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「……終わったぁ!」
放課後の廊下。
私は誰もいない教室に向かって、小さくガッツポーズを作った。
数日前、あの実習室で二口に泣きついた自作ロボット。
彼の手によって生まれ変わったそれは、今日、無事に先生のチェックを通り、合格点とともに提出されたのだ。
肩の荷が下りるとはまさにこのこと。
意気揚々と軽やかな足取りで、鞄を取りに教室へ戻ろうと職員室前を通りかかった、その時。
「おっ、◯◯じゃないか!随分とご機嫌だなあ!」
不意に響いた野太い声に足を止めると、そこには昨年担任だった建築科担当の小野田先生が、タオルを首に巻いてニカッと笑っていた。
「小野田先生……?」
「ここで会ったのも何かの縁だ。ちょっくらこの荷物、実習室に運んどいてくれ」
「えっ!先生、ちょっと待っ……木工実習室って、ここから一番遠い別棟の……」
「じゃあ、よろしくな!」
反論する隙さえ与えられない。
先生は有無を言わさず、重い段ボールを私の目の前に積み上げると、嵐のように会議室の方へと去っていった。
廊下に残されたのは、私と、腰ほどの高さまで積み上がっている段ボールの山が3つ。
先程までの陽気な気分が、一気に沈むのが分かった。
「……重たっ!一体、何が入ってるのよ。木材か何か?それにしても重すぎる……!」
試しに一番上の箱を持ち上げたけれど、腕がプルプルと震えた。
あんな遠い実習室まで、これを抱えて何往復もするなんて、考えただけで気が遠くなる。
「3往復するか……。いや、でも1回台車を借りに行った方が効率はいい?台車、どこにあったっけ……」
途方に暮れ、廊下の隅で固まっていた、その時だった。
背後から伸びてきた大きな手が、残りの段ボール2つをひょいと掠め取っていく。
「どこまで運ぶんだ、これ」
耳元に降ってきたのは、聞き慣れた低い声。
いつの間にか現れた二口が、軽々と段ボールを担ぎ上げていた。
「二口……。木工実習室までなんだけど……」
「あー……。あそこの別棟か。遠いな」
彼は面倒そうに息を吐きながらも、足はもう歩き出している。
「ありがとう……。たまには気が利くじゃん」
思わず本音が漏れる。
すると二口は、廊下を歩きながら鼻で笑った。
「たまに、は余計だ。手伝うのやめるぞ」
「あー!ごめんごめん!感謝しています、二口様!」
慌てて持っている箱を抱え直し、彼の後を追う。
校舎の端にある実習室への道のりは、普段ならため息が出るほど長い。
だけど、前を行く彼の広い背中と、重い荷物を感じさせない逞しい腕。
時折振り返って私の歩調を気にする、ぶっきらぼうな優しさが、不思議と胸を熱くさせた。
「……意外と、いいとこあるんだよね」
小さく呟いた言葉は、部活動に励む生徒たちの喧騒に消えていったけれど、この気持ちは消えないだろう。
放課後の廊下。
私は誰もいない教室に向かって、小さくガッツポーズを作った。
数日前、あの実習室で二口に泣きついた自作ロボット。
彼の手によって生まれ変わったそれは、今日、無事に先生のチェックを通り、合格点とともに提出されたのだ。
肩の荷が下りるとはまさにこのこと。
意気揚々と軽やかな足取りで、鞄を取りに教室へ戻ろうと職員室前を通りかかった、その時。
「おっ、◯◯じゃないか!随分とご機嫌だなあ!」
不意に響いた野太い声に足を止めると、そこには昨年担任だった建築科担当の小野田先生が、タオルを首に巻いてニカッと笑っていた。
「小野田先生……?」
「ここで会ったのも何かの縁だ。ちょっくらこの荷物、実習室に運んどいてくれ」
「えっ!先生、ちょっと待っ……木工実習室って、ここから一番遠い別棟の……」
「じゃあ、よろしくな!」
反論する隙さえ与えられない。
先生は有無を言わさず、重い段ボールを私の目の前に積み上げると、嵐のように会議室の方へと去っていった。
廊下に残されたのは、私と、腰ほどの高さまで積み上がっている段ボールの山が3つ。
先程までの陽気な気分が、一気に沈むのが分かった。
「……重たっ!一体、何が入ってるのよ。木材か何か?それにしても重すぎる……!」
試しに一番上の箱を持ち上げたけれど、腕がプルプルと震えた。
あんな遠い実習室まで、これを抱えて何往復もするなんて、考えただけで気が遠くなる。
「3往復するか……。いや、でも1回台車を借りに行った方が効率はいい?台車、どこにあったっけ……」
途方に暮れ、廊下の隅で固まっていた、その時だった。
背後から伸びてきた大きな手が、残りの段ボール2つをひょいと掠め取っていく。
「どこまで運ぶんだ、これ」
耳元に降ってきたのは、聞き慣れた低い声。
いつの間にか現れた二口が、軽々と段ボールを担ぎ上げていた。
「二口……。木工実習室までなんだけど……」
「あー……。あそこの別棟か。遠いな」
彼は面倒そうに息を吐きながらも、足はもう歩き出している。
「ありがとう……。たまには気が利くじゃん」
思わず本音が漏れる。
すると二口は、廊下を歩きながら鼻で笑った。
「たまに、は余計だ。手伝うのやめるぞ」
「あー!ごめんごめん!感謝しています、二口様!」
慌てて持っている箱を抱え直し、彼の後を追う。
校舎の端にある実習室への道のりは、普段ならため息が出るほど長い。
だけど、前を行く彼の広い背中と、重い荷物を感じさせない逞しい腕。
時折振り返って私の歩調を気にする、ぶっきらぼうな優しさが、不思議と胸を熱くさせた。
「……意外と、いいとこあるんだよね」
小さく呟いた言葉は、部活動に励む生徒たちの喧騒に消えていったけれど、この気持ちは消えないだろう。
