蛍光ペン
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授業が終わってすぐ、私は月島君に借りていた黄色い蛍光ペンを返した。
「助かりました」
「どういたしまシテ」
無事にペンを返すと、私は真っすぐに自分のロッカーへ足を向けた。
ガチャッとロッカーの扉を開けると、そこには他の教科書や体操着に埋もれるようにして、筆箱が顔を出している。
それを見た瞬間、心底安堵した。
やっぱりここに入っていた。
それを手に取り、私は自分の席へと戻る。
そして、先ほどの授業で使ったルーズリーフを取り出し、ノートに書き写し始めた。
相変わらず、見にくい……。
それでも何とか読もうと必死に目を凝らし、指でなぞりながら慎重に書いていく。
その様子をじっと見ていた月島君は、小さく鼻で笑った。
私は何も言い返せず、ただひたすらノートに視線を落とす。
だけど、見にくい字を休み時間に書き写すには時間が足りず、そのまま2限目が始まった。
その後も移動教室だったり、授業が長引いて休み時間が削られたり、と中々書き写す時間が取れず、学校が終わった。
ーーーー
家に帰宅すると、私はすぐに自室の机に向かった。
学校で書き写せなかった、ルーズリーフとノートを広げる。
「よしっ」
気合を入れてシャーペンを握るけれど、やはり蛍光ペンの字は読みにくい。
途中まで書き写したところで、集中力の切れた私は、机に突っ伏した。
「……」
ふと、視線の先にある机の引き出しに目が留まった。
長年開けていない場所。
そこには、過去の自分が封印した、淡い恋の思い出が眠っている。
恐る恐る引き出しを開けると、そこには1本の黄色い蛍光ペン。
月島君に宛てたラブレターを書いた、あのペンだ。
おそらく、インクはもう乾いて、色は出ないだろう。
それを捨てようと手を伸ばすと、ペン以外にもう1枚、折りたたまれた紙が入っていることに気が付いた。
「何これ……」
記憶にないその紙に、私の胸は嫌な予感でざわついた。
恐る恐る中を開くと、そこに広がるのは、小学生の頃の私が書いた、拙いラブレターだった。
『月島蛍君へ
お返事ありがとう。
まさか字が薄くて読めないなんて、言われると思わなくて、びっくりしちゃった。
だから、今度は、ちゃんと鉛筆で書き直します。』
そこまで読んで、私は手紙を閉じた。
これは、私が当時、月島君に言われた「字が薄くて読めなかった」という言葉を受けて、書き直したものだ。
結局、この手紙を渡す勇気は出ずに、あのペンとともに、長年引き出しに仕舞われた。
私はもう一度、その手紙を丁寧に広げた。
鉛筆で書かれた、どこか自信なさげな文字。
当時の私がどれだけ勇気を出して、これを書いたのか。
読み返すほどに胸が痛む。
そして、その続きを書くように、私は新しい便箋を1枚取り出した。
もちろん、今の私には彼に対して当時ほどの熱量はない。
それでも伝えないといけないと思った。
そうでなければ、あの頃の私が報われないから。
ペンを握る手に、力がこもる。
『月島蛍君へ
小学生のとき、アナタにラブレターを書いたことを覚えていますか?
