安心する背丈
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全ての競技が終わり、校舎の前には大きな拍手と歓声が響いていた。
勝ったチームも、負けたチームも、泥だらけの笑顔で、なんだか清々しい顔をしている。
クラスのみんなで集合写真を撮った後、体育祭は無事に幕を閉じた。
そして、同時に片付け作業が始まる。
グラウンドに出した椅子の脚を拭き、教室へと運ぶ。
その後は委員会ごとに分かれた。
体育委員はテントの片付け、放送委員は放送機材の片付け、保健委員は救護用意の片付け。
私たち生活委員はグラウンドなどに落ちているゴミ拾い。
私は手に大きめのゴミ袋を持ち、校庭の隅から隅まで歩いた。
グラウンドにはお菓子の袋やペットボトルに混ざって、忘れ物のタオルが落ちている。
本部のテントは片付けられちゃったし、後で職員室まで届けないと。
仕事が増えてしまって嫌になる。
タオルを拾った後、ゴミ拾いを再開すると、ふと強い風が吹いてきた。
気が付くと、地面には私たちが作った体育祭のしおりが落ちていた。
あんなに頑張って作ったのに、体育祭が終わればゴミも同然。
少しだけ悲しい気持ちになった。
しおりを拾い上げるも、中々ゴミ袋に入れられないでいる。
だって、そのしおりをよく見たら、ステープラーの芯を留め直した跡があったから。
このしおりは紛れもなく、私が作ったものだ。
感傷に浸っていると、
「●●ちゃん、こっちは拾い終わったよー!」
菅原先輩が駆け寄ってきた。
「そっちはどう?……って、何見てるの?」
「な、なんでもないです!」
私は慌ててしおりをゴミ袋に押し込む。
「借り物競争のときもそうだけど、俺に隠し事しすぎじゃない?」
菅原先輩は冗談なのか、寂しいアピールをしてくる。
「そ、それは……」
だって、たかがしおりを捨てられただけで悲しむなんて、話したらきっと笑われてしまう。
私だって、今までそういった類のものは、用が済んだら捨ててきた。
それなのに、自分の時だけ贔屓するなんて……。
……あ、そうか。
今気が付いた。
私は菅原先輩との思い出ごと捨てられた気分になったから悲しかったんだ。
一緒に居残りをした思い出を。
そんなとき、ふと初めて先輩と身だしなみチェックをしたときの言葉を思い出した。
“伝えなきゃいけない時は、しっかり伝えるのが大事なんだ”
「……」
ゴミ袋に突っ込んだシワシワになったしおりを取り出す。
そして、思い切って顔を上げた。
「菅原先輩……。これ……先輩と一緒に作ったしおりなんです。それが捨てられていて、なんだか悲しくて……」
先輩は目を丸くして、私としおりを交互に見ている。
「もちろん、捨てた人にとってはそんなこと知らないだろうけど、私にとっては大切な思い出だったから……」
自分で言って、少し情けない気もするけれど、それが今の本当の気持ちだ。
しばらく沈黙が流れて、菅原先輩がそっと微笑む。
「そういうとこ、●●ちゃんらしくて好きだな」
それだけ言うと、先輩は急に私の肩にそっと腕を回して、ぎゅっと抱きしめてくれた。
「せ、せ、せ、先輩?!」
顔が熱くなるのを感じながら、私は慌てて先輩の胸に手を当てた。
「借り物競争のときは、●●ちゃんの方から抱きついてくれたじゃん」
「それは勢いと言いますか……」
ごにょごにょしていると、先輩は気にせず話を続けた。
「あー、やっぱり安心する」
「安心?」
「この前、俺よりでかい後輩ばっかりって話しただろ?だから、●●ちゃんくらいのサイズの後輩が安心するの」
「そ、そんな事言われても……」
先輩は安心するかもしれないけれど、私は心臓がうるさくて落ち着かない。
そういう意味だったのに、
「俺のこと嫌い?もう憧れの先輩じゃなくなった?」
本気で嫌がられていると勘違いさせてしまった。
さっき、大事なことは伝えるって決めたばかりなのに。
「そうじゃなくて……憧れ通り越して、好きに……なっちゃいました」
「そっか。通り越しちゃったんだ」
先輩を見ると、いたずらっぽい表情と、それ以上に優しい目がそこにあった。
「じゃあ……これからは、好きな人として、俺の側にいてよ」
そう呟くと、先輩は少し照れくさそうにはにかんで、でもしっかりと私を見つめた。
「はい……」
夕焼けに染まるグラウンド。
お互い汗をかいているし、手にはゴミ袋が握られているけれど、それすらも愛おしく感じる。
これからは“憧れの先輩”ではなく“好きな人”として側にいよう。
