物足りないよ
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試合は2-0でストレート負けした。
どうやら、相手は強豪と呼ばれていたらしい。
だけど、本気で勝ちに行っていた彼らにとっては、そんなことどうでもよかったのかもしれない。
静まり返った体育館の空気が重くのしかかる。
こんな空気の中、差し入れを持っていてもいいものか悩んだけれど、せっかく店長が作ってくれたのだ。
私は決意を固め、バスケットを抱えて彼らの元へ向かった。
「お、お疲れ様です……」
おずおずと声を掛けると、貫至君が一番初めに気付いてくれた。
「あ、お姉さん!」
彼は仔犬のように私の元へ駆け寄ってくる。
それに続いて、他のメンバーも集まってきた。
「誰……?」
「お前知ってる……?」
「さあ?」
私のことがピンときていない子たちはヒソヒソ声で話す。
無理もない。
お店で制服姿の私が、私服姿で、しかもこんなところに来るとは思わないから。
そんな子たちのために、貫至君は元気よく自己紹介をしてくれた。
「彼女は、あの古民家カフェのお姉さんっす!」
そう言うと、他の子たちも「ああ!」と納得の声を上げた。
その様子にホッとした。
「それで、今日はどうしたんすか?」
「えっと、二口君と青根君に誘ってもらって……」
辺りを見回すも肝心の2人は見当たらない。
「あー、先輩たちなら、今監督に呼ばれていて、もうすぐ戻ってくると思いますけど……あ、ほら!」
貫至君が指差した先には、慌てた様子でこちらに向かってくる二口君がいた。
その後ろを、青根君がゆっくりと付いて歩いている。
「ちょっ、お前ら!なに抜け駆けしてんだよ!」
「抜け駆けじゃないっすよー!ちょっと話してただけで!」
「それが抜け駆けなんだよ!」
試合中も思ったけれど、あの上の空だった二口君と同一人物に見えなくて、私は思わず笑ってしまった。
「ふふふ、仲が良いんだね」
そう言うと、二口君は顔を赤くして、そっぽを向いた。
何か気に障ることを言ってしまっただろうか。
不思議に思っていると、貫至君がバスケットを指差しながら聞いてきた。
「ところで、お姉さん、そのカゴなんすか?」
「あー、これね、差し入れ。店長特製のサンドイッチだよ」
蓋を開けると、ツナや卵、ハム、トマト、レタスなど、たっぷりの具材が挟まったボリューム満点のサンドイッチが顔を出した。
「うわー!美味そう!」
「みんなで食べてね」
みんなは次々と手を伸ばし、サンドイッチを取っていった。
「旨っ!」
「やばっ!」
「俺、もう1個もーらいっ!」
「あ!ズルいぞ!」
美味しそうにサンドイッチを頬張る様子を見て、私も嬉しくなった。
だけど、二口君だけはサンドイッチを見つめたまま、一向に食べようとしない。
「苦手な具材でも入ってた?」
そう尋ねると、彼はハッとしたように顔を上げた。
「あ、いや……、そんなことない……っす」
そう言って、パクパクとサンドイッチを口に運び始めた。
「ふふ、慌てなくてもいいのに。……あ、マヨネーズ付いてるよ」
私は鞄からポケットティッシュを取り出すと、何の躊躇もなく彼の口元へ伸ばした。
彼は一瞬、きょとんとした表情を浮かべた。
「ちょっ!何するんすか!」
彼は途端に顔を真っ赤にして、少しだけ身を引いた。
「あ、ごめん。嫌だったよね?」
しまった、と後悔が押し寄せる。
たまにお店に遊びに来る店長のお孫さんにするように、ごく自然な動作で彼の口元を拭いてしまった。
「嫌とかじゃないけど……。恥ずかしいって言うか……」
そう言う二口君の顔は耳までほんのりピンク色に染まっている。
その様子が、なんだか少しだけ、可愛らしく見えた。
「……この後って何か予定あるんすか?」
二口君が照れを隠すように、そっと視線を逸らして尋ねてきた。
「バイト先にバスケット返すくらい……かな?」
「あの、それじゃあ……すぐ着替えるんで、帰り送って行ってもいいですか?」
彼の唐突な申し出に、私は驚いて目を丸くした。
「え……?あ、うん。いいけど」
