虹がかかる
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
その日の授業が終わり、教室を出たところで、隣のクラスの美化委員さんに呼び止められた。
「どうしたの?」
私が尋ねると、彼女は少し視線を彷徨わせた。
「実は、ちょっと急用ができちゃって……」
そう言って、彼女は申し訳なさそうに俯く。
その先をはっきりとは言わなかったけれど、その表情と状況で大方見当がついた。
今日の放課後の花壇の水やり当番のことだろう。
「分かった、当番代わればいいのね?」
私の言葉に、彼女はパッと顔を上げた。
その瞳には、安堵と感謝の光が宿っている。
「◯◯さん、ごめんね。お願いします」
そう言うと、彼女はそそくさと昇降口へ小走りで行った。
特に予定はないから当番を代わったけれど、面倒くさいという気持ちはある。
私は気怠げに用具室へと向かった。
……。
…………。
水やり用のホースを手に、第二体育館近くの花壇へ向かう。
辺りは部活をしている生徒たちの掛け声が聞こえてくる。
私は乾いた花壇の土にザアザアと、花たちに水をかけた。
そんな作業の最中、
「狼狽えるな!」
体育館から大声が聞こえてきた。
その声に、私の手が一瞬止まる。
この声は間違いなく澤村君だ。
一体、中で何が起きているのだろう。
本当はすぐさま体育館を覗きに行きたいけれど、練習を中断させてまで聞きに行く勇気は私にはない。
それに、花たちも水を待っている。
だから、明日、何があったのか聞いてみようかな。
ーーーー
翌朝。
水やり当番のため、いつもより少し早く登校した。
すると、昇降口で見かけた澤村君に声をかけた。
「おはよう、澤村君」
「おー◯◯。おはよう」
私は昨日の放課後、体育館から聞こえてきた彼の叫び声のことを話した。
「あれ、聞かれてたのか。恥ずかしいな」
彼は頬をかきながら苦笑いをする。
照れたように少し俯く仕草が、普段の頼れる主将としての姿とは違っていて、新鮮だった。
どうやら、東京遠征に行くための条件として課せられた期末テスト。
その赤点常習犯のチームメイトたちを、彼が叱咤していたとのこと。
その結果、テストまでの間、3年生が部活の前後で後輩に勉強を教えることになったらしい。
自分の勉強だってあるだろうに、そこまでしてみんなと遠征に行って強くなりたいのか。
そのひたむきな想いに、私は胸を打たれた。
だけど、それは当然の行いなのかもしれない。
だって、本来なら引退する時期なのに残るということは、それ相当の強い想いがあるから。
「私にも手伝えることある?」と聞いたら、少しおこがましいかな。
そんなことを思っていると、澤村君が優しい目で私を見ていた。
「それにしても、朝も水やりしてたのに、授業後もやってるんだな」
「あ、いや、昨日のは当番を代わっただけだから」
「だとしたら、◯◯は優しいな」
そう言って笑う澤村君の目元は、とても穏やかだった。
優しいのは澤村君の方だよ。
私なんか、そんな風に言われる資格なんてない。
だって、この美化委員の仕事だって、面接のアピールポイント稼ぎのために、形だけやっているに過ぎないのに。
私は少し意地になってしまった。
「メリットがなければやらないよ」
すると、澤村君は、私の言葉を軽く受け流すように、優しい声で続けた。
「メリットなんか考えているやつが、花と会話しながら水やりするか?」
「え?」
その言葉に、私は思わず彼の顔を見上げた。
彼は真っ直ぐに私の目を見て、ニヤリと笑う。
「なんだ、俺の方が◯◯のこと詳しいようだな」
「……っ!」
驚きと、図星を指された恥ずかしさ、そして彼の言葉が嬉しくてたまらない気持ちが入り混じって、私は何も返せなかった。
ただ、彼の優しい笑顔を見つめ返すことしかできなかった。
「どうしたの?」
私が尋ねると、彼女は少し視線を彷徨わせた。
「実は、ちょっと急用ができちゃって……」
そう言って、彼女は申し訳なさそうに俯く。
その先をはっきりとは言わなかったけれど、その表情と状況で大方見当がついた。
今日の放課後の花壇の水やり当番のことだろう。
「分かった、当番代わればいいのね?」
私の言葉に、彼女はパッと顔を上げた。
その瞳には、安堵と感謝の光が宿っている。
「◯◯さん、ごめんね。お願いします」
そう言うと、彼女はそそくさと昇降口へ小走りで行った。
特に予定はないから当番を代わったけれど、面倒くさいという気持ちはある。
私は気怠げに用具室へと向かった。
……。
…………。
水やり用のホースを手に、第二体育館近くの花壇へ向かう。
辺りは部活をしている生徒たちの掛け声が聞こえてくる。
私は乾いた花壇の土にザアザアと、花たちに水をかけた。
そんな作業の最中、
「狼狽えるな!」
体育館から大声が聞こえてきた。
その声に、私の手が一瞬止まる。
この声は間違いなく澤村君だ。
一体、中で何が起きているのだろう。
本当はすぐさま体育館を覗きに行きたいけれど、練習を中断させてまで聞きに行く勇気は私にはない。
それに、花たちも水を待っている。
だから、明日、何があったのか聞いてみようかな。
ーーーー
翌朝。
水やり当番のため、いつもより少し早く登校した。
すると、昇降口で見かけた澤村君に声をかけた。
「おはよう、澤村君」
「おー◯◯。おはよう」
私は昨日の放課後、体育館から聞こえてきた彼の叫び声のことを話した。
「あれ、聞かれてたのか。恥ずかしいな」
彼は頬をかきながら苦笑いをする。
照れたように少し俯く仕草が、普段の頼れる主将としての姿とは違っていて、新鮮だった。
どうやら、東京遠征に行くための条件として課せられた期末テスト。
その赤点常習犯のチームメイトたちを、彼が叱咤していたとのこと。
その結果、テストまでの間、3年生が部活の前後で後輩に勉強を教えることになったらしい。
自分の勉強だってあるだろうに、そこまでしてみんなと遠征に行って強くなりたいのか。
そのひたむきな想いに、私は胸を打たれた。
だけど、それは当然の行いなのかもしれない。
だって、本来なら引退する時期なのに残るということは、それ相当の強い想いがあるから。
「私にも手伝えることある?」と聞いたら、少しおこがましいかな。
そんなことを思っていると、澤村君が優しい目で私を見ていた。
「それにしても、朝も水やりしてたのに、授業後もやってるんだな」
「あ、いや、昨日のは当番を代わっただけだから」
「だとしたら、◯◯は優しいな」
そう言って笑う澤村君の目元は、とても穏やかだった。
優しいのは澤村君の方だよ。
私なんか、そんな風に言われる資格なんてない。
だって、この美化委員の仕事だって、面接のアピールポイント稼ぎのために、形だけやっているに過ぎないのに。
私は少し意地になってしまった。
「メリットがなければやらないよ」
すると、澤村君は、私の言葉を軽く受け流すように、優しい声で続けた。
「メリットなんか考えているやつが、花と会話しながら水やりするか?」
「え?」
その言葉に、私は思わず彼の顔を見上げた。
彼は真っ直ぐに私の目を見て、ニヤリと笑う。
「なんだ、俺の方が◯◯のこと詳しいようだな」
「……っ!」
驚きと、図星を指された恥ずかしさ、そして彼の言葉が嬉しくてたまらない気持ちが入り混じって、私は何も返せなかった。
ただ、彼の優しい笑顔を見つめ返すことしかできなかった。
