ベッドが軋む音で目が覚めた。
いつの間にか本当に寝ていたようだ。
辺りはまだ暗いことから、そんなに時間が経っていないことが分かる。

それにしても体が重い。
まるで、何かに覆いかぶさられているような。
そして、なんだか下半身がスースーするような。


「んっ……」


意識がはっきりしてきて気が付いた。
侑が私のパジャマと下着を下ろして愛撫をしようとしていた。


「あ、起きたん？ちょっと拗ねとるだけやろ？いつもみたいに気持ち良おしたら許してくれるやんな？」


このパターンはマズイやつだ。
だからこそ今日は流されない。
流されたくない。


「触らないで。私、怒ってるって言ったんだけど」

「●●ちゃん……」


本気の力で抵抗した。
侑の肩を押してベッドから突き落とした。
落としたと言ってもそんなに高くないから尻もち程度。
さすがに怒っていても選手生命に関わる怪我を負わせることはなしない。


「口紅のこと怒っとるん？あんなん●●ちゃんに嫉妬してもらいたくて、わざと付けてもろてん」

「……」

「●●ちゃんがおんのに他に女作るわけあらへんやろ？」


わざとだろうが好意的だろうが関係ない。
私は度重なる試し行為に疲れたの。


「もうどうでもいい……」

「え……」

「別れるからどうでもいいの！」

「なんでそんなこと言うん？俺は●●ちゃんのことこんなに大好きやのに…」


どの口が言っているのか。
大好きだったら試すようなことをしてもいいの？
傷付けるようなことをしてもいいの？
違うでしょ？


「すぐに引っ越しは大変だろうから、1ヶ月位内に出ていって」


幸いにもアパートの契約者は私。
面倒くさいと思っていたけれど、こんなときに役に立つとは。

だけど、2人で借りるつもりで探した物件。
家賃のことを考えると私も引っ越しを視野に入れないといけないかもしれない。


「●●ちゃん……」


私の本気の気持ちが伝わったのか、侑はトボトボと部屋を出ていった。

これでよかったんだ。
これで……。