~第一章~ ネオンとクロム
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
広場には街中の人たちがコバルト・ニッケルの帰りを今か今かと待っている。
その中にネオンの姿はない。
しばらくすると、満月を背に一つの影が飛んでくるのが見えた。
「見て!」
一人の子供がその方向を指差すと、一斉に視線が集まった。
「コバルト様だわ!」
「よくぞ戻られた!」
影はだんだんと大きくなり、やがて箒にまたがる男の姿がはっきりと見えてきた。
やがて男は広場の中央に静かに降り立った。
そんな彼のもとへ一番に駆け寄り、抱きついたのは小柄な女性、セレンだった。
「コバルト!」
「ただいま、セレン」
「寂しかったんだから」
セレンはコバルトの婚約者である。
若かりし頃のコバルトはセレンとの間に子供をもうけたが、有り余る探求心を抑えることができず、セレンとお腹の子を残して旅に出た。
「旅から戻ったら結婚しよう。」
そう約束して。
あれから時は流れ、17年が経った。
当時15やそこらだったコバルトは、昔の面影を残しつつも落ち着いた大人の男性へと成長していた。
コバルトは抱きついたセレンをそっと離し、代わりに腰に手を添えながら、街中の人々の方へ向き直った。
「皆様、お出迎え感謝します」
「何、堅苦しいこと言ってるんだよ!」
馴れ馴れしくそう言ったのは、街で酒場を営んでいる亭主だ。
「さあ、今日は貸し切りだ!みんな、俺の店で飲んでくれ!」
亭主を筆頭に、街中の人たちは酒場へと集まっていった。
コバルトの帰還とセレンとの結婚を兼ねたお祝いは、夜中まで続いた。
「失礼、少し夜風に当たってきますね」
「主役なんだから早く戻ってこいよ!」
酔っぱらいに絡まれつつも、コバルトは店の外へ出た。
店の中とは正反対に、とても静かだった。
夜風が気持ちいい。
「おい」
コバルトが涼んでいると、店の扉の横にもたれかかっている人影に話しかけられた。
月の光によって照らされた人影の主は……。
「ネオンじゃないか。大きくなったな」
「何しに戻ってきた」
ネオンはコバルトの言葉を無視するように、強い口調で攻め立てた。
「愛する息子に会いに来た、は理由にならないかな」
「今さら親父ヅラするな」
そう、ネオンはセレンとコバルトの息子だった。
しかし、セレンはコバルトが旅立った悲しみのせいで、生まれたばかりのネオンに虐待を働いた。
それを危険視した街の中枢の魔法使いは、ネオンを孤児院に預け、セレンからネオンの記憶を消した。
このことは中枢の魔法使いと施設の一部の人しか知らない。
ネオン自身は15歳を迎えた日に、そのことを施設の人から聞かされたが、未だにセレンはネオンのことをこの街の「誰かの子」としか思っていない。
幸いにも、見た目はコバルトとセレンのどちらにも似ていないため気付く人もおらず、魔法使いとしての才能もコバルト譲りではなく秀でていなかったため、誰も彼をコバルトとセレンの子供だとは気付かなかった。
しかし、似ていないからこそ身元不明のネオンのことを卑しいと感じる大人、そんな態度を取る大人を見て育った子供たちによって、虐げられたネオンは幼少期から孤独で惨めな環境で育った。
両親が誰か分からなかった間は、自分の人生を恨むことしかできなかったけれど、すべてを知った今なら、その矛先はもちろん――
「お前のせいで俺は……俺は……」
今にも殴りかかりそうに拳に力を込める。
そこへ、酒場の扉が軋んだ音を立てて開いた。
ギギギィ………
「コバルト、遅いよ」
セレンだった。
「……あら、ネオン君じゃない。こんな時間まで外に出ていちゃダメでしょ? おうちに帰りなさい」
「……っち」
記憶をなくしたやつはお気楽でいいよな、そんな気持ちを込めた舌打ち。
ネオンはすっかり興が醒めてしまい、その場を去った。
