猛暑とエアコン
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「ハロワ行ってくるわ」
「はいはーい、いってらっしゃい」
貴大のどこか気だるげな声で出かけていくのを見送る。
昨晩の快適さは夢のようだった。
自分のアパートでは、熱気の中で寝返りを打つたびに目が覚めていたのに、昨夜は涼しい部屋で朝までぐっすり。
しかも、貴大の家は駅から近く、出勤時間まで余裕をもってコーヒーを飲むことさえできた。
「はぁ、最高……」
仕事のパフォーマンスも絶好調で、定時きっかりに退社。
その足でスーパーへ向かった。
食材を見ながら、貴大の苦手な食べ物を思い出す。
確か、大学時代、彼の偏食ぶりは特に耳にしなかった気がする。
まあ、こだわりはないって言ってたし、適当でいいか。
かごに色とりどりの食材をポイポイと入れていき、レジを済ませる。
貴大のアパートに帰宅すると、まだ静まりかえっていた。
メッセージを確認しても特に連絡は来ていなかった。
ひとまず、貴大が帰るまでに夕飯の支度をしよう。
私は持参したエプロンを着け、狭いキッチンに立った。
目の前にあるのは、一口コンロのIH。
調理スペースは、まな板を置いたらもう何も置けないくらいに狭い。
調理器具も、フライパンと鍋が1つずつという最小限のラインナップだ。
調味料も塩コショウと醤油、あとポン酢くらいしかない。
「これは、普段あまり料理してこなかったパターンね」
だけど、居候の身。
この限られたスペースで、いかに段取り良く、手際よく料理を作るかが私の使命だ。
汁物は後で温めるだけの状態にしておく。
焼き物は最初に仕上げ、皿に移す。
煮物系は火にかけておけば良いので最後に着手。
私は頭の中で工程を組み立て、黙々と作業を進めていった。
そして、なんとか全ての料理が仕上がり、味見をする。
「うん、いい感じ」
その時、玄関で鍵が開く音がした。
「ただいまー」
疲れ切ったような貴大の声。
「おかえり」
貴大がキッチンに入ってくるなり、漂う出汁と醤油の香りに目を丸くした。
「おお……。何作ったんだ?めちゃいい匂い」
「煮物と焼き魚と味噌汁。和食にしてみたよ」
「へー。●●、料理できたんだ」
彼の驚いた顔に、少し優越感を覚える。
「私も1人暮らしだから、家事くらいするよ。それで、貴大はご飯にする?それともお風呂にする?」
ごく自然に口から出た言葉。
すると、貴大がピタッと動きを止めた。
「……」
そこでようやく私も気が付いた。
このセリフはまるで新婚夫婦のようだ、と。
沈黙の後、貴大はゴホンと咳払いをして、鞄を床に置いた。
「……風呂入る」
「そ、そっか。分かった」
なんだ、勘違いか。
私だけが変な想像をして、勝手に恥ずかしい気持ちになっていただけだ。
貴大がお風呂から出る前に、ちゃちゃっと食卓にご飯を並べないと。
私は急いで、熱くなった鍋からお椀へ味噌汁を注ぐ作業に戻った。
「はいはーい、いってらっしゃい」
貴大のどこか気だるげな声で出かけていくのを見送る。
昨晩の快適さは夢のようだった。
自分のアパートでは、熱気の中で寝返りを打つたびに目が覚めていたのに、昨夜は涼しい部屋で朝までぐっすり。
しかも、貴大の家は駅から近く、出勤時間まで余裕をもってコーヒーを飲むことさえできた。
「はぁ、最高……」
仕事のパフォーマンスも絶好調で、定時きっかりに退社。
その足でスーパーへ向かった。
食材を見ながら、貴大の苦手な食べ物を思い出す。
確か、大学時代、彼の偏食ぶりは特に耳にしなかった気がする。
まあ、こだわりはないって言ってたし、適当でいいか。
かごに色とりどりの食材をポイポイと入れていき、レジを済ませる。
貴大のアパートに帰宅すると、まだ静まりかえっていた。
メッセージを確認しても特に連絡は来ていなかった。
ひとまず、貴大が帰るまでに夕飯の支度をしよう。
私は持参したエプロンを着け、狭いキッチンに立った。
目の前にあるのは、一口コンロのIH。
調理スペースは、まな板を置いたらもう何も置けないくらいに狭い。
調理器具も、フライパンと鍋が1つずつという最小限のラインナップだ。
調味料も塩コショウと醤油、あとポン酢くらいしかない。
「これは、普段あまり料理してこなかったパターンね」
だけど、居候の身。
この限られたスペースで、いかに段取り良く、手際よく料理を作るかが私の使命だ。
汁物は後で温めるだけの状態にしておく。
焼き物は最初に仕上げ、皿に移す。
煮物系は火にかけておけば良いので最後に着手。
私は頭の中で工程を組み立て、黙々と作業を進めていった。
そして、なんとか全ての料理が仕上がり、味見をする。
「うん、いい感じ」
その時、玄関で鍵が開く音がした。
「ただいまー」
疲れ切ったような貴大の声。
「おかえり」
貴大がキッチンに入ってくるなり、漂う出汁と醤油の香りに目を丸くした。
「おお……。何作ったんだ?めちゃいい匂い」
「煮物と焼き魚と味噌汁。和食にしてみたよ」
「へー。●●、料理できたんだ」
彼の驚いた顔に、少し優越感を覚える。
「私も1人暮らしだから、家事くらいするよ。それで、貴大はご飯にする?それともお風呂にする?」
ごく自然に口から出た言葉。
すると、貴大がピタッと動きを止めた。
「……」
そこでようやく私も気が付いた。
このセリフはまるで新婚夫婦のようだ、と。
沈黙の後、貴大はゴホンと咳払いをして、鞄を床に置いた。
「……風呂入る」
「そ、そっか。分かった」
なんだ、勘違いか。
私だけが変な想像をして、勝手に恥ずかしい気持ちになっていただけだ。
貴大がお風呂から出る前に、ちゃちゃっと食卓にご飯を並べないと。
私は急いで、熱くなった鍋からお椀へ味噌汁を注ぐ作業に戻った。
