〜第一章〜 誤った距離
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~第一章〜 誤った距離
高校を卒業してからめっきり体を動かす機会が減った。
大学にもサークルはあるけど、ふたを開けてみればいわゆる飲みサーと呼ばれる集まりだった。
最初の数回は参加したけど、それ以降はすっかり幽霊部員に。
大会もなければ顧問もほとんど来ない、強制力のないサークルだったから行かなくても問題はない。
代わりに毎朝自主的に家の近所でジョギングを始めた。
悪天候の日と体調不良のとき以外はほとんど毎日走っている。
同じコースのため、自ずと顔見知りができた。
特に公園の辺りでよくすれ違う五色工君。
彼は白鳥沢学園の1年生。
「●●さん!」
私を見つけると人懐っこいワンちゃんのように駆け寄ってきた工君。可愛い。
「工君、おはよう。最近暑くなってきたね」
「そうですね!」
「水分補給忘れずに、じゃあ」
「はい!」
ほんの一言二言話すだけ。
綺麗に揃えられた前髪を揺らしながら工君は走って行く。
彼との出会いはジョギングを始めて間もない頃。
今は青々としている木々にまだ桜が咲いていた。
朝のジョギング中にキョロキョロとしている男の子がいた。それが工君。
白鳥沢学園と背面プリントされた紫と白の二色のジャージ。
なんだか困っているようだったので、思わず声をかけた。
「ねぇ、君。どうしたの?探し物?」
「ぅえぇっ!」
私が近づいていることに気が付かなかったのか、変な声を出して驚いた少年。
「あーごめんね、急に話しかけて。なんか困ってそうだったから」
「あ、いえ。………あの白鳥沢学園はどっちですか……」
「え、白鳥沢?」
白鳥沢の学生から自らが通う学校の場所を訪ねられると思っていなくて、思わず聞き返してしまった。
「ロードワーク中にはぐれてしまって。俺、今年からこの学校に入ったので、まだ土地勘がなくて」
なるほど、そう言うことね。
私は腕時計を見た。講義までの時間はまだ大丈夫そうだ。
「学校まで一緒に行くよ。付いてきて」
「そんな、悪いですよ」
「いいから、いいから。ほら他の人たちに遅れちゃうでしょ」
そう言って私は学校までの道のりを走り出した。
並走しながら軽く自己紹介をした。名前、部活、将来の夢。
私にもそんな時期があったな、と思い出にふけってしまった。
しばらく走っていると、
「あ、ここ知っています!」
どうやら、ようやく見覚えのあるところまで出てこれたようだ。
「じゃあ、後は大丈夫だね!私はこっちだから。部活頑張ってね~」
そう言って方向を変えた。
工君も一礼をしてから手を振って学校の方へ走り出した。
それからと言うものの、すれ違うと軽く会話をするようになった。
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