とある日
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~とある映画鑑賞した日~
私が好きな映画が動画サービスのサブスクで配信開始された。
当時映画館で見た映画。
もう一度見たいと思っていたから、これは是非とも配信期間中に見なければ。
「ねぇ、聖臣」
「ん?」
「一緒に映画見ない?」
夕食後のまったり時間に聖臣を映画鑑賞に誘った。
「これなんだけど」
そう言ってテレビで動画アプリを開いて、見たい映画のサムネイルを表示させた。
ゾンビと人間の恋愛ゾンビコメディ映画。
「1時間半か……今日は眠いからパス」
「そっか……」
「明日ならいい」
「絶対だからね!」
今直ぐに見てくれないのは悲しいけど、無理矢理見せて寝落ちされるのはもっと悲しい。
明日見るって約束もしてくれたし、これでよかったんだ。
そもそも聖臣じゃなくて私一人が見たいやつに付き合わせるんだし、仕方がない。
そうだ、明日は仕事帰りに映画観賞するとき用のケーキを買おうかな。
そうしよう。
翌日、定時で仕事が終わり早速洋菓子店へ向かった。
店内に入ると辺り一面甘い匂い。
それだけで幸せな気持ちになる。
ショーケースの中は閉店時間が近いこともあって売り切れている品もあったけど、選ぶには充分な種類が残っていた。
聖臣は何がいいかな。
いちごショートとチョコショートにして好きな方を選んでもらおうかな。
会計を済ませてお店を出ると、ちょうど聖臣からの仕事が終わったと連絡が来ていた。
“私も同じくらいに家に帰れると思う”と返信をしてから帰路についた。
ーーーー
途中で雨に降られたけど、ほとんど家の近くだったので、大して濡れずに済んだ。
「ただいま~」
浴室の電気がついている。
どうやら聖臣はお風呂に入っているようだ。
ケーキを冷蔵庫にしまって、お風呂の順番を待った。
しばらくすると、浴室の扉が開く音が聞こえた。
着替えを用意して脱衣所へと向かうと、
「おかえり………雨降ってたの?」
髪の毛を拭きながら出てきた聖臣とすれ違った。
「ただいま。家に着く直前だったからそんなに濡れなかったよ」
「そうか。悪かった、ゆっくり入ってくれ」
昔、雨に濡れて熱を出した経験があるからか、少しだけ濡れることに対して過保護な聖臣。
お風呂から出て、夕食の支度をしようとキッチンに立つと、ゴミ箱に捨てられていたクリームの付いたケーキフィルムと銀紙が目に入った。
これって私が買ってきたケーキだよね?
「聖臣、もしかして冷蔵庫に入っていたケーキ食べた?」
「小腹が空いて……いちごの方が●●のだったか?それなら悪かった」
そうじゃない。
どっちでもよかったよ。
ただ、ちょっとしたサプライズで出したかったし、どっちが食べたいかなって話もしたかったし、映画を見るときに一緒に食べたかった。
それを小腹が空いたからって一人で食べちゃうなんて。
「最低」
「は?悪かったって言ってるだろ、たかがケーキくらいで」
「もういいよ。一緒に映画見るときに食べたかったけど、もう一人で見るし」
我ながら下らないことで腹を立てている自覚はある。
だけど悲しかったし、たかがケーキくらいって言われたのも嫌だった。
その後は夜ご飯を一緒に食べたものの終始無言。
食器を片付けたら予定通り一人で映画鑑賞。
ケーキは食べる気が起きなくて冷蔵庫に入れっぱなし。
聖臣はいつの間にかリビングにいなかった。
きっと自室にでも籠ったんだろう。
映画はゾンビ物とは言え、ジャンルは恋愛ゾンビコメディ。
驚かし要素はあるけど、別に怖いから一緒に見たかった訳ではない。
この主人公とヒロインが私たちとどことなく似ている境遇だったから一緒に見たかった。
例えるならハッピーエンドのロミオとジュリエットみたいな話。
もちろん私たちは一目惚れではない、なんだったら第一印象最悪だし、当たり前だけど自害だってしていない。
ゾンビと人間の相いれない、結ばれるはずのないと思っていた二人が結ばれる話。
そんなところに共感した。
場面は主人公のゾンビとヒロインが出会ったところ。
そうそう、見た目はゾンビだから最初は怖かったんだよね。
それが段々格好よく見えるなんて。
映画に見入っていると、リビングの扉が開いた。
見てみると、びしょ濡れの聖臣の姿が。
手にはコンビニのビニール袋をぶら下げて。
「びしょ濡れじゃん!どうしたの?!」
「これ……」
そう言って手渡されたコンビニの袋の中にはいちごのショートケーキが。
「洋菓子店どこも閉まっていたから、コンビニので悪いけど……」
これのために雨に濡れてまでして買いに行ってくれたの……?
「ふふふ、ばっかだな~」
本当に馬鹿なんだから。
「わ、笑うことないだろ」
「ごめん、ありがとう」
「もう映画見終わったか?」
「まだ始まったばかりだよ」
「その、……俺も一緒に見ていいか?」
「うん。その前にシャワー浴びておいで?風邪引くよ」
「ああ」
聖臣が出るまでにコーヒーでも入れようかな。
ーーFinーー