ーーFinーー
勝ったチームも、負けたチームも、泥だらけの笑顔で、なんだか清々しい顔をしている。
クラスのみんなで集合写真を撮った後、体育祭は無事に幕を閉じた。
そして、同時に片付け作業が始まる。
グラウンドに出した椅子の脚を拭き、教室へと運ぶ。
その後は委員会ごとに分かれた。
体育委員はテントの片付け、放送委員は放送機材の片付け、保健委員は救護用意の片付け。
私たち生活委員はグラウンドなどに落ちているゴミ拾い。
私は手に大きめのゴミ袋を持ち、校庭の隅から隅まで歩いた。
グラウンドにはお菓子の袋やペットボトルに混ざって、忘れ物のタオルが落ちている。
本部のテントは片付けられちゃったし、後で職員室まで届けないと。
仕事が増えてしまって嫌になる。
タオルを拾った後、ゴミ拾いを再開すると、ふと強い風が吹いてきた。
気が付くと、地面には私たちが作った体育祭のしおりが落ちていた。
あんなに頑張って作ったのに、体育祭が終わればゴミも同然。
少しだけ悲しい気持ちになった。
しおりを拾い上げるも、中々ゴミ袋に入れられないでいる。
だって、そのしおりをよく見たら、ステープラーの芯を留め直した跡があったから。
このしおりは紛れもなく、私が作ったものだ。
感傷に浸っていると、
「●●ちゃん、こっちは拾い終わったよー!」
菅原先輩が駆け寄ってきた。
「そっちはどう?……って、何見てるの?」
「な、なんでもないです!」
私は慌ててしおりをゴミ袋に押し込む。
「借り物競争のときもそうだけど、俺に隠し事しすぎじゃない?」
菅原先輩は冗談なのか、寂しいアピールをしてくる。
「そ、それは……」
だって、たかがしおりを捨てられただけで悲しむなんて、話したらきっと笑われてしまう。
私だって、今までそういった類のものは、用が済んだら捨ててきた。
それなのに、自分の時だけ贔屓するなんて……。
……あ、そうか。
今気が付いた。
私は菅原先輩との思い出ごと捨てられた気分になったから悲しかったんだ。
一緒に居残りをした思い出を。
そんなとき、ふと初めて先輩と身だしなみチェックをしたときの言葉を思い出した。
“伝えなきゃいけない時は、しっかり伝えるのが大事なんだ”
「……」
ゴミ袋に突っ込んだシワシワになったしおりを取り出す。
そして、思い切って顔を上げた。
「菅原先輩……。これ……先輩と一緒に作ったしおりなんです。それが捨てられていて、なんだか悲しくて……」
先輩は目を丸くして、私としおりを交互に見ている。
「もちろん、捨てた人にとってはそんなこと知らないだろうけど、私にとっては大切な思い出だったから……」
自分で言って、少し情けない気もするけれど、それが今の本当の気持ちだ。
しばらく沈黙が流れて、菅原先輩がそっと微笑む。
「そういうとこ、●●ちゃんらしくて好きだな」
それだけ言うと、先輩は急に私の肩にそっと腕を回して、ぎゅっと抱きしめてくれた。
「せ、せ、せ、先輩?!」
顔が熱くなるのを感じながら、私は慌てて先輩の胸に手を当てた。
「借り物競争のときは、●●ちゃんの方から抱きついてくれたじゃん」
「それは勢いと言いますか……」
ごにょごにょしていると、先輩は気にせず話を続けた。
「あー、やっぱり安心する」
「安心?」
「この前、俺よりでかい後輩ばっかりって話しただろ?だから、●●ちゃんくらいのサイズの後輩が安心するの」
「そ、そんな事言われても……」
先輩は安心するかもしれないけれど、私は心臓がうるさくて落ち着かない。
そういう意味だったのに、
「俺のこと嫌い?もう憧れの先輩じゃなくなった?」
本気で嫌がられていると勘違いさせてしまった。
さっき、大事なことは伝えるって決めたばかりなのに。
「そうじゃなくて……憧れ通り越して、好きに……なっちゃいました」
「そっか。通り越しちゃったんだ」
先輩を見ると、いたずらっぽい表情と、それ以上に優しい目がそこにあった。
「じゃあ……これからは、好きな人として、俺の側にいてよ」
そう呟くと、先輩は少し照れくさそうにはにかんで、でもしっかりと私を見つめた。
「はい……」
夕焼けに染まるグラウンド。
お互い汗をかいているし、手にはゴミ袋が握られているけれど、それすらも愛おしく感じる。
これからは“憧れの先輩”ではなく“好きな人”として側にいよう。
ーーFinーー
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