私の苦手な人
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〜私の苦手な人〜
私には苦手な人がいる。
それは、クラスメイトの佐久早聖臣君。
いつもマスクをしていて、目元以外は表情が読み取れない。
そのせいで、何を考えているのか分からない。
だけど、私が彼に苦手意識を持つようになったのは、そんな漠然とした理由からではなかった。
それは、つい先日のこと。
授業が終わり、移動教室へ向かう廊下。
私の前を、佐久早君が歩いていた。
その時、ペラリと1枚のプリントが彼のノートから舞い落ち、音もなく床に滑った。
見慣れた、今日の授業で使うプリントだ。
私は反射的に、
「佐久早君!」
と声をかけ、プリントに手を伸ばした。
その瞬間、信じられないほどの速さで、彼は振り返った。
その鋭い眼光は、まるで“触るな”とでも言っているかのよう。
彼は床に落ちたプリントを、私が触れるよりも早く、風を切り裂くかのように素早く拾い上げた。
その一連の動作があまりにも速く、そして強引で、私の手は宙をさまよったまま止まってしまった。
別に、見られてはいけないものでも、触れられたら困るものでもない。
それなのに、あんな形相で。
まるで私を避けるかのように。
もしかして、私に触られたくなかった?
その日の昼休み、私は友達のマイコにこの話を打ち明けることにした。
ーーーー
マイコとお昼ご飯の準備をしている時。
「ねえ、佐久早君ってさ────」
私は彼のプリントを拾おうとした時の出来事を話した。
その話に、マイコは少し驚いたように目を丸くする。
「●●は佐久早と去年クラスが違ったから知らないかー。佐久早はね、極度の潔癖なんだよ」
マイコが指差す先には、佐久早君の姿があった。
彼はお弁当を広げる前に、持っていたアルコール除菌シートで念入りに手を拭き、更に鞄から取り出した除菌スプレーをシュッシュッと手に吹きかけてから、ようやく箸を取った。
ああ、そういえば、いつもやっていることだった。
「だから、●●が特別に嫌われてるとかじゃないから、心配しないで」
マイコの説明と、佐久早君の言動で、妙に納得してしまった。
潔癖症なのは、自衛のためだろうから勝手だと思う。
だけど、その態度が、まるで私をバイ菌扱いしているように感じて、心にチクリと刺さった。
いくら消毒したって、目には見えない常在菌はそこら中にいる。
彼のあまりにも度が過ぎる行動は、理解はできても、私を不意に傷つけた。
これがきっかけで、私は佐久早君に、どうしようもないほどの苦手意識を持つようになったのだ。
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