~第一章~ ネオンとクロム
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~第一章~ ネオンとクロム
辺りは薬品の匂いが漂っている。
ここプラセオジムは大都市テネシンから少し離れた田舎街。
そのに住む青年ネオン・ネオジム。
中性的な顔立ちに、名前に似使わず落ち着いた雰囲気の青年だ。
彼の両親は健在だが、訳があって一人暮らしをしており、学生ながら生活費を稼ぐために魔法薬品店アルゴンでアルバイトをしている。
「いらっしゃいませ」
ドアベルがお客様の入店を知らせる。
小柄な女性客。顔はローブを深く被り、よく見えない。
「気になるものがございましたら、遠慮なく仰ってください」
「あ、はい」
どこかおどおどした女性客は、薬品を手に取っては棚に戻している。
目が悪いのか薬品のラベルを至近距離まで近付けて見ている。
そんなことを繰り返していると、やがて女性は何も買わずに店を出た。
「ありがとうございました」
ネオンはお辞儀をして女性客を見送った。
すると、お店の奥から備品整理をしていた長身で顔にそばかすのある男性が顔を出した。名前はクロム・ビスマス。ネオンの同級生だ。
「俺なら何も買わない客に笑顔で対応できないわ」
「それが仕事だろ」
面倒くさがりのクロムに仕事なら営業スマイルもお手の物のネオン。
一見正反対のタイプの様に見えるが、2人は仲が良い。
2人が雑談をしていると、
「そろそろ店を閉めようか」
年老いた亭主のポタシが話に割って入ってきた。
「え、まだ閉店には早すぎませんか?」
ついにボケたのかと心の中で思ったクロム。
だけど、閉店には理由があった。
「今日は偉大な魔法使い、コバルト・ニッケルが帰ってくる。出迎えに街中の人たちが集まって店には誰も来ないだろう。それに、お前たちも行きたいんじゃないか?」
「まじっすか!ありがとうございます!」
「……」
ポタシの言葉に喜ぶクロムに対して、ネオンは暗い表情を浮かべていた。
「何暗い顔してんだよ、ネオン!お前もコバルト・ニッケルさんのこと好きだって言ってただろ。……あれ、そう言えば、最近はその話を聞かないかも」
「好きだったよ、昔は……ね」
ネオンはポツリと呟き、お店の看板をClosedにひっくり返した。