とある日
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~とある嫉妬した日~
珍しい光景。
リビングのソファーで寝ている聖臣。
その手にはファンレターが。
きっと、手紙を読んでいる間に寝落ちしちゃったんだな。
手紙がシワになるといけないので、机に置き直して、ブランケットをかけた。
ファンレターか……。
付き合う前から何度も試合を見に行ったり、イベントに参加したけど、手紙を書く発想はなかった。
一度は経験しておけばよかった。
皆何を書いているんだろう。
応援しています、格好よかったですとか、プレーに感化されてバレーを始めた、とかかな。
はたまた恋しちゃいました………とか。
何度かデート中にファンの人に遭遇したことはあるけど、特にメディアとかには取り上げられていないから、交際している相手がいるって知られていない。
自慢したかったり、周知して貰いたいわけではないけど、知らないファンが聖臣に猛アタックをして、絆されてしまわないか少しだけ心配になる。
「スー………」
人の気も知らずにスヤスヤ寝ちゃって。
「……わ…か……………」
「え?」
寝返りを打った聖臣がそう寝言を呟いた。
今、わかって言った?
わか………ワカメ、な訳ないよね。
わかこ、わかな、わかば……。
どちらのわかさんだろう。
ファンレターの子?
読みたい、切実にファンレターを読みたい。
そうしたらわかさんの正体が分かるかもしれない。
でも、それはモラル的にアウトだし。
「んっ……」
悩んでいると、聖臣が目を覚ました。
「あ、おはよう」
「俺、寝てた。これありがとな」
と、ブランケットを見せた。
「こんなところで寝てるの珍しいね」
「え……あー、手紙読んでたら眠くなった」
何て書いてあったの?告白とかされちゃった?
軽いノリで聞けたらいいのに。
それ以降わかさんのことが気になって、聖臣への態度がどことなくぎこちなくなってしまった。
そして案の定、次の休みが重なったときに痺れを切らした聖臣に捕まった。
「避けられると堪えるって前言ったよな」
「あー、うん」
覚えている、私のせいで聖臣を避けていたときに言われたセリフ。
「今回はなんだ」
「えっと……これ」
私は先ほど書き終えた手紙を聖臣に渡した。
「何これ、手紙?」
「ファンレター……書いたことなかったから」
私の嫉妬を綴ったファンレター。
何度も書いては消して、書いては消して。
悩んだ末の内容。
呪いの手紙だと思われたらどうしよう。
「後で読ん……」
「今から読む」
「え……」
私の言葉を遮って、聖臣はその場で手紙を読み始めた。
ーーーー
佐久早聖臣様へ
ファンの時代から今まで聖臣に手紙を書いたことがなかったので、改めて思いを伝えます。
私たち、知り合って1年以上経ちましたね。
出会いは行きつけの居酒屋で私が聖臣の服に嘔吐したのが始まりでした。
そんな最低最悪な印象から始まったのにも関わらず、今では同棲までしているなんて、人生何が起こるか分かりませんね。
アナタに出会えてよかったです。
今回手紙を書こうと思ったきっかけは先日の聖臣の寝言のことです。
“わか”と呟いていました。
どちらのわかさんでしょうか。
ファンレターのお相手ですか?
その方が聖臣にファン以上の感情を持っていたらと考えると夜しか眠れません。
直接聞けないのでお手紙にしてみました。
最後にいつも応援しています。
ケガには気を付けてください。
◯◯●●より
ーーーー
読み終わったのか丁寧に手紙を封筒にしまった。
聖臣からの返事を大人しく待つ。
「わか……」
そう、わかって誰ですか!
一生懸命心当たりを探す聖臣は急に思い付いたのか、あっと声を上げた。
「もしかして若利君のことか?」
「若利君?」
「シュヴァイデンアドラーズに所属しているバレーボール選手。うちとも何度か対戦したことあるけど」
正直試合はMSBYブラックジャッカルもとい聖臣にしか目が行っていなくて、対戦相手のことはよく分かっていない。
「●●、若利君に嫉妬したのか?」
「えっとー……」
どうやらそのようだ。だけど、だけども、
「だとしても夢に出てくるほど若利君が好きなんだね!私が出てくる夢は見てくれないの?」
「見てるよ!………見てる」
見てるんだ……。
いざ言われると恥ずかしい。
「●●が俺の夢を見るように、俺だって●●の夢くらい見る」
「そうなんだ」
「うん」
お互い冷静さを取り戻し、先ほどまでの不毛なやり取りになんだか笑えてきた。
「ふふ…………私たち、お互いがお互いの夢を見てるんだね」
「笑うなよ」
どれだけ仲が良いんだろう。
そのうち聖臣の夢も私に共有させて欲しいな。
ーーFinーー