あのとき「字が薄くて読めなかった」とアナタは言いました。
だけど、あの頃の私はどうしてもあの黄色い蛍光ペンで伝えたかったの。
私が一番お気に入りのペンで、アナタのことが好きだという気持ちを。
だって、黄色はアナタの名字の“月”を連想させる色で、蛍光ペンの“蛍”はアナタの名前と同じだったから。
結局うまく伝えられなかったけれど。
もし、あの時、はっきりと手紙が読めていたら、月島君はどんな反応をしていたかな。
なんて、考えても仕方ないことを想像してしまいます。
つまり、何が言いたいのかというと、イタズラであの手紙を送ったワケではありません。
それだけは分かってほしくて、今更お手紙を書きました。
◯◯●●より』
私は便箋を静かに閉じ、それを鞄にしまった。
「助かりました」
「どういたしまシテ」
無事にペンを返すと、私は真っすぐに自分のロッカーへ足を向けた。
ガチャッとロッカーの扉を開けると、そこには他の教科書や体操着に埋もれるようにして、筆箱が顔を出している。
それを見た瞬間、心底安堵した。
やっぱりここに入っていた。
それを手に取り、私は自分の席へと戻る。
そして、先ほどの授業で使ったルーズリーフを取り出し、ノートに書き写し始めた。
相変わらず、見にくい……。
それでも何とか読もうと必死に目を凝らし、指でなぞりながら慎重に書いていく。
その様子をじっと見ていた月島君は、小さく鼻で笑った。
私は何も言い返せず、ただひたすらノートに視線を落とす。
だけど、見にくい字を休み時間に書き写すには時間が足りず、そのまま2限目が始まった。
その後も移動教室だったり、授業が長引いて休み時間が削られたり、と中々書き写す時間が取れず、学校が終わった。
ーーーー
家に帰宅すると、私はすぐに自室の机に向かった。
学校で書き写せなかった、ルーズリーフとノートを広げる。
「よしっ」
気合を入れてシャーペンを握るけれど、やはり蛍光ペンの字は読みにくい。
途中まで書き写したところで、集中力の切れた私は、机に突っ伏した。
「……」
ふと、視線の先にある机の引き出しに目が留まった。
長年開けていない場所。
そこには、過去の自分が封印した、淡い恋の思い出が眠っている。
恐る恐る引き出しを開けると、そこには1本の黄色い蛍光ペン。
月島君に宛てたラブレターを書いた、あのペンだ。
おそらく、インクはもう乾いて、色は出ないだろう。
それを捨てようと手を伸ばすと、ペン以外にもう1枚、折りたたまれた紙が入っていることに気が付いた。
「何これ……」
記憶にないその紙に、私の胸は嫌な予感でざわついた。
恐る恐る中を開くと、そこに広がるのは、小学生の頃の私が書いた、拙いラブレターだった。
『月島蛍君へ
お返事ありがとう。
まさか字が薄くて読めないなんて、言われると思わなくて、びっくりしちゃった。
だから、今度は、ちゃんと鉛筆で書き直します。』
そこまで読んで、私は手紙を閉じた。
これは、私が当時、月島君に言われた「字が薄くて読めなかった」という言葉を受けて、書き直したものだ。
結局、この手紙を渡す勇気は出ずに、あのペンとともに、長年引き出しに仕舞われた。
私はもう一度、その手紙を丁寧に広げた。
鉛筆で書かれた、どこか自信なさげな文字。
当時の私がどれだけ勇気を出して、これを書いたのか。
読み返すほどに胸が痛む。
そして、その続きを書くように、私は新しい便箋を1枚取り出した。
もちろん、今の私には彼に対して当時ほどの熱量はない。
それでも伝えないといけないと思った。
そうでなければ、あの頃の私が報われないから。
ペンを握る手に、力がこもる。
『月島蛍君へ
小学生のとき、アナタにラブレターを書いたことを覚えていますか?
あのとき「字が薄くて読めなかった」とアナタは言いました。
だけど、あの頃の私はどうしてもあの黄色い蛍光ペンで伝えたかったの。
私が一番お気に入りのペンで、アナタのことが好きだという気持ちを。
だって、黄色はアナタの名字の“月”を連想させる色で、蛍光ペンの“蛍”はアナタの名前と同じだったから。
結局うまく伝えられなかったけれど。
もし、あの時、はっきりと手紙が読めていたら、月島君はどんな反応をしていたかな。
なんて、考えても仕方ないことを想像してしまいます。
つまり、何が言いたいのかというと、イタズラであの手紙を送ったワケではありません。
それだけは分かってほしくて、今更お手紙を書きました。
◯◯●●より』
私は便箋を静かに閉じ、それを鞄にしまった。
