安心する背丈
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学校生活や身だしなみチェックなどに慣れてきた頃、新しい生活委員の仕事がやってきた。
それは体育祭のしおり作成。
数ページに及ぶプリントをステープラーで留める作業だ。
ひとクラスに集められた生活委員は、自分たちのクラスの分を黙々とこなしていく。
だけど、中にはサボりや部活なのか、1人でやっているクラスもある。
菅原先輩も見掛けない。
かく言う私のクラスも、もう1人の子が用事があるから、と私1人で作業をしている。
真偽は分からないけど。
先輩はいないし、作業は単調でつまらない。
無心で取り組んでいると、あることに気が付いた。
「あれ……」
1種類だけやたら余っているページがる。
もしかして……。
恐る恐る出来上がったしおりを確認すると、案の定ページが抜けていた。
全てやり直しだ。
最悪……。
「ハァ……」
ため息をつきながらも、やってしまったことは仕方がない。
私は渋々芯を外すことにした。
その間、他のクラスは作業が終わったのか、1組、また1組と教室から出ていく。
きっと終わるの、私のクラスが最後なんだろうな……。
そう思いながらも手を動かし周りの進行状況を見る。
すると、全く手つかずのしおりの束が置かれていることに気が付いた。
あの机の場所は3年生だ。
2人とも欠席か用事で来られなかったのかな。
ともあれ、私が最後ではないことが分かり、少しだけ安心した。
芯を全て取り終わり、再度留める作業に移る頃には、教室には私と山のままのしおりがあるのみ。
プリントの擦れる音と、カチカチとひたすらステープラーの留める音が教室に響く。
後少しで終わると言うところで、教室の扉が勢いよく開いた。
「?!」
扉の方を見ると、息を切らせた体操着姿の菅原先輩の姿があった。
「す、菅原先輩、どうしたんですか?!」
「梶谷が休みなの……ハァ……ハァ……忘れてて……」
梶谷先輩とは菅原先輩のクラスのもう1人の生活委員のことだ。
どうやら休みなのを忘れて部活に行っちゃったらしい。
と、言うことはこの手付かずのしおりの山は、菅原先輩のクラスのもの。
今からこれを1人でやるのは大変だ。
「あの……手伝いましょうか?私の方、もう少しで終わるので」
遠慮がちに聞くと、
「マジ?助かるよ!」
先輩は凄く喜んでくれた。
そして、プリントの束を持って、私の目の前の席へと座る。
「せっかく●●ちゃんが手伝ってくれるんだから、ちゃちゃっと終わらせんべ!」
菅原先輩はそう言って、器用にプリントを順番通りに揃え始める。
張り切っているところ申し訳ないけど、私は先輩と2人きりになれるのが嬉しくて、少しでも長く、こうしていたいと思ってしまった。
だけど、やらないわけにもいかず、自分のクラスのしおりを終わらせて、先輩のクラスのしおりもステープラーで留めていく。
ふと、すぐ隣の菅原先輩の横顔を見た。
夕暮れの逆光で、少しはにかんだような眼差しが優しく感じる。
その視線に気が付いた菅原先輩は、一瞬だけ手を止めてこちらを見る。
「どうかした?」
「え、……あっ……その……作業が早いな、と思って」
咄嗟に出た言いワケ。
いや、実際に早いのは事実だけれど。
「そりゃあ、●●ちゃんの時間を奪っちゃってるからね。早く解放してあげないと」
クスっと笑いながら、菅原先輩はステープラーの芯を補充する。
「……まあ、でも、こうして2人きりって、なんかいいよね。特別って感じで」
ポツリという先輩の言葉に、胸がドキンと跳ねる。
「私も、特別だなって……思っていました」
そう伝えると、先輩はほんの少しだけ驚いたように私を見て、それから穏やかに目を細めて微笑んだ。
「なーんだ、同じ事考えていたのか」
同じ考え……。
それが嬉しいと同時に照れくさくて、思わず指先が震える。
おかげでステープラーの芯が斜めに留まってしまった。
……。
…………。
結局、2人で協力して作業はあっという間に進んだ。
最後の1冊を閉じると、菅原先輩が深々と私に頭を下げる。
「本当に助かった。ありがとな!●●ちゃん」
「いえ、お役に立ててよかったです」
教室を出るころには、窓の外の空が薄闇に包まれ始めていた。
