~第一章~ ネオンとクロム
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広場に街中の人たちがコバルト・ニッケルの帰りをまだかまだかと待っている。
その中にネオンの姿はない。
しばらくすると、満月を背に一つの影が飛んでくるのが見えた。
「見て!」
1人の子供がその方向を指差すと、一斉に視線が集まった。
「コバルト様だわ!」
「よくぞ戻られた」
影は段々と大きくなり、箒に跨がる男が目視できるようになった。
やがて男は広場の中央に静かに足を付けた。
そんな彼の元に一番最初に駆けつけ抱きついたのは小柄な女性、セレンだった。
「コバルト!」
「ただいま、セレン」
「寂しかったんだから」
セレンはコバルトの婚約者である。
若かりし頃のコバルトはセレンとの間に子供を儲けたが、有り余る探求心を抑えることができず、セレンとお腹の子を残して旅に出た。
旅から戻ったきたら結婚しよう。
そう約束をして。
あれからときは17年経ち、当時15やそこらだったコバルトは昔の面影を残しつつも落ち着いた大人の男性へとなっていた。
コバルトは抱きついたセレンを離し、代わりに腰に手を添えてから、街中の人々の方へ向き直した。
「皆様、お出迎え感謝いたします」
「何堅苦しいこと言ってるんだよ」
馴れ馴れしくそう言ってきたのは、街で酒場を営んでいる亭主。
「さあ、今日は貸しきりだ!みんな俺の店で飲んでくれ!」
亭主を筆頭に、街中の人たちは酒場へと集まった。
コバルトの帰還とセレンとの結婚を兼ねてお祝いは夜中まで続いた。
「失礼、少し夜風に当たってきますね」
「主役なんだから早く戻ってこいよ!」
酔っぱらいに絡まれつつも、コバルトは店の外へ出た。
店の中と正反対でとても静かだった。
夜風が気持ちいい。
「おい」
コバルトが涼んでいると、お店の扉の横でもたれ掛かっている人影に話しかけられた。
月の光によって照らされた人影の持ち主は、
「ネオンじゃないか。大きくなったな」
「何しに戻ってきた」
ネオンはコバルトの言葉を無視するように強い口調で、攻め立てた。
「愛する息子に会いに来た、は理由にならないかな」
「今さら親父面するな」
そう、ネオンはセレンとコバルトの息子。
しかし、セレンはコバルトが旅立った悲しみのせいで、産まれたばかりのネオンに虐待を働いた。
それを危険視した街の中枢の魔法使いはネオンを孤児院に預け、セレンからネオンの記憶を消した。
このことは中枢の魔法使いと施設の一部の人しか知らない。
ネオン自身は15の歳を迎えた日にそのことを施設の人から聞かされたが、未だにセレンはネオンのことをこの街の誰かの子としか思っていない。
幸いにも見た目はコバルトとセレンのどちらにも似ていないため勘づく人もおらず、魔法使いとしての才能もセレン譲りのため秀でてはおらず、誰も彼をコバルトとセレンの子供だとは気付かない。
しかし、似ていないからこそ身元不明のネオンのことを卑しいと感じる大人、そんな態度をとる大人を見て育った子供たちによって、虐げられたネオンは幼少期から孤独で惨めな環境で育った。
両親が誰か知るまでは自分の人生を恨むことしか出来なかったけれど、全てを知った今ならその矛先はもちろん、
「お前のせいで俺は……俺は……」
今にも殴りかかりそうに拳に力を込める。
そこへ、酒場の扉が軋んだ音を立てて開いた。
ギギギィ………
「コバルト、遅いよ」
セレンだ。
「………あらネオン君じゃない。こんな時間まで外に出ていちゃダメでしょ?おうちに帰りなさい」
「………っち」
記憶をなくしたやつはお気楽でいいよな、そんな気持ちを込めた舌打ち。
ネオンはすっかり興が醒めしてしまい、その場を去った。
