好きな人の好きな物は嫌いでも好き
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お風呂を済ませてリビングに行くと、孝支が鍋の用意をしていた。
「あのさ、切ってあった食材、鍋に入れたけど、よかったよな?」
「うん、ありがとう。助かる」
取り分け火の通りが遅いものはないと思うけれど、それでもやっておいてくれるのは助かる。
湯気がリビングを満たし、鼻腔をくすぐる。
土鍋の中で、真っ赤なスープがグツグツと音を立て、具材を煮詰めていく。
……。
…………。
「そろそろ大丈夫かな?」
鍋の蓋を開け、湯気で少し滲んだ視界の中、箸で具材の火の通りを確認する。
そして、各々の取り皿に、赤いスープをたっぷり纏ったお肉と野菜をよそっていった。
「はい、どうぞ」
「ありがとう」
「では……」
「「いただきまーす!」」
真っ赤に染まった肉と白菜を、意を決して口に運ぶ。
見た目の猛烈な色合いの割に、風味があって美味しい。
と思った、次の瞬間。
「辛いっ!」
思わず口元を押さえてしまう。
これは、最初にガツンと来るタイプではなく、じわじわと、徐々に辛さが蓄積されていくタイプだ。
まだ一口しか食べていないのに、額の生え際からは、早くもじんわりと汗が滲み出るのを感じた。
「俺に合わせなくても良かったのに」
そう言う孝支は、まったく辛さを感じていないのか、涼しい顔をして一口、また一口と頬張っている。
それどころか、食卓に置いてあった唐辛子パウダーの小瓶を手に取り、自分の皿に追加で振りかける始末だ。
「だって……好きな人の好きな物を、一緒に食べたかったんだもん」
私は、辛さで少し潤んだ目で孝支を見上げる。
「それに、せっかく2人で晩ご飯食べているのに、違う物を食べるのって何だか寂しいじゃん」
再度、火傷しそうなくらい熱い、真っ赤な食材をフーフーと懸命に冷まし、口に運ぶ。
辛い、でも、美味しい。
一方、先ほどまで平然と食べていた孝支は、急に箸を置いた。
「……」
やはり、さすがの孝支にも、この鬼のような辛さは堪えたのだろうか。
そんな風に思っていると、彼は突然、深く、ため息を吐き出した。
「はあぁぁ〜、なんでそんな可愛いこと言うかな」
「か、可愛い?!」
突然のことに、私は目を丸くする。
辛さのせいではなく、顔が熱くなるのを感じた。
「一緒に食べたいと思うのなんて、当たり前じゃないの?」
「その当たり前が、俺にとっては幸せなんだよ」
孝支は、少し呆れたような、でもそれ以上に愛しさが溢れた目で私を見つめ返した。
よく分からないけれど、彼が心底喜んでくれているのは伝わってくる。
よっぽど、この激辛鍋が美味しくて嬉しかったのだろう。
「あ、お皿空になってる。よそうから貸して」
「ありがとう」
私は辛さでヒリヒリする唇を気にしつつ、彼の皿に具材を盛り付ける。
「シメの麺も買ってあるから、遠慮なく食べてね!」
激辛の刺激と、孝支の愛おしい言葉によって、今晩の2人の心は、身体の芯からほっこりと温まったのだった。
ーーFinーー
「あのさ、切ってあった食材、鍋に入れたけど、よかったよな?」
「うん、ありがとう。助かる」
取り分け火の通りが遅いものはないと思うけれど、それでもやっておいてくれるのは助かる。
湯気がリビングを満たし、鼻腔をくすぐる。
土鍋の中で、真っ赤なスープがグツグツと音を立て、具材を煮詰めていく。
……。
…………。
「そろそろ大丈夫かな?」
鍋の蓋を開け、湯気で少し滲んだ視界の中、箸で具材の火の通りを確認する。
そして、各々の取り皿に、赤いスープをたっぷり纏ったお肉と野菜をよそっていった。
「はい、どうぞ」
「ありがとう」
「では……」
「「いただきまーす!」」
真っ赤に染まった肉と白菜を、意を決して口に運ぶ。
見た目の猛烈な色合いの割に、風味があって美味しい。
と思った、次の瞬間。
「辛いっ!」
思わず口元を押さえてしまう。
これは、最初にガツンと来るタイプではなく、じわじわと、徐々に辛さが蓄積されていくタイプだ。
まだ一口しか食べていないのに、額の生え際からは、早くもじんわりと汗が滲み出るのを感じた。
「俺に合わせなくても良かったのに」
そう言う孝支は、まったく辛さを感じていないのか、涼しい顔をして一口、また一口と頬張っている。
それどころか、食卓に置いてあった唐辛子パウダーの小瓶を手に取り、自分の皿に追加で振りかける始末だ。
「だって……好きな人の好きな物を、一緒に食べたかったんだもん」
私は、辛さで少し潤んだ目で孝支を見上げる。
「それに、せっかく2人で晩ご飯食べているのに、違う物を食べるのって何だか寂しいじゃん」
再度、火傷しそうなくらい熱い、真っ赤な食材をフーフーと懸命に冷まし、口に運ぶ。
辛い、でも、美味しい。
一方、先ほどまで平然と食べていた孝支は、急に箸を置いた。
「……」
やはり、さすがの孝支にも、この鬼のような辛さは堪えたのだろうか。
そんな風に思っていると、彼は突然、深く、ため息を吐き出した。
「はあぁぁ〜、なんでそんな可愛いこと言うかな」
「か、可愛い?!」
突然のことに、私は目を丸くする。
辛さのせいではなく、顔が熱くなるのを感じた。
「一緒に食べたいと思うのなんて、当たり前じゃないの?」
「その当たり前が、俺にとっては幸せなんだよ」
孝支は、少し呆れたような、でもそれ以上に愛しさが溢れた目で私を見つめ返した。
よく分からないけれど、彼が心底喜んでくれているのは伝わってくる。
よっぽど、この激辛鍋が美味しくて嬉しかったのだろう。
「あ、お皿空になってる。よそうから貸して」
「ありがとう」
私は辛さでヒリヒリする唇を気にしつつ、彼の皿に具材を盛り付ける。
「シメの麺も買ってあるから、遠慮なく食べてね!」
激辛の刺激と、孝支の愛おしい言葉によって、今晩の2人の心は、身体の芯からほっこりと温まったのだった。
ーーFinーー