2人で並んで廊下を歩きながら、なんだかほんの少しだけ、先輩との距離が縮まったような気がした。
それは体育祭のしおり作成。
数ページに及ぶプリントをステープラーで留める作業だ。
ひとクラスに集められた生活委員は、自分たちのクラスの分を黙々とこなしていく。
だけど、中にはサボりや部活なのか、1人でやっているクラスもある。
菅原先輩も見掛けない。
かく言う私のクラスも、もう1人の子が用事があるから、と私1人で作業をしている。
真偽は分からないけど。
先輩はいないし、作業は単調でつまらない。
無心で取り組んでいると、あることに気が付いた。
「あれ……」
1種類だけやたら余っているページがる。
もしかして……。
恐る恐る出来上がったしおりを確認すると、案の定ページが抜けていた。
全てやり直しだ。
最悪……。
「ハァ……」
ため息をつきながらも、やってしまったことは仕方がない。
私は渋々芯を外すことにした。
その間、他のクラスは作業が終わったのか、1組、また1組と教室から出ていく。
きっと終わるの、私のクラスが最後なんだろうな……。
そう思いながらも手を動かし周りの進行状況を見る。
すると、全く手つかずのしおりの束が置かれていることに気が付いた。
あの机の場所は3年生だ。
2人とも欠席か用事で来られなかったのかな。
ともあれ、私が最後ではないことが分かり、少しだけ安心した。
芯を全て取り終わり、再度留める作業に移る頃には、教室には私と山のままのしおりがあるのみ。
プリントの擦れる音と、カチカチとひたすらステープラーの留める音が教室に響く。
後少しで終わると言うところで、教室の扉が勢いよく開いた。
「?!」
扉の方を見ると、息を切らせた体操着姿の菅原先輩の姿があった。
「す、菅原先輩、どうしたんですか?!」
「梶谷が休みなの……ハァ……ハァ……忘れてて……」
梶谷先輩とは菅原先輩のクラスのもう1人の生活委員のことだ。
どうやら休みなのを忘れて部活に行っちゃったらしい。
と、言うことはこの手付かずのしおりの山は、菅原先輩のクラスのもの。
今からこれを1人でやるのは大変だ。
「あの……手伝いましょうか?私の方、もう少しで終わるので」
遠慮がちに聞くと、
「マジ?助かるよ!」
先輩は凄く喜んでくれた。
そして、プリントの束を持って、私の目の前の席へと座る。
「せっかく●●ちゃんが手伝ってくれるんだから、ちゃちゃっと終わらせんべ!」
菅原先輩はそう言って、器用にプリントを順番通りに揃え始める。
張り切っているところ申し訳ないけど、私は先輩と2人きりになれるのが嬉しくて、少しでも長く、こうしていたいと思ってしまった。
だけど、やらないわけにもいかず、自分のクラスのしおりを終わらせて、先輩のクラスのしおりもステープラーで留めていく。
ふと、すぐ隣の菅原先輩の横顔を見た。
夕暮れの逆光で、少しはにかんだような眼差しが優しく感じる。
その視線に気が付いた菅原先輩は、一瞬だけ手を止めてこちらを見る。
「どうかした?」
「え、……あっ……その……作業が早いな、と思って」
咄嗟に出た言いワケ。
いや、実際に早いのは事実だけれど。
「そりゃあ、●●ちゃんの時間を奪っちゃってるからね。早く解放してあげないと」
クスっと笑いながら、菅原先輩はステープラーの芯を補充する。
「……まあ、でも、こうして2人きりって、なんかいいよね。特別って感じで」
ポツリという先輩の言葉に、胸がドキンと跳ねる。
「私も、特別だなって……思っていました」
そう伝えると、先輩はほんの少しだけ驚いたように私を見て、それから穏やかに目を細めて微笑んだ。
「なーんだ、同じ事考えていたのか」
同じ考え……。
それが嬉しいと同時に照れくさくて、思わず指先が震える。
おかげでステープラーの芯が斜めに留まってしまった。
……。
…………。
結局、2人で協力して作業はあっという間に進んだ。
最後の1冊を閉じると、菅原先輩が深々と私に頭を下げる。
「本当に助かった。ありがとな!●●ちゃん」
「いえ、お役に立ててよかったです」
教室を出るころには、窓の外の空が薄闇に包まれ始めていた。
2人で並んで廊下を歩きながら、なんだかほんの少しだけ、先輩との距離が縮まったような気がした。