「あら嫌だ。親の顔が見てみたいわね」
「……そうだな」
このときのコバルトは何とも言えない悲しそうな表情をしていた。
その中にネオンの姿はない。
しばらくすると、満月を背に一つの影が飛んでくるのが見えた。
「見て!」
1人の子供がその方向を指差すと、一斉に視線が集まった。
「コバルト様だわ!」
「よくぞ戻られた」
影は段々と大きくなり、箒に跨がる男が目視できるようになった。
やがて男は広場の中央に静かに足を付けた。
そんな彼の元に一番最初に駆けつけ抱きついたのは小柄な女性、セレンだった。
「コバルト!」
「ただいま、セレン」
「寂しかったんだから」
セレンはコバルトの婚約者である。
若かりし頃のコバルトはセレンとの間に子供を儲けたが、有り余る探求心を抑えることができず、セレンとお腹の子を残して旅に出た。
旅から戻ったきたら結婚しよう。
そう約束をして。
あれからときは17年経ち、当時15やそこらだったコバルトは昔の面影を残しつつも落ち着いた大人の男性へとなっていた。
コバルトは抱きついたセレンを離し、代わりに腰に手を添えてから、街中の人々の方へ向き直した。
「皆様、お出迎え感謝いたします」
「何堅苦しいこと言ってるんだよ」
馴れ馴れしくそう言ってきたのは、街で酒場を営んでいる亭主。
「さあ、今日は貸しきりだ!みんな俺の店で飲んでくれ!」
亭主を筆頭に、街中の人たちは酒場へと集まった。
コバルトの帰還とセレンとの結婚を兼ねてお祝いは夜中まで続いた。
「失礼、少し夜風に当たってきますね」
「主役なんだから早く戻ってこいよ!」
酔っぱらいに絡まれつつも、コバルトは店の外へ出た。
店の中と正反対でとても静かだった。
夜風が気持ちいい。
「おい」
コバルトが涼んでいると、お店の扉の横でもたれ掛かっている人影に話しかけられた。
月の光によって照らされた人影の持ち主は、
「ネオンじゃないか。大きくなったな」
「何しに戻ってきた」
ネオンはコバルトの言葉を無視するように強い口調で、攻め立てた。
「愛する息子に会いに来た、は理由にならないかな」
「今さら親父面するな」
そう、ネオンはセレンとコバルトの息子。
しかし、セレンはコバルトが旅立った悲しみのせいで、産まれたばかりのネオンに虐待を働いた。
それを危険視した街の中枢の魔法使いはネオンを孤児院に預け、セレンからネオンの記憶を消した。
このことは中枢の魔法使いと施設の一部の人しか知らない。
ネオン自身は15の歳を迎えた日にそのことを施設の人から聞かされたが、未だにセレンはネオンのことをこの街の誰かの子としか思っていない。
幸いにも見た目はコバルトとセレンのどちらにも似ていないため勘づく人もおらず、魔法使いとしての才能もセレン譲りのため秀でてはおらず、誰も彼をコバルトとセレンの子供だとは気付かない。
しかし、似ていないからこそ身元不明のネオンのことを卑しいと感じる大人、そんな態度をとる大人を見て育った子供たちによって、虐げられたネオンは幼少期から孤独で惨めな環境で育った。
両親が誰か知るまでは自分の人生を恨むことしか出来なかったけれど、全てを知った今ならその矛先はもちろん、
「お前のせいで俺は……俺は……」
今にも殴りかかりそうに拳に力を込める。
そこへ、酒場の扉が軋んだ音を立てて開いた。
ギギギィ………
「コバルト、遅いよ」
セレンだ。
「………あらネオン君じゃない。こんな時間まで外に出ていちゃダメでしょ?おうちに帰りなさい」
「………っち」
記憶をなくしたやつはお気楽でいいよな、そんな気持ちを込めた舌打ち。
ネオンはすっかり興が醒めしてしまい、その場を去った。
「あら嫌だ。親の顔が見てみたいわね」
「……そうだな」
このときのコバルトは何とも言えない悲しそうな表情をしていた。