猛暑とエアコン
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〜猛暑とエアコン〜
ジリジリと照り付ける夏の太陽が、私の部屋全体をサウナに変えていった。
額や首筋から、汗がとめどなく流れ落ちる。
窓を開けても生ぬるい風しか入ってこない。
「マジでありえない……」
床にへたり込み、役に立たないスマートフォンを睨みつける。
部屋のエアコンが故障し、修理業者に電話をすると、
“大変申し訳ございません。現在、修理依頼が殺到しており、最短でも3週間後の訪問となります。”
と一蹴りされてしまった。
それまでの3週間、この猛暑の中、エアコンなしで夜を過ごせる気がしない。
「無理だ。確実に熱中症で死ぬ……」
日中は冷房の効いたオフィスで仕事をするからまだいい。
休日も大型商業施設に逃げ込めばなんとかかる。
だけど、問題なのは夜。
夜だけは、この灼熱のアパートに帰らないといけない。
絶望の淵で、ふと、ある人物の顔が脳裏に浮かんだ。
私はメッセージアプリの画面をスクロールさせ、お目当ての人物「花巻貴大」を探し出した。
アイコンの横にある電話マークをタップする。
呼び出し音が数回鳴った後、少し低い男性の声が聞こえてきた。
“はい”
「あ、貴大?」
“おう、久しぶり。電話どうした?珍しいな”
貴大は、大学時代のサークル仲間だ。
あの頃の合宿では、男女関係なくひとつの大部屋で雑魚寝をした、気兼ねない友人。
そして、何より私の家から比較的近い場所に住んでいる。
「実は、かくかくしかじかで……。家のエアコンが壊れて、修理が3週間も先なんたわって。貴大ってまだあのアパートに住んでる?もし良かったら、直るまで居候させてもらえないかな」
受話器の向こうで、貴大が少し笑いを堪えたような息を漏らすのが分かった。
“なるほど四角いムーブね。いいぜ。空いてる部屋はないけど、それでもよければ来いよ”
「やったー!ありがとう!本当に助かる!」
その日のうちに荷物を運びたいと伝えると、運が良いことに貴大も今日が休みだという。
彼が車を出してくれることになった。
……。
…………。
しばらくして、貴大がアパートの前まで迎えに来てくれた。
「荷物これだけか?意外と少ないな」
貴大は、手際よく小さなキャリーケースと段ボール箱1つを車のトランクに押し込みながら言う。
「うん、ありがとう。本当に至れり尽くせりだよ」
私は、彼の昔と変わらない笑顔を見て、心から安堵した。
「俺と●●の仲だろ?」
貴大は、運転席に乗り込む前に片目をつむってウインクをした。
大学時代から変わらない、底抜けに明るい表情。
その仕草に、思わず笑みがこぼれる。
走り出す車から流れる景色を見ながら、私は貴大との再会を噛み締めていた。
卒業して4年。サークルメンバーとの集まりでは顔を合わせていたけれど、2人きりで会うのは本当に久しぶりだ。
「仕事は順調?確か広告代理店だっけ?」
「あー……それなんだけどな。今、転職活動中。んで、決まってないのに退職届出して、有給消化してる訳なんですわ」
「え!そうなの!?大変な時期にごめんね……」
自分の生活が不安定な時期なのに、こうして私を快く受け入れてくれる。
彼の優しさが胸に沁みた。
ほどなくして、貴大のアパートに到着した。
築年数は感じるものの、手入れの行き届いた清潔感のある外観だ。
「どうぞ」
鍵を開けて貴大が招き入れてくれたワンルームの部屋は、決して広いとは言えないけど、逆にこのくらいの空間の方がなんだか落ち着く。
部屋の中には、ひんやりとしたエアコンの冷気が満ちていた。
「天国だ……」
思わず漏れた私の声に貴大は、
「大袈裟だな」
と笑った。
こうして、私のたった3週間の居候生活が、突然始まった。
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