蛍光ペン
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〜蛍光ペン〜
私には黒歴史がある。
それは小学生の頃に書いたラブレター。
一見、それだけなら可愛いものだけれど、その時の私は一番お気に入りのペンで書けば、それだけ相手にも思いが伝わる、と思っていた。
よりによって、お気に入りのペンが黄色の蛍光ペンだなんて……。
だって、黄色は好きな人の名字をイメージする色だったから。
蛍光ペンだったのも“蛍”の漢字が彼の名前と同じだったから。
そのことに気が付いてからは、私は何かと黄色の蛍光ペンを愛用するようになっていた。
蛍光ペンなんて、教科書にアンダーラインを引くためのもので、字を書くには不向きなのに。
私は一切気にせず、彼、月島蛍君に宛てたラブレターを書いた。
頑張って文章を考え、今までで一番綺麗な字で清書をして、何度も読み返し確認した。
そして、いざ授業終わりの教室で、私は月島君を引き止めた。
「……つ、月島君!」
「何、◯◯さん」
月島君は気怠げにこちらに振り向いた。
「あ、あのね……、月島君に渡したいものがあるの」
私はランドセルから例のラブレターを取り出した。
半日以上大切に入れていたそれは、少しだけ角が折れ、裏面は鉛筆の芯の汚れが微かに付いていた。
だけど、ここで引き返すワケにもいかず、私は意を決して月島君に渡した。
彼は中身を察したのか、その場では開けずに、
「後で読む」
とだけ言い残して、私の手から手紙を引っ張るようにして受け取り、教室を出ていった。
ちゃんと渡せてよかった。
心臓がドキドキ煩い。
オッケーをもらえたらどうしよう、なんてお花畑な思考をしていた。
だけど、現実はそんなに甘くない。
翌日、返事を楽しみに登校すると、昇降口で山口君と一緒にいる月島君と鉢合わせした。
「お、おはよう。山口君……と、月島君」
「おはよう、◯◯さん!」
「はよ……」
本当は直ぐ様月島君からの返事を聞きたかったけれど、山口君が側にいるため、その場では催促せずに教室へ向かおうとした。
それなのに、
「ねえ、◯◯さん。昨日のアレ……」
まさか、月島君の方から返事をしようとしてきた。
こんなところで言うの?
山口君に聞かれちゃう。
それとも、あえて仲の良い山口君の前で言って、祝福してもらう気なの?
そう思っていたら、
「字、薄くて読めなかった」
「えっ……」
イエスでもノーでもない返事に戸惑いが隠せず、私は言葉を失った。
「じゃ、そういうことだから」
月島君は山口君に、
「行くよ」
と呼びかけて、教室の方へ行ってしまった。
途中、山口君が心配するように、
「良かったの、ツッキー?」
と月島君に尋ねていたけれど、彼は、
「いい」
と素っ気なく言うだけだった。
少し前まではあんなにソワソワ、ワクワクしていたのに……。
目の前が真っ暗になるとはこのことかと、その時初めて経験した。
これが私の小学生時代の黒歴史。
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