モテ過ぎも考え方によっては
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〜モテ過ぎも考え方によっては〜
同棲している部屋のリビング。
その真っ暗な部屋に煌々と光るテレビの明かりを見つめながら、私はソファに身を埋めて、帰りが遅い彼氏の侑を待っていた。
MSBYブラックジャッカルのセッターとして活躍している侑は、バレー選手なだけあって背が高く、持ち前のユーモア溢れるコミュニケーション能力のお陰で、一般人のファンだって多い。
そんな自慢な彼氏がモテないワケがない。
侑が同窓会に行こうものなら、ちゃんと私の元に帰ってきてくれるのか、心配で夜も眠れない。
すると、玄関の方から物音が聞こえてきた。
「たっだいま〜!」
乱暴に開かれた扉の向こうには、上機嫌な侑の姿があった。
ふわりと漂うのは、ありえないほど濃い酒の匂い。
普段は練習だとか試合だとかでお酒を控えているけれど、今日はハメをはずしたのだろう。
1人で帰ってこれたことが奇跡と言えるレベル。
「遅うなってごめんな」
ふらつきながらリビングに入ってきた侑の顔を見てホッとしたのも束の間。
次の瞬間、私の視線は彼のワイシャツの襟元に釘付けになった。
「なに、コレ……」
「んあ?」
思わず絞り出した声に、侑は間抜けな声を返す。
彼の白いシャツの襟元に、真っ赤な口紅の跡が付いていた。
満員電車で付けられたなんて言い訳は利かない。
だって、タクシーで行くと言っていたから。
それに、彼の背の高さを考えれば、この位置に口紅が付くということは、彼が誰かに向かって屈んだ証拠だ。
「あ、もしかしてこの口紅の跡?気ぃ付いてもうた?」
酔っているせいか、悪びれる様子もなくヘラヘラと笑う侑。
そんな派手な色の口紅に気が付かない方がおかしい。
私は感情的に怒鳴らないように、拳に力を込めて怒りを抑えた。
それなのに、侑は無邪気な子供のように、怒っている私の反応を面白がる。
「●●ちゃんが怒っとる〜!」
その挑発する発言に、私は我慢の限界を越えた。
「もう侑とは別れる!」
空気が一瞬で凍りついた。
侑の表情がカッと見開かれる。
「はぁ?」
ドスの利いた低い声。
先程までケラケラしていたのに逆切れ?
私にだって愛想尽きることはある。
先日は女性物の香水を漂わせて、その前は女の子とのツーショット写真を送りつけてきて、デートを臭わせる投稿もしていたっけ。
いつまでも甘えるなよ。
私は震える声で不満を吐き出した。
「いつも私のことを不安にさせて、もう疲れたの!浮気までするなんて」
「浮気ちゃうわ!」
「浮気じゃなければ、なんでこんなところに口紅が付くのよ!」
「そら言われへん」
別れの危機だと言うのに言えないの?
どれだけ私に舐めた態度を取れば気が済むのだろうか。
「もういい!」
「おい、待てや!」
私は侑の言葉を無視して、自室の扉を勢いよく閉めて引きこもった。
ムカつく……ムカつく……。
帰ってくるまで寝ずに待っていたのに。
私は枕に顔を埋めて、無理やり瞼を閉じた。
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