よりによって次が体育とか。 また汗かくじゃん。

億劫すぎて体操着に着替えるのが出遅れてしまった。
友達には先に行っててもらい、遅れて体育館へ向かった。

すると、佐久早君が体育館からこちらの方へ向かって来た。
教室に戻るのかな？何か忘れ物？

すれ違い様に横目で佐久早君を見ると、私の腕を掴んできた。


「え、何？！」

「あ、いや、なんでもない」


そう言い捨てると、そそくさと去っていった。
え？今のは何だったの？

初めて佐久早君に触れられた。

そんなことよりも体育館へ急がないと。

私よりも後で体育館へ入ってきた佐久早君の手には除菌スプレーが握りしめられていた。

あれを取りに戻っていたのか。
いや、だからって何で私の腕を掴んだの？
益々意味が分からない。

佐久早君に対して挙動不審な態度を取ってしまった私も私だが、彼も大概な気がする。


ーーーー


その日以来、佐久早君とたまに目が合うようになった。
あの夢を見てから佐久早君を変に意識しちゃって、気付いたら目で追っている。
でも、目が合うと言うことは佐久早君も私を見ていることになる。

あ、佐久早君、寝癖付いてる。
元々癖のある黒髪だけど、こうして見ているうちに違いが分かってくる。
だから、あれは絶対に寝癖だ。

誰も教えてあげないのか、はたまた気が付いていないのか。

教えてあげようかどうしようか悩んでいると、また目があった。

授業中だったため、先生にバレない程度に“髪”と口パクをし、佐久早君の髪の毛を指差した。

最初は意図を汲んでくれなかったが、2回目に目があったときも同じ事をしたらようやく伝わったようだ。

佐久早君は手で寝癖を押さえるが離すとぴょこんと跳ねる髪。
それがとても可愛らしく感じた。

190㎝近くある男性に可愛いって思うの変だけど、本当にそう思ったのだ。

今なら聞けるかも、何で見てくるのって。
でも自意識過剰だと恥ずかしいし、◯◯さんが見てくるから、なんて先に言われたら返す言葉がない。

“鶏が先か卵が先か”みたいな？
どっちが先に見始めたなんて分からない。