とある日
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〜とある将来を考えた日〜
以前、早起きをしたときに寝ていた聖臣を置いて一人で朝ご飯を食べに行ったことがある。
そのとき聖臣に“起こしてくれたらよかったのに”と言われたことがある。
だけど、今日は朝ご飯ではなく早朝散歩だから、起こさなくてもいいよね。
昨日だって遠征で疲れて帰ってきた聖臣。
少しでも休んで欲しい。
私は静かに玄関の扉を開けた。
日の出前の薄暗い空。
町中はまだまだ静かだった。
「スーッ………ハァ……」
大きく深呼吸。
酸素が美味しい。
朝早いからか空気が澄んでいるように感じる。
そんなことを考えながら歩き出した。
いつも歩かない道を開拓しようと、地図アプリも見ず、ひたすら気になった方へと歩く。
人気の少なそうな路地裏。
あ、こんなところに喫茶店がある。
こんな時間から営業しているのか、窓からは温かみのある光がこぼれていた。
そして、コーヒーの良い香りが外まで香っている。
今度、聖臣を誘ってみようかな。
場所、忘れないようにしないと。
そう思っていると、目の前を三毛猫が横切った。
“黒猫が前を横切ると不吉なことが起こる”
迷信は信じていないけど、黒猫じゃなくてよかった。
せっかくだから行けるところまで後を付いていって見ようかな。
あまり近すぎると警戒されてしまうから一定の距離を取って。
きっとアニメのヒロインなら、この猫は私を一体どこへ導いてくれるのだろう、とワクワクしていることだろう。
だけど、生憎猫の脚が速いため、そんな余裕はない。
そこそこ粘ったけれど、公園の付近で見失ってしまった。
ついでに公園を一周してから帰ろうかな。
遊具は定番なブランコと滑り台くらいしかなかったけれど、ジョギングコースがあったり、池があったりと大きめな公園だった。
そのためか、私以外にも公園を利用している人がいた。
そんな中、一組の年配夫婦が手を繋いでこちらへ歩いてきた。
「おはようございます」
「あ、おはようございます」
話しかけられると思わなくて吃ってしまった。
人柄の良さそうな夫婦。
「仲が良いですね」
その雰囲気に思わず話題を振ってしまった。
年配夫婦のしっかりと握られている手に視線を向けて。
「ふふふ、お互い足腰が悪くてね。倒れないために手を繋いでいるんですよ」
と、ご婦人がユーモアを交えて答えた。
「ばあさん、行くぞ」
「はいはい。では失礼しますね」
そう言い残し、二人は去っていった。
ご婦人はあんな事を言っていたけど、例え理由やきっかけがそうであっても、嫌いな相手と手を繋いで歩くなんてできない。
私も聖臣とあの年配の夫婦のようになりたい。
そもそもまだ結婚していないし、そんな話も出ていないけど。
さて、私も帰らないと。
朝日はすっかり登っていた。
ーーーー
「ただいま〜」
「おかえり」
玄関のドアを開けると仁王立ちで出迎えてくれた聖臣が。
「え……どうかしたの?」
「なんで起こしてくれなかったの?」
「だって散歩だったから……」
「散歩でも起こして」
「分かった。次からそうするね」
拗ねてご機嫌斜めな聖臣に、せめてもと今日の散歩の出来事を話した。
良い香りがした喫茶店、横切った三毛猫、そして素敵な年配夫婦の話。
「本当に仲が良さそうでね、素敵だったんだよ」
「憧れるか?」
「えっ……。まあ、そうだね」
聖臣はどう言うつもりで聞いてきたの?
「俺も………●●となら悪くないと思った」
「聖臣!?」
聞き間違いじゃない?
私の都合の良い解釈じゃない?
「声うるさい」
「ごめん、でも嬉しくて」
「なんだそれ。大げさ」
と、ふふっと笑みを浮かべた聖臣。
聖臣は大したことじゃないと思っているかもしれないけれど、私にとっては大したことがある。
前、手を繋いで帰ったことを覚えている?
あのときは“●●は仕方ないから”って言ったんだよ。
だけど、今は“●●となら悪くない”と。
そのうち“●●がいい”って言ってもらえる日が来るといいな。
ーーFinーー