「あらやだ。親の顔が見てみたいわね」
「……そうだな」
このときのコバルトは、何とも言えない悲しそうな表情をしていた。
その中にネオンの姿はない。
しばらくすると、満月を背に一つの影が飛んでくるのが見えた。
「見て!」
一人の子供がその方向を指差すと、一斉に視線が集まった。
「コバルト様だわ!」
「よくぞ戻られた!」
影はだんだんと大きくなり、やがて箒にまたがる男の姿がはっきりと見えてきた。
やがて男は広場の中央に静かに降り立った。
そんな彼のもとへ一番に駆け寄り、抱きついたのは小柄な女性、セレンだった。
「コバルト!」
「ただいま、セレン」
「寂しかったんだから」
セレンはコバルトの婚約者である。
若かりし頃のコバルトはセレンとの間に子供をもうけたが、有り余る探求心を抑えることができず、セレンとお腹の子を残して旅に出た。
「旅から戻ったら結婚しよう。」
そう約束して。
あれから時は流れ、17年が経った。
当時15やそこらだったコバルトは、昔の面影を残しつつも落ち着いた大人の男性へと成長していた。
コバルトは抱きついたセレンをそっと離し、代わりに腰に手を添えながら、街中の人々の方へ向き直った。
「皆様、お出迎え感謝します」
「何、堅苦しいこと言ってるんだよ!」
馴れ馴れしくそう言ったのは、街で酒場を営んでいる亭主だ。
「さあ、今日は貸し切りだ!みんな、俺の店で飲んでくれ!」
亭主を筆頭に、街中の人たちは酒場へと集まっていった。
コバルトの帰還とセレンとの結婚を兼ねたお祝いは、夜中まで続いた。
「失礼、少し夜風に当たってきますね」
「主役なんだから早く戻ってこいよ!」
酔っぱらいに絡まれつつも、コバルトは店の外へ出た。
店の中とは正反対に、とても静かだった。
夜風が気持ちいい。
「おい」
コバルトが涼んでいると、店の扉の横にもたれかかっている人影に話しかけられた。
月の光によって照らされた人影の主は……。
「ネオンじゃないか。大きくなったな」
「何しに戻ってきた」
ネオンはコバルトの言葉を無視するように、強い口調で攻め立てた。
「愛する息子に会いに来た、は理由にならないかな」
「今さら親父ヅラするな」
そう、ネオンはセレンとコバルトの息子だった。
しかし、セレンはコバルトが旅立った悲しみのせいで、生まれたばかりのネオンに虐待を働いた。
それを危険視した街の中枢の魔法使いは、ネオンを孤児院に預け、セレンからネオンの記憶を消した。
このことは中枢の魔法使いと施設の一部の人しか知らない。
ネオン自身は15歳を迎えた日に、そのことを施設の人から聞かされたが、未だにセレンはネオンのことをこの街の「誰かの子」としか思っていない。
幸いにも、見た目はコバルトとセレンのどちらにも似ていないため気付く人もおらず、魔法使いとしての才能もコバルト譲りではなく秀でていなかったため、誰も彼をコバルトとセレンの子供だとは気付かなかった。
しかし、似ていないからこそ身元不明のネオンのことを卑しいと感じる大人、そんな態度を取る大人を見て育った子供たちによって、虐げられたネオンは幼少期から孤独で惨めな環境で育った。
両親が誰か分からなかった間は、自分の人生を恨むことしかできなかったけれど、すべてを知った今なら、その矛先はもちろん――
「お前のせいで俺は……俺は……」
今にも殴りかかりそうに拳に力を込める。
そこへ、酒場の扉が軋んだ音を立てて開いた。
ギギギィ………
「コバルト、遅いよ」
セレンだった。
「……あら、ネオン君じゃない。こんな時間まで外に出ていちゃダメでしょ? おうちに帰りなさい」
「……っち」
記憶をなくしたやつはお気楽でいいよな、そんな気持ちを込めた舌打ち。
ネオンはすっかり興が醒めてしまい、その場を去った。
「あらやだ。親の顔が見てみたいわね」
「……そうだな」
このときのコバルトは、何とも言えない悲しそうな表情をしていた。
