私の苦手な人
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今年もこの季節がやってきてしまった。
大嫌いなマラソン大会。
嫌味なほど突き刺さる日差しの元、校外の決められたルートを走る。
なんてことない行事。
それなのに、私にとっては悪夢以外の何物でもない。
去年のあの苦しみが脳裏に蘇る。
あんなに頑張ったのに結果は最下位で、あまりの情けなさに泣きそうになった。
いや、少し泣いた。
そのときの悔しさが、今でも胸を締めつける。
そんな不安で硬い表情をしている私に、マイコが声をかけてくれた。
「私も走るの苦手〜!ねえ、一緒にゴールしようよ」
と、その声は飛び切り明るい。
「いいの?」
「もちろん!」
マイコの真っ直ぐな瞳に、一瞬だけ期待が芽生えた。
もしかしたら、今年は大丈夫かもしれない。
ほどなくして、スタートの合図が響き渡る。
生徒たちが一斉に走り出した。
先頭集団は陸上部だろうか。
風を切るように軽やかに駆けていく。
「速いね〜。でも、私たちは私たちのペースで走ろうね!」
マイコはそう言って、私に笑顔を向けた。
だけど、少しずつマイコとの距離が開き始めた。
彼女の背中が遠ざかっていく。
そして、カーブを曲がったところで、ついに彼女の姿が見えなくなった。
ああ、やっぱり。
分かっていたことだ。
去年のあの子も、同じことを言って私を置いていった。
期待した私が馬鹿だった。
ギラギラに輝く太陽が、まるで私を嘲笑っているようだ。
それでも、私は足を止めなかった。
……。
…………。
まるで灼熱の砂漠の中を走らされているかのよう。
喉はカラカラに乾き、唾を飲み込む度に喉がチクチクして痛い。
それでも、私は足を止めずにいた。
もう私以外の生徒は、みんな折り返してしまったのだろうか。
前から来る生徒たちの顔は、どこか余裕さえ感じさせる。
その度に、自分だけが取り残されてしまったような孤独感が胸を締め付けた。
ふと、視界がぐらりと揺れる。
体が自分の意志とは関係なく傾いた。
気が付けば、私はバランスを崩して、転んでしまった。
「……っ!」
転んだ衝撃で、膝と手のひらに鋭い痛みが走る。
火傷しそうなくらい熱いアスファルトに肌が直接触れ、ジリジリと痛みが広がる。
早く立ち上がらなきゃ。
そう思うのに、体は重く、全く言うことを聞いてくれない。
私の横を通り過ぎる生徒たちが、心配そうに声をかけてくれる。
「大丈夫?」
「頑張れ!」
言葉は優しいけれど、誰も手を差し伸べてはくれない。
彼らはただ、私を通り過ぎていく。
その瞬間、先日クッキーを受け取ってもらえなかった女子生徒の顔が脳裏に浮かんだ。
あの時、私は彼女を見捨てるように、何も声をかけずに立ち去ってしまった。
……同じだ。
だから、これはきっと自業自得。
そう思うと、胸の奥がチクリと痛んだ。
その時、ふと目の前に、すっと、影が差した。
顔を上げると、そこにいたのは佐久早君だった。
彼は何も言わずに、ただ静かに、その手を私に差し伸べていた。
「ほら、早く起きろ」
その言葉は素っ気ない。
けれど、その手は優しかった。
極度の潔癖症のはずの佐久早君が、砂埃と汗まみれの私に、迷うことなく手を差し伸べてくれている。
その事実だけで、胸が熱くなった。
「なんで……」
掠れた声で呟くと、佐久早君は、まるで当たり前のことを言うかのように、淡々とした声で答えた。
「目の前に倒れているヤツがいたら、助けるだろ」
その言葉と、差し伸べられた手は、真夏の灼熱から私を救い上げてくれる光のように感じた。
