n回目
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帰宅後も、私の頭の中はショッピングモールで出会った彼女のことが離れなかった。
ただのクラスメイトだったのか。
あの人みたいな綺麗な人と並んでいた過去があるのか。
堅治は自分から過去の恋愛を口にするタイプではない。
だから、社会人になった彼のことしか、私には分からない。
堅治って、自分から好きだって言うことあるのかな……。
夕食を作り、お皿を洗い、ようやく一息ついたリビング。
テレビの音が遠くに聞こえる静寂の中で、私は我慢できず、尋ねてしまった。
「ねえ、堅治」
「なんだよ」
ソファで寛ぐ堅治は、スマホから目を離さず、気の抜けた返事を返した。
「……堅治って、今まで何回告白したことある?」
我ながら、少し意地悪な質問だとは思った。
過去の恋愛なんて、知らない方が幸せなこともある。
だけど、彼の口からどんな数字が出てくるのか、少しだけ覗いてみたくなったのだ。
「はあ?なんだよ、急に」
「いいから!」
「チッ……。えーっと……」
堅治はスマホを置くと、天井を見上げて記憶を遡り始めた。
驚いたことに、彼は冗談めかすこともなく、真剣な顔で指を折り始めたのだ。
ひとつ、ふたつ、みっつ……。
え、そんなにいるんだ……。
予想外に指が折られていく光景に、私の胸が少しだけチクリと痛む。
聞かなきゃよかったかな、なんて後悔が頭をよぎったその時だった。
堅治は不意に関心なさげな顔に戻り、ケロッとした様子でこちらを振り向いた。
「……覚えてないわ」
「はぁ?そんなことある?」
さっきまであんなに真剣に数えていたクセに。
はぐらかされたような気がして、私は少し唇を尖らせる。
すると、堅治は少しだけ表情を和らげ、私の目を真っ直ぐに見つめてこう言った。
「あ、でも、告白した回数は覚えてねぇけど……」
そこで言葉を切ると、彼は少し照れくさそうに笑った。
「プロポーズした回数は、人生で一度だけだぞ。●●」
不意打ちだった。
心臓が跳ねて、さっきまでのモヤモヤが一気に霧散していくのが分かる。
「……ズルい」
小さく呟いて顔を背けたけれど、緩んでしまう口元は隠せそうになかった。
堅治は視線をテレビに戻したけれど、その手は私の肩を抱き寄せ、そのまま自分の胸元へと引き寄せた。
彼の体からは、私と同じ柔軟剤の香りと、彼自身の体温が混ざり合った匂いがする。
「……堅治。もう1回聞きたいな」
「は?何をだよ」
「プロポーズの言葉」
私が顔を見上げると、堅治はこれ以上ないほど露骨に嫌そうな顔をしてみせた。
「俺、さっき人生で一度だけって言ったところだよな?」
「いいから。再現はノーカン」
「はあ……。仕方ねぇな」
毒づきながらも、彼は私の指を1本ずつ絡めるようにして、その大きな手で私の手を包み込んだ。
節の太い、力強い手。
「俺が一生側にいて欲しいと思ったのは、後にも先にもお前だけだ。●●……結婚してくれ。……これで満足か?」
そう言って彼は、観念したように私の額に自分の額をこつんとぶつけた。
鼻先が触れ合うほどの至近距離で、彼の瞳の中に、少しだけ赤らんだ自分の顔が映っている。
「……うん。大満足」
私が微笑むと、堅治は、
「チッ、調子乗んなよ」
と舌打ちをした。
それでも、次に重なった彼の唇は、どんな言葉よりも私が彼にとっての特別であることを証明していた。
過去に何回、誰に告白したかなんて、もうどうでもいい。
彼が選んだ、生涯添い遂げる相手が自分であるという事実だけで、充分だった。
ーーFinーー
ただのクラスメイトだったのか。
あの人みたいな綺麗な人と並んでいた過去があるのか。
堅治は自分から過去の恋愛を口にするタイプではない。
だから、社会人になった彼のことしか、私には分からない。
堅治って、自分から好きだって言うことあるのかな……。
夕食を作り、お皿を洗い、ようやく一息ついたリビング。
テレビの音が遠くに聞こえる静寂の中で、私は我慢できず、尋ねてしまった。
「ねえ、堅治」
「なんだよ」
ソファで寛ぐ堅治は、スマホから目を離さず、気の抜けた返事を返した。
「……堅治って、今まで何回告白したことある?」
我ながら、少し意地悪な質問だとは思った。
過去の恋愛なんて、知らない方が幸せなこともある。
だけど、彼の口からどんな数字が出てくるのか、少しだけ覗いてみたくなったのだ。
「はあ?なんだよ、急に」
「いいから!」
「チッ……。えーっと……」
堅治はスマホを置くと、天井を見上げて記憶を遡り始めた。
驚いたことに、彼は冗談めかすこともなく、真剣な顔で指を折り始めたのだ。
ひとつ、ふたつ、みっつ……。
え、そんなにいるんだ……。
予想外に指が折られていく光景に、私の胸が少しだけチクリと痛む。
聞かなきゃよかったかな、なんて後悔が頭をよぎったその時だった。
堅治は不意に関心なさげな顔に戻り、ケロッとした様子でこちらを振り向いた。
「……覚えてないわ」
「はぁ?そんなことある?」
さっきまであんなに真剣に数えていたクセに。
はぐらかされたような気がして、私は少し唇を尖らせる。
すると、堅治は少しだけ表情を和らげ、私の目を真っ直ぐに見つめてこう言った。
「あ、でも、告白した回数は覚えてねぇけど……」
そこで言葉を切ると、彼は少し照れくさそうに笑った。
「プロポーズした回数は、人生で一度だけだぞ。●●」
不意打ちだった。
心臓が跳ねて、さっきまでのモヤモヤが一気に霧散していくのが分かる。
「……ズルい」
小さく呟いて顔を背けたけれど、緩んでしまう口元は隠せそうになかった。
堅治は視線をテレビに戻したけれど、その手は私の肩を抱き寄せ、そのまま自分の胸元へと引き寄せた。
彼の体からは、私と同じ柔軟剤の香りと、彼自身の体温が混ざり合った匂いがする。
「……堅治。もう1回聞きたいな」
「は?何をだよ」
「プロポーズの言葉」
私が顔を見上げると、堅治はこれ以上ないほど露骨に嫌そうな顔をしてみせた。
「俺、さっき人生で一度だけって言ったところだよな?」
「いいから。再現はノーカン」
「はあ……。仕方ねぇな」
毒づきながらも、彼は私の指を1本ずつ絡めるようにして、その大きな手で私の手を包み込んだ。
節の太い、力強い手。
「俺が一生側にいて欲しいと思ったのは、後にも先にもお前だけだ。●●……結婚してくれ。……これで満足か?」
そう言って彼は、観念したように私の額に自分の額をこつんとぶつけた。
鼻先が触れ合うほどの至近距離で、彼の瞳の中に、少しだけ赤らんだ自分の顔が映っている。
「……うん。大満足」
私が微笑むと、堅治は、
「チッ、調子乗んなよ」
と舌打ちをした。
それでも、次に重なった彼の唇は、どんな言葉よりも私が彼にとっての特別であることを証明していた。
過去に何回、誰に告白したかなんて、もうどうでもいい。
彼が選んだ、生涯添い遂げる相手が自分であるという事実だけで、充分だった。
ーーFinーー
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