とある日
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〜とある雪が積もった日〜
やってしまった。
全身ずぶ濡れの私。
別に通り雨に降られたとかではなく、ただちょっと童心に帰ったと言うか……。
遡ること1時間前────。
仕事が終わり職場を出ると、辺り一面真っ白な景色が広がっていた。
仕事に集中していて気が付かなかったけれど、どうやら雪が降っていたらしい。
何も考えずにローヒールのパンプスを履いて来てしまった。
歩くたびに雪の冷たさが伝わってくる。
「ぅう〜冷たっ!」
帰宅途中、ふと通りかかった公園を見ると、大きな雪だるまがいた。
手の部分には木の枝が刺さっており、目は石、鼻はシャベル、頭にはバケツが被されている。
近所の子供たちが作ったのだろう。
この雪だるまも明日になれば溶けてしまうのかな。
そう思うと、なんだか切なくなってきた。
とうに靴はぐっちょり濡れている。
これだけ濡れていれば、少し寄り道したって変わらない。
私は公園に入り、ビジネスバッグを膝で抱え込みながら雪を掻き集めた。
それをギュッギュッと強く固める。
出来た雪玉を軸にコロコロと転がす。
それの大きさ違いを2つできたところで2段に重ね、大きな雪だるまの隣に配置した。
少し小ぶりな雪だるまの完成。
「うん。我ながら良い出来」
仕上げに身に着けていたマフラーを雪だるまに巻き付ける。
「明日取りに来るから、それまで貸してあげる……なんてね」
雪だるまに話しかけるなんて、ちょっと可笑しくて笑いそうになる。
「さて、と」
満足いくまで雪遊びをしたところで、自分の姿を見ると、全身雪でずぶ濡れだった。
そして冒頭に戻る。
こんな姿で帰ったら、聖臣に引かれるかな。
いい歳してなにしてるんだよ、って。
だけど、楽しかったからいいや。
私は軽く雪を払ってから帰路についた。
ーーーー
「ただいま〜」
帰宅すると、玄関には聖臣の靴があった。
私が遊んで帰りが遅くなったんだから、既に帰宅していてもおかしくない。
早く冷えた体を温めるためにお風呂に入ろう。
そう思ったけれど、このまま上がると廊下に私の濡れた足跡が付いてしまう。
こうなったら、
「聖臣ー!ちょっと来てー!」
玄関から聖臣を呼ぶと、気怠そうにリビングから出てきた。
「お帰り、どうした……って、なんでそんなに濡れているわけ?●●の上だけ雨でも降ったの?」
呆れ顔で言われた。
「えへへ、ちょっと雪遊びしちゃった」
「たくっ……」
何も言っていないけれど、察した聖臣は脱衣場からタオルを取って渡してくれた。
「これで足だけでも拭いて、さっさとお風呂に入ってきて」
「ありがとう」
それだけ言うと、聖臣はさっさとリビングに戻ってしまった。
少しだけ素っ気ないと思いつつも、廊下は寒いもんね、仕方がない。
私は足をサッと拭いてから速やかにお風呂場へと向かった。
ーーーー
「良いお湯でした」
「しっかり温まったか?」
「うん」
むしろ湯船に浸かりすぎて逆上せそうになった。
「だけど、指がしもやけになっちゃった」
私の指は見事に真っ赤。
痛痒くて地味にツラい。
「はぁ〜なにやってんだよ」
聖臣は呆れ気味にため息を吐いてから、
「血行を良くするマッサージしてやるから、ここ座って」
自分が座っているソファの股へ座るよう指示してきた。
「わーい、お願いします」
「ん」
聖臣の温かくて大きくて角張った指が、私の指を1本1本丁寧に擦ったり押したりマッサージをしていく。
「っぁ……気持ち良い」
「変な声出すなよ」
「だって気持ち良いんだもん」
ほどなくして、
「ほら、終わったぞ」
「ありがとう」
私の指はすっかりポカポカになった。
「じゃあ、俺は晩ご飯の用意するから」
「ありがとう」
聖臣もまだご飯を食べていなかったんだ。
私を待っていてくれたから?
そうだったら、雪遊びをしたせいで持たせてしまって申し訳ない。
キッチンへ立っておかずを温め直す聖臣。
私も何か手伝おうと思い立ち上がると、雪がパラパラと降り始めていることに気がついた。
「雪……」
もしかしたら、明日まで雪だるまが残っているかも知れない。
窓の外をガラス越しから眺めると、ベランダのフェンスにちょこんと置かれている雪だるまを見つけた。
なんだ、聖臣だって雪遊びしていたんじゃない。
「ふふっ」
思わず笑みがこぼれた。
「何笑ってるんだ」
「ん〜?なんでもない」
「そうか」
だって雪だるまのことを言ったら拗ねちゃうでしょ?
雪は人を童心に帰させる不思議な力があると思った。
ーーFinーー
