欲張りなキミに乾杯
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1時間授業をサボったおかげで、大分目の腫れも引いた。
「さて、チョコでも届けるか……」
もちろん侑ではなく、治君に。
だけど治君のクラスを知らない。
適当に探せばいいか。
1組から順番に教室を覗いていくと、運良く1発目で治君のクラスを引き当てた。
そんな治君は彼と同じ顔、同じ髪型の人物と話をしていた。
治君に扮した侑だ。
運が良いと思っていたのに、やっぱり運が悪い。
いや、当てつけに治君に渡すところを見せつけるなら丁度良かったのかもしれない。
タイミングをうかがっていると、侑の方が先ほどの休み時間に貰っていた本命チョコを治君に渡していた。
「ほらよ。俺いらんし」
なんで……?
あんなに喜んで貰っていたのに、なんで簡単に人にあげるの?
気持ちのこもったチョコが欲しかったんじゃないの?
色んな子をはべらかして嘲笑うためだったの?
「……っ」
思わず“最低”と言いそうになった唇を噛み締めて、言葉を押し殺した。
だって、私がまんまと侑に絆されて、勝手に好きになりかけて、勝手にショックを受けているだけなんだから。
惨めすぎる。
私はそのまま教室から離れた。
目頭が熱くなってきた。
涙、せっかく引いたのに。
また授業をサボらないといけなくなる。
来た道を引き返して屋上へと向かうと、
「待ちぃ、●●ちゃん!あれは誤解や」
治君……。
いや、あれは侑だ。
なんで追いかけてくるの。
誤解って何。
気にはなるけれど、こんな顔を見せる訳にはいかず、歩みは止めない。
だけど、私が向かっていたのは屋上の踊り場。
行き止まりが待ち構えている。
そこでようやく足を止めた。
侑に背を向けたまま、開かないと分かっている屋上への扉を見つめる。
「……」
「なんでさっき止まってくれへんかったの?」
「……」
「なあ」
止まらなかったせいか、はたまた無視したせいか、後ろからは侑の少し怒った声が聞こえてきた。
「授業始まるよ。私は自習だからいいけど、侑はそういう訳じゃないでしょ」
震える声を抑えながら気丈に振る舞う。
「そんなんええから、こっち向けや」
だけど、侑は素直に戻るはずもなく、私の肩を強く掴み、無理やり向かい合わせにさせられた。
いつも素直なのに、こう言うときは強引なんだから。
放っておいてほしいのに。
でなければバレちゃうから。
頬にへばりついた涙の跡が。
「泣いとるん?」
「泣いてないし……」
「いや、バレバレの嘘。思いっきし泣いとるやん」
「泣いてない……」
「俺のせい……やんな?」
「……」
「はぁー……」
私の頑固さに呆れたのか、ため息を吐く侑。
振り向いて気が付いたけれど、そんな侑の手には先ほど治君に渡そうとした袋が大事そうに握りしめられていた。
「その袋……」
思わず袋を指差すと、侑は忘れていたと言わんばかりの慌てようで弁明してきた。
「そう!誤解!このチョコ、サム宛!女の子が俺とサムを間違 ぉてん。その証拠にほら!」
そう言うと袋に貼り付いていた手紙の封筒を剥がして見せてきた。
確かにそこには“宮治君へ”と書かれていた。
「サム宛のを勝手に断るのも可哀想やと思うて、代わりに受け取ったんや。本当 にそれだけ」
「ふーん」
疑いの目を向けてしまう。
だって髪型を同じにして勘違いさせた侑も悪いと思うから。
いや、でも、本気で好きなら髪型が違っても見分けがつくのか。
私みたいに……。
ただ、チョコが治君宛の物だったと言うことは理解した。
だけど、私はまだはっきりと侑の気持ちを聞いた訳ではない。
「私に勘違いされたままだと何かマズイことでもあるの?」
ずるい聞き方なのは分かっている。
でも傷付きたくなくて、今はこんな言い方しかできない。
「●●ちゃん、前にチョコと気持ちどっちが欲しいのかって聞ぃたやん?」
「そうだね」
初めて侑と会ったとき、バレンタインのアピールをしていた彼にそう尋ねた。
「両方って答えたけど、違 ぉたわ」
「違うの?」
「“好きな人”からのチョコと気持ちやった」
「……それってつまり」
「●●ちゃんの手に持っとるソレ、チョコやろ?」
「……」
侑に渡す予定だった手作りチョコの入った袋を掴む手に力が入る。
「●●ちゃんからの本命チョコが欲しい。俺、●●ちゃんのことが好きや」
ねえ、侑。
侑こそ覚えている?