「よかったー!じゃあ、後で。体育館前で待っててください」
彼はそう言うと、部員たちの輪へ入っていった。
どうやら、相手は強豪と呼ばれていたらしい。
だけど、本気で勝ちに行っていた彼らにとっては、そんなことどうでもよかったのかもしれない。
静まり返った体育館の空気が重くのしかかる。
こんな空気の中、差し入れを持っていてもいいものか悩んだけれど、せっかく店長が作ってくれたのだ。
私は決意を固め、バスケットを抱えて彼らの元へ向かった。
「お、お疲れ様です……」
おずおずと声を掛けると、貫至君が一番初めに気付いてくれた。
「あ、お姉さん!」
彼は仔犬のように私の元へ駆け寄ってくる。
それに続いて、他のメンバーも集まってきた。
「誰……?」
「お前知ってる……?」
「さあ?」
私のことがピンときていない子たちはヒソヒソ声で話す。
無理もない。
お店で制服姿の私が、私服姿で、しかもこんなところに来るとは思わないから。
そんな子たちのために、貫至君は元気よく自己紹介をしてくれた。
「彼女は、あの古民家カフェのお姉さんっす!」
そう言うと、他の子たちも「ああ!」と納得の声を上げた。
その様子にホッとした。
「それで、今日はどうしたんすか?」
「えっと、二口君と青根君に誘ってもらって……」
辺りを見回すも肝心の2人は見当たらない。
「あー、先輩たちなら、今監督に呼ばれていて、もうすぐ戻ってくると思いますけど……あ、ほら!」
貫至君が指差した先には、慌てた様子でこちらに向かってくる二口君がいた。
その後ろを、青根君がゆっくりと付いて歩いている。
「ちょっ、お前ら!なに抜け駆けしてんだよ!」
「抜け駆けじゃないっすよー!ちょっと話してただけで!」
「それが抜け駆けなんだよ!」
試合中も思ったけれど、あの上の空だった二口君と同一人物に見えなくて、私は思わず笑ってしまった。
「ふふふ、仲が良いんだね」
そう言うと、二口君は顔を赤くして、そっぽを向いた。
何か気に障ることを言ってしまっただろうか。
不思議に思っていると、貫至君がバスケットを指差しながら聞いてきた。
「ところで、お姉さん、そのカゴなんすか?」
「あー、これね、差し入れ。店長特製のサンドイッチだよ」
蓋を開けると、ツナや卵、ハム、トマト、レタスなど、たっぷりの具材が挟まったボリューム満点のサンドイッチが顔を出した。
「うわー!美味そう!」
「みんなで食べてね」
みんなは次々と手を伸ばし、サンドイッチを取っていった。
「旨っ!」
「やばっ!」
「俺、もう1個もーらいっ!」
「あ!ズルいぞ!」
美味しそうにサンドイッチを頬張る様子を見て、私も嬉しくなった。
だけど、二口君だけはサンドイッチを見つめたまま、一向に食べようとしない。
「苦手な具材でも入ってた?」
そう尋ねると、彼はハッとしたように顔を上げた。
「あ、いや……、そんなことない……っす」
そう言って、パクパクとサンドイッチを口に運び始めた。
「ふふ、慌てなくてもいいのに。……あ、マヨネーズ付いてるよ」
私は鞄からポケットティッシュを取り出すと、何の躊躇もなく彼の口元へ伸ばした。
彼は一瞬、きょとんとした表情を浮かべた。
「ちょっ!何するんすか!」
彼は途端に顔を真っ赤にして、少しだけ身を引いた。
「あ、ごめん。嫌だったよね?」
しまった、と後悔が押し寄せる。
たまにお店に遊びに来る店長のお孫さんにするように、ごく自然な動作で彼の口元を拭いてしまった。
「嫌とかじゃないけど……。恥ずかしいって言うか……」
そう言う二口君の顔は耳までほんのりピンク色に染まっている。
その様子が、なんだか少しだけ、可愛らしく見えた。
「……この後って何か予定あるんすか?」
二口君が照れを隠すように、そっと視線を逸らして尋ねてきた。
「バイト先にバスケット返すくらい……かな?」
「あの、それじゃあ……すぐ着替えるんで、帰り送って行ってもいいですか?」
彼の唐突な申し出に、私は驚いて目を丸くした。
「え……?あ、うん。いいけど」
「よかったー!じゃあ、後で。体育館前で待っててください」
彼はそう言うと、部員たちの輪へ入っていった。
