プランC
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〜プランC〜
朝の教室は騒々しさに包まれていた。
そんな喧騒を切り裂くように、ガラリと音を立てて教室のドアが開く。
「おーい、席に着けー。チャイム鳴ってんだろ」
作業着の袖をまくり上げた担任が、気怠げに入ってきた。
先生は、騒ぐ生徒たちを見渡し、短く息を吐くと、脇に抱えていたプリントの束で机を叩いた。
「進路希望調査の紙、配るぞー」
進路希望調査……。
その単語を耳にするや否や、教室は先ほどとは別の意味で騒がしくなる。
「げ、マジかよ。まだ考えてねーって!」
「まだ2年なのに、早すぎだって先生!」
クラスメイトたちが口々に不満を漏らす中、私の机の上にもプリントが置かれた。
「はい、静かにー!これから変わる可能性だってあるだろうが、今のお前たちの進路を把握しておきたい。だから、今日中に出せよ」
先生は淡々と残りの連絡事項を告げる。
そのまま、用件を終えると、足早に教室を後にした。
……。
…………。
休み時間。
騒がしくなった教室で、私は1人、朝のホームルームで配られたプリントとにらめっこを続けていた。
「進路、どうしよう……。進学するにしても、学んだことを生かせる工学部か、それとも無難に経済学部?」
ブツブツと独り言を呟き、ペン先を紙の上で彷徨わせる。
その時、頭上にスッと大きな影が差した。
「なんだ、◯◯は進学すんのか?ちなみに、俺は就職」
前の席の二口堅治だ。
彼は椅子の背もたれを前にして、ガニ股でドカッと座り、私の手元を覗き込んできた。
「……二口には聞いてないし。てか、見ないでよ」
「今独り言で盛大に言ってただろ。そんなに迷ってんなら、いっそ◯◯も就職しろよ」
「何それ、自分勝手すぎ」
顔を向けると、彼は意地の悪い笑みを浮かべていた。
二口はいつもこうだ。
私がAかBかで真剣に迷っていると、決まって全く想定外のCを提案してくる。
先日もそうだ。
自販機の前でお茶か紅茶かで悩んでいた私を追い越して、彼は「迷いすぎ」と笑いながら勝手に炭酸飲料のボタンを押してきた。
すぐに決められない私も私だけど、二口は強引すぎる。
「◯◯は慎重すぎんだよ。もっと直感でいいんだって」
「でも、石橋を叩いて渡るってことわざもあるし……。慎重になるのは当然でしょ」
言い返すと、二口は鼻で笑ってきた。
「だからって、叩きすぎて橋が割れたら本末転倒だろ」
「……っ」
核心を突かれた気がして、言葉に詰まる。
彼はそれを見て満足したのか、ヒラヒラと手を振りながら立ち上がった。
「ま、最後に決めるのは◯◯だし。俺は退散するよ。せいぜい穴が開くまで紙を見つめてろよ」
言いたいことだけを残して、彼は騒がしい男子の輪の中へと入っていった。
二口に言われなくても、自分で決めるし……。
彼の背中を見送った後、私は再びプリントに視線を落とした。
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