呼び方ひとつで
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〜呼び方ひとつで〜
烏野高校に入学してほどなく、私はまだ周りに馴染めていなかった。
そんな私の唯一話せる相手は……。
「孝ちゃーん!」
たまたま職員室から出てきた幼馴染を見つけて、彼の元へ駆け寄った。
「おいおい、●●!学校では菅原先輩って呼べって言ってるだろ」
そう言って私を突き放す彼は2つ上の菅原孝支。
「今更何言ってるの。別に良くない?」
「今更じゃないよ。中学の時から言ってんべ?」
「忘れちゃった」
なんて、私はわざとらしく舌をべーっと出した。
だけど、忘れているわけないじゃん。
言われたとき、凄くショックを受けたから。
だって私たち幼馴染なんだよ?
なんで昔は孝ちゃんって呼んで良くて、今はダメなの?
駄々を捏ねているけれど、本当は分かっている。
上下関係、郷に入っては郷に従えって事。
だけど、孝ちゃんとの関係に壁が出来たみたいで嫌だった。
「●●、そんなんだと社会に出た時困るぞ?」
「……」
そんなこと言われても、名前で呼んでいるの、孝ちゃんだけだし。
他の人にはちゃんと先輩呼びするし、敬語も使う。
「はぁ〜」
私のあまりの頑固さに呆れたのか孝ちゃんは大きくため息を吐いた。
「学校外ならいつもどおり呼んでいいから、今は折れてくれない?な?」
なんて優しく頭をポンポンするものだから、
「……分かった」
と、簡単に折れてしまった。
だけど、私は器用な性格ではない。
学校外で孝ちゃんっと呼ぼうものなら、絶対に学校でもうっかり呼んでしまう。
だから外でも先輩呼びをしてやる。
そして、孝ちゃんも私と壁ができたって疎外感を味わえば良いんだ。
「それじゃ、俺行くから。●●も授業頑張れよ」
私の頭に置かれた孝ちゃんの手の温もりが消えていき、彼は一度も振り返ることなく、教室へと入っていった。
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