃんと制服を着ていたのに。
「さっきまで市民体育館借りてバレーしてた。ほら、来週は大会だからさ」
学校の体育館は椅子が出ていて使えなかったのかな。
本当にバレーが好きなんだ。
「卒業後もバレーやるんですか?」
きっとやるんだろうな。
ずっとバレー優先しているんだもん。
それなのに、
「多分やらねぇかな」
即答だった。
「え、勿体ない!なんで……」
「俺にはうちの主将のように努力する根性も、インハイの決勝で当たった白鳥沢のような才能もない。だから、高校で最後」
その高身長は充分恵まれていると思うのに。
私の知らないスポーツの世界があるようだ。
雑談をしていると、いつの間にかファイヤーストームに火が灯っていた。
「始まりますね」
「ああ」
ここからでも聞こえてくる雄叫び。
グラウンド一帯に広がる熱気が伝わってくる。
まさに“青春”。
貴大先輩を見ると、炎で顔の半面だけがメラメラ光って見えた。
そのとき気が付いた。
お空は真っ暗で、それなのに教室内の電気が点いていないことに。
「電気……」
だから、点けるために立ち上がろうとしたら、
「いい、このままで」
先輩に腕を掴まれて阻止された。
その手が熱くて、側にいろと言われているようで、私はいつの間にか言うつもりのない言葉を口にしていた。
「私、貴大先輩のことが好きです」
一目惚れだとは伝えたことがあったけれど、面と向かって好きだとは言っていない。
言うつもりだってなかった。
だって先輩の態度を見ていたら分かるから。
私には脈なしだと言うことが。
それでもほんの少し、万が一、もしかして……。
そんな希望を持って先輩を見る。
彼は一瞬驚いたかと思えば、直ぐにいつもの無表情に戻った。
「……ありがとう」
“俺も”だとか“ごめん”とも言わず感謝を述べる、ただそれだけ。
これは私が悲しまないようにやんわり断ったんだ。
“ありがとう”、その言葉は優しいようで優しくない。
先輩の気持ちはよく分かった。
だけど、せめて卒業までは鈍感なフリをさせて。
そしたら今度こそ諦めるから。
だから今日も私は、
「貴大先輩、写真撮りませんか?」
写真を撮る。
「はいチーズ!」
カシャッ
背景の星は輝いていて、こんなにも綺麗なのに、私は泣きそうな顔をしていた。