“両方”って答えたキミに私がなんて答えたか。
「ふふっ……。やっぱり侑は欲張りさんなんだね」
欲張りなキミには、私も少しくらい欲張りになったっていいよね。
侑の制服のネクタイをクイッと引っ張り、無理やり顔を近づけた。
「……っ」
少し雑に触れる唇。
「これが私の答え」
ーーFinーー
「さて、チョコでも届けるか……」
もちろん侑ではなく、治君に。
だけど治君のクラスを知らない。
適当に探せばいいか。
1組から順番に教室を覗いていくと、運良く1発目で治君のクラスを引き当てた。
そんな治君は彼と同じ顔、同じ髪型の人物と話をしていた。
治君に扮した侑だ。
運が良いと思っていたのに、やっぱり運が悪い。
いや、当てつけに治君に渡すところを見せつけるなら丁度良かったのかもしれない。
タイミングをうかがっていると、侑の方が先ほどの休み時間に貰っていた本命チョコを治君に渡していた。
「ほらよ。俺いらんし」
なんで……?
あんなに喜んで貰っていたのに、なんで簡単に人にあげるの?
気持ちのこもったチョコが欲しかったんじゃないの?
色んな子をはべらかして嘲笑うためだったの?
「……っ」
思わず“最低”と言いそうになった唇を噛み締めて、言葉を押し殺した。
だって、私がまんまと侑に絆されて、勝手に好きになりかけて、勝手にショックを受けているだけなんだから。
惨めすぎる。
私はそのまま教室から離れた。
目頭が熱くなってきた。
涙、せっかく引いたのに。
また授業をサボらないといけなくなる。
来た道を引き返して屋上へと向かうと、
「待ちぃ、●●ちゃん!あれは誤解や」
治君……。
いや、あれは侑だ。
なんで追いかけてくるの。
誤解って何。
気にはなるけれど、こんな顔を見せる訳にはいかず、歩みは止めない。
だけど、私が向かっていたのは屋上の踊り場。
行き止まりが待ち構えている。
そこでようやく足を止めた。
侑に背を向けたまま、開かないと分かっている屋上への扉を見つめる。
「……」
「なんでさっき止まってくれへんかったの?」
「……」
「なあ」
止まらなかったせいか、はたまた無視したせいか、後ろからは侑の少し怒った声が聞こえてきた。
「授業始まるよ。私は自習だからいいけど、侑はそういう訳じゃないでしょ」
震える声を抑えながら気丈に振る舞う。
「そんなんええから、こっち向けや」
だけど、侑は素直に戻るはずもなく、私の肩を強く掴み、無理やり向かい合わせにさせられた。
いつも素直なのに、こう言うときは強引なんだから。
放っておいてほしいのに。
でなければバレちゃうから。
頬にへばりついた涙の跡が。
「泣いとるん?」
「泣いてないし……」
「いや、バレバレの嘘。思いっきし泣いとるやん」
「泣いてない……」
「俺のせい……やんな?」
「……」
「はぁー……」
私の頑固さに呆れたのか、ため息を吐く侑。
振り向いて気が付いたけれど、そんな侑の手には先ほど治君に渡そうとした袋が大事そうに握りしめられていた。
「その袋……」
思わず袋を指差すと、侑は忘れていたと言わんばかりの慌てようで弁明してきた。
「そう!誤解!このチョコ、サム宛!女の子が俺とサムを
そう言うと袋に貼り付いていた手紙の封筒を剥がして見せてきた。
確かにそこには“宮治君へ”と書かれていた。
「サム宛のを勝手に断るのも可哀想やと思うて、代わりに受け取ったんや。
「ふーん」
疑いの目を向けてしまう。
だって髪型を同じにして勘違いさせた侑も悪いと思うから。
いや、でも、本気で好きなら髪型が違っても見分けがつくのか。
私みたいに……。
ただ、チョコが治君宛の物だったと言うことは理解した。
だけど、私はまだはっきりと侑の気持ちを聞いた訳ではない。
「私に勘違いされたままだと何かマズイことでもあるの?」
ずるい聞き方なのは分かっている。
でも傷付きたくなくて、今はこんな言い方しかできない。
「●●ちゃん、前にチョコと気持ちどっちが欲しいのかって聞ぃたやん?」
「そうだね」
初めて侑と会ったとき、バレンタインのアピールをしていた彼にそう尋ねた。
「両方って答えたけど、
「違うの?」
「“好きな人”からのチョコと気持ちやった」
「……それってつまり」
「●●ちゃんの手に持っとるソレ、チョコやろ?」
「……」
侑に渡す予定だった手作りチョコの入った袋を掴む手に力が入る。
「●●ちゃんからの本命チョコが欲しい。俺、●●ちゃんのことが好きや」
ねえ、侑。
侑こそ覚えている?
“両方”って答えたキミに私がなんて答えたか。
「ふふっ……。やっぱり侑は欲張りさんなんだね」
欲張りなキミには、私も少しくらい欲張りになったっていいよね。
侑の制服のネクタイをクイッと引っ張り、無理やり顔を近づけた。
「……っ」
少し雑に触れる唇。
「これが私の答え」
ーーFinーー