とある日
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〜とあるゲームセンターへ行った日〜
「聖臣、コレ」
仕事から帰宅して早々、私は2枚の券を聖臣に見せた。
「なにそれ」
「今日、職場のパートさんから貰ったクレーンゲームの無料券」
どうやらゲームセンターと併設している映画館を利用した際、キャンペーンで貰ったらしい。
それをやらないからどうぞ、と貰った。
「せっかくだし一緒にどうかなって」
「……」
あからさまに嫌そうな顔をする聖臣。
分かる、分かるよその気持ち。
ゲームセンターなんてガヤガヤ煩いし、聖臣にとっては誰が触ったか分からない筐体なんて菌の巣窟。
私だって特別好きな訳ではない。
最後に行ったのだって学生の頃だし。
だけど、行ってみたら意外と悪くない、楽しかった、なんてこともあり得る。
だから一緒に行ってみたかった。
「聖臣は見ているだけでもいいから」
「……」
「あ、そうだ。そのゲームセンターの近くに、聖臣が気になってるって言っていた飲食店があったから、無料券をチャチャっと使ったらご飯食べに行こうよ」
「……」
聖臣の寄せていた眉間のシワが更に深まる。
やっぱりダメか。
諦めかけたとき、
「分かった。ただし、やったらすぐにお店を出るからな」
「!?…………うん!」
嬉しさのあまり、聖臣の首に抱きついた。
だけど、消えかけていた眉間のシワが再度深くなり、
「帰ってからまだ風呂に入っていないだろ」
ぺちっと頭を叩かれてしまった。
こう言うところは抜かりないんだから。
ーーーー
できるだけお客さんが少ない時間帯を狙おうと思ったけれど、普段利用しないためどの時間帯が良いのか分からず、おまけに無料券の期限が近づいているため、適当な休日に行くことになった。
お店に入った途端、耳障りな電子音が鳴り響く。
「うわー、久しぶり!どれをやろうかな」
テンションが高めの私に対して、聖臣は気怠そうに縮こまりながら私の後を付いてくる。
どのクレーンゲームをやろうか悩んでいると、
「どれでも一緒だろ」
聖臣は早くお店から出たいオーラを放ちながら言った。
そう言う訳にはいかない。
どうせやるなら欲しい景品のクレーンゲームがいい。
ふと、とある筐体に目がいった。
「あ、これなんかどうかな」
なんのアニメのキャラクターか分からないけれど、聖臣にそっくりな雰囲気のぬいぐるみ。
気怠げな目に少し癖のある髪型。
それに以前聖臣から見せてもらった高校の卒業アルバムに写っていた部活のユニフォームに似た色の衣装を着ている。
それなのに、
「こんなのがいいのか?」
聖臣は冷めた目でぬいぐるみを見つめる。
仮にもアナタに似ているから選んだのに。
少しだけ複雑な気分になりながら店員さんを呼んだ。
「すみませーん」
駆けつけてくれた店員さんに無料券を渡すと、なにやら筐体を操作してくれて、無料券分のプレイ回数がディスプレイに表示された。
「おまたせしました」
店員さんが立ち去ると、入れ替わるようにクレーンゲームの前に立った。
「よし、頑張ろー!」
謎に気合を入れて操作を始める。
正面や横から確認してから入念に位置を決めてボタンを押すと、クレーンが動きだした。
ぬいぐるみは見事アームに挟まり、上まで移動。
「よしっ」
だけど、無情にもアームからぬいぐるみはすべり落ちてしまった。
2回目も惜しいところまでいったけれど、またもや落下。
「あーあ、取れなかった」
大きく肩を落とす。
残念だけれど、無料分が終ったら帰る約束。
鞄を肩に掛け直して帰ろうとしたら、
「下手くそ。代われ」
何故か聖臣に交代を言い渡された。
「え、でもご飯は……」
「いいから」
お店の予約はしていないから別に時間は気にしなくていいけど……。
聖臣は財布から小銭を出し、投入口に入れた。
アームがぬいぐるみに引っかかり、持ち上がる。
だけど、私のとき同様途中で落ちてしまった。
「あー惜しい!」
「くそっ」
意外にもムキになっている聖臣が可愛いと思った。
こう言うところに凝り性、完璧主義の性格が出るな、と思った。
そのおかげでバレーも良いプレイができるんだろうけど。
「もう1回」
聖臣はもう1度財布を取り出した。
1回100円だけれど、500円入れると6回プレイできるクレーンゲーム。
聖臣は躊躇なく500円を投入した。
……。
…………。
「結局無料分以上やっちゃったね」
途中からいくら使ったか数えていないけど、結構使った。
まんまとお店の策略にハマった訳だ。
だけど、そのおかげで私の腕の中には聖臣そっくりなぬいぐるみがある。
そのぬいぐるみを抱きかかえながら、目的である飲食店へ向かっている。
「目立つから仕舞えよ」
「えー、せっかく聖臣が取ってくれたんだもん。もう少しだけ」
ムスッとしながらもそれ以上聖臣は何も言わなかった。
だけど、怒っているわけではない。
それを確認するために、
「楽しかったね!」
そう聞くと、
「ん」
聖臣はまた来てもいい、そんな顔をしていた。
ーーFinーー
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