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「と、言うことで縁下先生!ご指導のほどをよろしくお願いします!」
田中の部屋に集まった赤点常習犯を代表し、私が手を合わせて頭を下げると、縁下は深いため息を吐いた。
「聞いてた人数より多いんだけど。いつの間に◯◯と木下、成田まで増えたんだ?」
縁下の視線の先には、田中、西谷に加えて、同じバレー部の木下と成田も並んで座っている。
どうやら赤点回避は、バレー部にとって今年の最重要課題らしい。
縁下は不満を言いながらも、何だかんだ親切に教えてくれた。
根が真面目な彼が、困っている仲間を見捨てるはずがない。
狭い田中の部屋は、6人もの人間が集まったせいで人口密度が異常に高かった。
ぎゅうぎゅうになりながら、全員が小さな机に向かう。
私は幸運にも、解説役である縁下の隣に座ることができた。
狭い空間で、度々肘が彼の腕にぶつかる。
その度に、彼の体温を感じて、私の集中力がブツリと切れそうになる。
部屋はクーラーが効いていて涼しいはずなのに、私と縁下の間だけ、熱を帯びているような気がした。
「縁下、ここなんだけど……」
私は勇気を出して、教科書のわからない箇所を指差した。
至近距離で彼が身を乗り出す。
石鹸のような爽やかな香りが鼻をくすぐった。
「そこは、この公式使って────」
縁下は私のノートに、サラサラと迷いのない線で公式を書き込んだ。
その字はとても見やすくて、綺麗な字だった。
彼の横顔と、ノートに走るペン先に見とれすぎて、ときたま周りに他の人がいることを忘れてしまいそうになる。
……ダメだダメだ!
私は赤点を取るためにここに来たんじゃない。
縁下との貴重な時間も、勉強を疎かにしては台無しだ。
私は頬を叩いて気合を入れ直した。
縁下の教え方は上手で、躓いていた数学も、嘘のように理解できた。
さすが特進クラスだ。
だけど、いつまでも集中力は続かない。
「そろそろ頭がパンクする!」
西谷の叫びで、私の集中力は完全に切れた。
そんな時。
「おやーつ!」
田中が満面の笑みで、スナック菓子の袋を抱えて部屋に戻ってきた。
ナイスタイミング。
気が利くやつだ。
皆でお菓子を摘まみながら、進捗具合や部活の雑談をする。
その中で、縁下が私に向かって首を傾げた。
「◯◯は、教えたら飲み込み早いのに、なんで赤点常習犯なんだ?」
純粋に不思議だとでも言いたげな顔だった。
「え?勉強していないから以外の理由がある?」
私は真顔で答えた。
「……聞いた俺がバカだったわ」
縁下は額に手を当てて諦めたように言った。
「縁下はバカじゃないよ!」
こんなにも分かりやすく勉強を教えてくれる縁下が、バカなはずがない。
私がムキになって反論した。
「ははは、ありがとう」
縁下は困ったような、少しだけ嬉しいような、複雑な苦笑いを浮かべた。
何か変なことを言っただろうか。
ただ思ったことを言っただけなのに。
「さ、時間ねぇぞ。もう一頑張りするべ!」
田中の掛け声で、再び勉強を再開した。
日が暮れるまで、この日の勉強会は続いた。
田中の部屋に集まった赤点常習犯を代表し、私が手を合わせて頭を下げると、縁下は深いため息を吐いた。
「聞いてた人数より多いんだけど。いつの間に◯◯と木下、成田まで増えたんだ?」
縁下の視線の先には、田中、西谷に加えて、同じバレー部の木下と成田も並んで座っている。
どうやら赤点回避は、バレー部にとって今年の最重要課題らしい。
縁下は不満を言いながらも、何だかんだ親切に教えてくれた。
根が真面目な彼が、困っている仲間を見捨てるはずがない。
狭い田中の部屋は、6人もの人間が集まったせいで人口密度が異常に高かった。
ぎゅうぎゅうになりながら、全員が小さな机に向かう。
私は幸運にも、解説役である縁下の隣に座ることができた。
狭い空間で、度々肘が彼の腕にぶつかる。
その度に、彼の体温を感じて、私の集中力がブツリと切れそうになる。
部屋はクーラーが効いていて涼しいはずなのに、私と縁下の間だけ、熱を帯びているような気がした。
「縁下、ここなんだけど……」
私は勇気を出して、教科書のわからない箇所を指差した。
至近距離で彼が身を乗り出す。
石鹸のような爽やかな香りが鼻をくすぐった。
「そこは、この公式使って────」
縁下は私のノートに、サラサラと迷いのない線で公式を書き込んだ。
その字はとても見やすくて、綺麗な字だった。
彼の横顔と、ノートに走るペン先に見とれすぎて、ときたま周りに他の人がいることを忘れてしまいそうになる。
……ダメだダメだ!
私は赤点を取るためにここに来たんじゃない。
縁下との貴重な時間も、勉強を疎かにしては台無しだ。
私は頬を叩いて気合を入れ直した。
縁下の教え方は上手で、躓いていた数学も、嘘のように理解できた。
さすが特進クラスだ。
だけど、いつまでも集中力は続かない。
「そろそろ頭がパンクする!」
西谷の叫びで、私の集中力は完全に切れた。
そんな時。
「おやーつ!」
田中が満面の笑みで、スナック菓子の袋を抱えて部屋に戻ってきた。
ナイスタイミング。
気が利くやつだ。
皆でお菓子を摘まみながら、進捗具合や部活の雑談をする。
その中で、縁下が私に向かって首を傾げた。
「◯◯は、教えたら飲み込み早いのに、なんで赤点常習犯なんだ?」
純粋に不思議だとでも言いたげな顔だった。
「え?勉強していないから以外の理由がある?」
私は真顔で答えた。
「……聞いた俺がバカだったわ」
縁下は額に手を当てて諦めたように言った。
「縁下はバカじゃないよ!」
こんなにも分かりやすく勉強を教えてくれる縁下が、バカなはずがない。
私がムキになって反論した。
「ははは、ありがとう」
縁下は困ったような、少しだけ嬉しいような、複雑な苦笑いを浮かべた。
何か変なことを言っただろうか。
ただ思ったことを言っただけなのに。
「さ、時間ねぇぞ。もう一頑張りするべ!」
田中の掛け声で、再び勉強を再開した。
日が暮れるまで、この日の勉強会は続いた。
