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ある日の昼休み。
教室は生徒たちの笑い声と弁当の包みを広げる音で賑わっていた。
私はそんな喧騒の中、友達のサツキと1冊のファッション雑誌を囲み、見入っていた。
「見て、サツキ!このミントグリーンのブラウス、良くない?」
「あ、本当だ!可愛い!ねぇ、こっちの淡いピンクのワンピースも捨てがたくない?」
ページを捲るたび、春らしい色彩の服が目に飛び込んでくる。
次はどの服を買おうか。
そんな他愛もない想像に胸を躍らせ、私たちは賑やかな女子トークに花を咲かせていた。
すると突然、横から伸びてきた細長い指が、雑誌の片隅に写っているコーディネートを指した。
「俺ならこれだな。断然ネイビーだろ」
反射的に顔を上げると、二口が面白そうにこちらを覗き込んでいた。
「ちょ、二口!アンタの好みなんて聞いてないし。勝手に話に入ってこないでよ!」
私は雑誌を抱え込むようにして、彼を追い払う仕草をした。
だけど二口は、私の拒絶など気にせず、机の端に腰を下ろして不敵に口角を上げる。
「男の意見も取り入れた方がいいと思ってな」
「余計なお世話!それに、男に媚びるためじゃなくて、自分のために着るんですー!」
声を張り上げて言い返すと、二口は肩をすくめ、形ばかりの謝罪で受け流してきた。
「はいはい、そりゃ失礼しました」
数日前、あの重たい段ボールを運んでくれたときは、ほんの一瞬だけ「意外といいところがあるんだな」なんて感心してしまったけれど。
……前言撤回。
私が馬鹿だった。
やっぱりこの男は、私のペースを乱すためだけに存在している。
「……何だよ、その不服そうな顔」
二口はそう言いながら、私の反応を楽しむように目を細めた。
「サツキと2人で楽しく見てたのに、お邪魔虫が入ってきたら誰だってこういう顔になるわよ!ねぇ、サツキもそう思うよね?」
同意を求めて隣を向くと、サツキはニヤニヤしながら私たちを交互に見つめていた。
「えー?私は二口君のセンス、結構いいと思うけどな。……だって、それ、●●に似合うと思ったから指したんでしょ?」
「ちょ、サツキ!?」
裏切り者に抗議する間もなく、二口は品定めするようにじっと私の顔を覗き込んできた。
至近距離で見つめられると、彼の整った顔立ちが嫌でも目に入って、心臓の鼓動が少しだけ早まるのが分かる。
「……まあ、性格が煩い分、こういう落ち着いた色の方がマシに見えるんじゃねーの?」
「なんですってー!」
私が思わず雑誌の角で彼を小突こうとすると、二口はひょいと身をかわして立ち上がった。
「おっと、危ねえ。そんじゃ、俺はメシの続きでも食ってくるわ。じゃあな」
ヒラヒラと手を振って去っていくその後ろ姿を見送りながら、私は大きくため息を吐く。
結局、彼が去った後の机の上には、さっきまであんなにも可愛く見えていた春色の服よりも、彼が指差した落ち着いたネイビーの服の方が、妙に強く印象に残ってしまっていた。
「……ねぇ、やっぱりこれにするの?」
サツキの茶化すような声が聞こえる。
「……買わないわよ。絶対!」
私はそう宣言して、わざとらしくページを捲った。
だけど、自分の頬が少しだけ熱くなっていることに気が付いていた。
それは、言い合いに熱が入ったせいなのか、はたまた二口が私に似合う服を選んでくれたからなのか。
その答えを出すには、まだしばらく時間がかかりそうだった。
教室は生徒たちの笑い声と弁当の包みを広げる音で賑わっていた。
私はそんな喧騒の中、友達のサツキと1冊のファッション雑誌を囲み、見入っていた。
「見て、サツキ!このミントグリーンのブラウス、良くない?」
「あ、本当だ!可愛い!ねぇ、こっちの淡いピンクのワンピースも捨てがたくない?」
ページを捲るたび、春らしい色彩の服が目に飛び込んでくる。
次はどの服を買おうか。
そんな他愛もない想像に胸を躍らせ、私たちは賑やかな女子トークに花を咲かせていた。
すると突然、横から伸びてきた細長い指が、雑誌の片隅に写っているコーディネートを指した。
「俺ならこれだな。断然ネイビーだろ」
反射的に顔を上げると、二口が面白そうにこちらを覗き込んでいた。
「ちょ、二口!アンタの好みなんて聞いてないし。勝手に話に入ってこないでよ!」
私は雑誌を抱え込むようにして、彼を追い払う仕草をした。
だけど二口は、私の拒絶など気にせず、机の端に腰を下ろして不敵に口角を上げる。
「男の意見も取り入れた方がいいと思ってな」
「余計なお世話!それに、男に媚びるためじゃなくて、自分のために着るんですー!」
声を張り上げて言い返すと、二口は肩をすくめ、形ばかりの謝罪で受け流してきた。
「はいはい、そりゃ失礼しました」
数日前、あの重たい段ボールを運んでくれたときは、ほんの一瞬だけ「意外といいところがあるんだな」なんて感心してしまったけれど。
……前言撤回。
私が馬鹿だった。
やっぱりこの男は、私のペースを乱すためだけに存在している。
「……何だよ、その不服そうな顔」
二口はそう言いながら、私の反応を楽しむように目を細めた。
「サツキと2人で楽しく見てたのに、お邪魔虫が入ってきたら誰だってこういう顔になるわよ!ねぇ、サツキもそう思うよね?」
同意を求めて隣を向くと、サツキはニヤニヤしながら私たちを交互に見つめていた。
「えー?私は二口君のセンス、結構いいと思うけどな。……だって、それ、●●に似合うと思ったから指したんでしょ?」
「ちょ、サツキ!?」
裏切り者に抗議する間もなく、二口は品定めするようにじっと私の顔を覗き込んできた。
至近距離で見つめられると、彼の整った顔立ちが嫌でも目に入って、心臓の鼓動が少しだけ早まるのが分かる。
「……まあ、性格が煩い分、こういう落ち着いた色の方がマシに見えるんじゃねーの?」
「なんですってー!」
私が思わず雑誌の角で彼を小突こうとすると、二口はひょいと身をかわして立ち上がった。
「おっと、危ねえ。そんじゃ、俺はメシの続きでも食ってくるわ。じゃあな」
ヒラヒラと手を振って去っていくその後ろ姿を見送りながら、私は大きくため息を吐く。
結局、彼が去った後の机の上には、さっきまであんなにも可愛く見えていた春色の服よりも、彼が指差した落ち着いたネイビーの服の方が、妙に強く印象に残ってしまっていた。
「……ねぇ、やっぱりこれにするの?」
サツキの茶化すような声が聞こえる。
「……買わないわよ。絶対!」
私はそう宣言して、わざとらしくページを捲った。
だけど、自分の頬が少しだけ熱くなっていることに気が付いていた。
それは、言い合いに熱が入ったせいなのか、はたまた二口が私に似合う服を選んでくれたからなのか。
その答えを出すには、まだしばらく時間がかかりそうだった。