もしかしたら、佐久早君は、私が思っていたような人じゃないのかもしれない。
大嫌いなマラソン大会。
嫌味なほど突き刺さる日差しの元、校外の決められたルートを走る。
なんてことない行事。
それなのに、私にとっては悪夢以外の何物でもない。
去年のあの苦しみが脳裏に蘇る。
あんなに頑張ったのに結果は最下位で、あまりの情けなさに泣きそうになった。
いや、少し泣いた。
そのときの悔しさが、今でも胸を締めつける。
そんな不安で硬い表情をしている私に、マイコが声をかけてくれた。
「私も走るの苦手〜!ねえ、一緒にゴールしようよ」
と、その声は飛び切り明るい。
「いいの?」
「もちろん!」
マイコの真っ直ぐな瞳に、一瞬だけ期待が芽生えた。
もしかしたら、今年は大丈夫かもしれない。
ほどなくして、スタートの合図が響き渡る。
生徒たちが一斉に走り出した。
先頭集団は陸上部だろうか。
風を切るように軽やかに駆けていく。
「速いね〜。でも、私たちは私たちのペースで走ろうね!」
マイコはそう言って、私に笑顔を向けた。
だけど、少しずつマイコとの距離が開き始めた。
彼女の背中が遠ざかっていく。
そして、カーブを曲がったところで、ついに彼女の姿が見えなくなった。
ああ、やっぱり。
分かっていたことだ。
去年のあの子も、同じことを言って私を置いていった。
期待した私が馬鹿だった。
ギラギラに輝く太陽が、まるで私を嘲笑っているようだ。
それでも、私は足を止めなかった。
……。
…………。
まるで灼熱の砂漠の中を走らされているかのよう。
喉はカラカラに乾き、唾を飲み込む度に喉がチクチクして痛い。
それでも、私は足を止めずにいた。
もう私以外の生徒は、みんな折り返してしまったのだろうか。
前から来る生徒たちの顔は、どこか余裕さえ感じさせる。
その度に、自分だけが取り残されてしまったような孤独感が胸を締め付けた。
ふと、視界がぐらりと揺れる。
体が自分の意志とは関係なく傾いた。
気が付けば、私はバランスを崩して、転んでしまった。
「……っ!」
転んだ衝撃で、膝と手のひらに鋭い痛みが走る。
火傷しそうなくらい熱いアスファルトに肌が直接触れ、ジリジリと痛みが広がる。
早く立ち上がらなきゃ。
そう思うのに、体は重く、全く言うことを聞いてくれない。
私の横を通り過ぎる生徒たちが、心配そうに声をかけてくれる。
「大丈夫?」
「頑張れ!」
言葉は優しいけれど、誰も手を差し伸べてはくれない。
彼らはただ、私を通り過ぎていく。
その瞬間、先日クッキーを受け取ってもらえなかった女子生徒の顔が脳裏に浮かんだ。
あの時、私は彼女を見捨てるように、何も声をかけずに立ち去ってしまった。
……同じだ。
だから、これはきっと自業自得。
そう思うと、胸の奥がチクリと痛んだ。
その時、ふと目の前に、すっと、影が差した。
顔を上げると、そこにいたのは佐久早君だった。
彼は何も言わずに、ただ静かに、その手を私に差し伸べていた。
「ほら、早く起きろ」
その言葉は素っ気ない。
けれど、その手は優しかった。
極度の潔癖症のはずの佐久早君が、砂埃と汗まみれの私に、迷うことなく手を差し伸べてくれている。
その事実だけで、胸が熱くなった。
「なんで……」
掠れた声で呟くと、佐久早君は、まるで当たり前のことを言うかのように、淡々とした声で答えた。
「目の前に倒れているヤツがいたら、助けるだろ」
その言葉と、差し伸べられた手は、真夏の灼熱から私を救い上げてくれる光のように感じた。
もしかしたら、佐久早君は、私が思っていたような人じゃないのかもしれない。
