きっかけは突然に
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堅治君といつも会っていた夕方は、どうやら日勤終わりだったらしく、最近では夜勤明けもコンビニに来てくれるようになった。
「●●さん」
「あ、堅治君!夜勤明け?お疲れ様」
「うん、もう帰って寝るだけ」
軽い会話だってするようになった。
「これ、お願いします」
「はーい、220円ね」
手には決まってエナジードリンク。
避妊具はあれから一度もレジに持ってきていない。
だって、失恋したことも彼女がいたことも嘘だってバレちゃったからね。
それに、あれだけ残っていれば当分買わずに済むはず。
ちなみに、家にはあれからお邪魔していないから、使っているのかどうか分からないけれど、減っていないといいな。
ーーーー
ある夕方バイトの日。
今日は堅治君来るかな。
噂をしたらなんとやらって言うし、前もそうだったから。
そんなことを思いながら店内の掃除をしていると、ほら自動ドアが開いた。
「いらっしゃいませ〜……ってマサト」
元カレのマサト。
まさか噂もしていないのに会いたくない人物が来るとは。
「チッ、●●のバイト先ってここのコンビニだったのか」
教えたことあるんだけど。
マサトが忘れたか聞き逃しただけじゃない。
嫌だけど仕事だから、私は掃除をしていた手を止めて、レジの方へと回った。
遠回しに待ってるから早く商品を持って来い、と。
それなのに、いつまで経っても商品を見に行く素振りを見せずにレジの方へと向かってきた。
「呑気にバイトなんかしてよ……」
また始まった。
付き合っているときにも言われた八つ当たり。
この口振り、おそらくマサトはまだ内定を貰えていないのだろう。
うんざりだ。
「買わないならお帰りください」
「客に向かってなんだよ、その言いようは!距離を取ったら反省するかと思いきや。まだ時間が必要なようだな」
「はあ?」
反省?私が?冗談じゃない。
何を反省しろと言うのか。
あんなにも献身的に寄り添ったのに。
仮にも好きだった人。
これ以上アナタを嫌いにさせないでよ。
悔しくて、悲しくて涙がこぼれそうになる。
唇を噛み締めて堪えていると、コンビニの自動ドアが開いた。
「●●さん……あれ、お取り込み中?」
「堅治君……」
さっきまでは会いたかったのに、こんなところを見られるなら会いたくなかった。
「あ?何だコイツ。自分はさっさと内定もらったからって、もう他の男作ってるのか」
「違っ……」
堅治君に突っかかってきそうなマサトを制そうと声を出そうとしたら、
「俺の彼女に絡まないでくれない?」
「あ゛あん?」
彼女……?
違う、これは私を庇うための嘘。
なのに、なんでドキドキするの。
「アンタが例の内定貰えず●●さんに八つ当たりしたあげく、振ったって言う最低彼氏だろ?……いや、元カレか」
「コイツっ」
私がポロッとこぼした愚痴を覚えていたなんて。
最低彼氏とまでは言っていないけど。
「大方、身の丈にあってないところばかり受けてんだろ」
「このクソガキが!」
「そのクソガキだって就職できたのに、お兄さんは何をしているんですかね?」
最高に悪い顔をしてマサキを見下す堅治君。
マサトだって背は高い方なのに、それを上回る背の高さ。
「くっ……!もうこんなコンビニ来ねぇから!」
マサトは捨て台詞を吐いて、ドスドスと乱暴に歩いてコンビニから出ていった。
「はぁ〜」
緊張がほどけて力が抜けた。
「●●さん、大丈夫だった?」
「うん、助かった。ありがとう」
「でも、手震えてる……」
「こんなの少ししたら収まるから」
私は咄嗟に手を後ろに回して隠した。
「本当は側にいたいけど、俺このあと夜勤だから……」
「気を遣わせちゃってごめんね。私なら大丈夫だから」
堅治君は名残惜しそうにコンビニを出ようとしたところで、
「あっ」
と何か言い忘れがあったのか、顔だけこちらに向けた。
「勝手に彼女って言って悪かった。でも、そうなったらいいな、とは思ってるから」
「えっ……」
「じゃあ、お疲れ様です」
彼女になったらいいな……。
あれは嘘だけど、嘘じゃなかったってこと?
もう頭がいっぱいいっぱいで、しばらく佇んでしまった。
「●●さん」
「あ、堅治君!夜勤明け?お疲れ様」
「うん、もう帰って寝るだけ」
軽い会話だってするようになった。
「これ、お願いします」
「はーい、220円ね」
手には決まってエナジードリンク。
避妊具はあれから一度もレジに持ってきていない。
だって、失恋したことも彼女がいたことも嘘だってバレちゃったからね。
それに、あれだけ残っていれば当分買わずに済むはず。
ちなみに、家にはあれからお邪魔していないから、使っているのかどうか分からないけれど、減っていないといいな。
ーーーー
ある夕方バイトの日。
今日は堅治君来るかな。
噂をしたらなんとやらって言うし、前もそうだったから。
そんなことを思いながら店内の掃除をしていると、ほら自動ドアが開いた。
「いらっしゃいませ〜……ってマサト」
元カレのマサト。
まさか噂もしていないのに会いたくない人物が来るとは。
「チッ、●●のバイト先ってここのコンビニだったのか」
教えたことあるんだけど。
マサトが忘れたか聞き逃しただけじゃない。
嫌だけど仕事だから、私は掃除をしていた手を止めて、レジの方へと回った。
遠回しに待ってるから早く商品を持って来い、と。
それなのに、いつまで経っても商品を見に行く素振りを見せずにレジの方へと向かってきた。
「呑気にバイトなんかしてよ……」
また始まった。
付き合っているときにも言われた八つ当たり。
この口振り、おそらくマサトはまだ内定を貰えていないのだろう。
うんざりだ。
「買わないならお帰りください」
「客に向かってなんだよ、その言いようは!距離を取ったら反省するかと思いきや。まだ時間が必要なようだな」
「はあ?」
反省?私が?冗談じゃない。
何を反省しろと言うのか。
あんなにも献身的に寄り添ったのに。
仮にも好きだった人。
これ以上アナタを嫌いにさせないでよ。
悔しくて、悲しくて涙がこぼれそうになる。
唇を噛み締めて堪えていると、コンビニの自動ドアが開いた。
「●●さん……あれ、お取り込み中?」
「堅治君……」
さっきまでは会いたかったのに、こんなところを見られるなら会いたくなかった。
「あ?何だコイツ。自分はさっさと内定もらったからって、もう他の男作ってるのか」
「違っ……」
堅治君に突っかかってきそうなマサトを制そうと声を出そうとしたら、
「俺の彼女に絡まないでくれない?」
「あ゛あん?」
彼女……?
違う、これは私を庇うための嘘。
なのに、なんでドキドキするの。
「アンタが例の内定貰えず●●さんに八つ当たりしたあげく、振ったって言う最低彼氏だろ?……いや、元カレか」
「コイツっ」
私がポロッとこぼした愚痴を覚えていたなんて。
最低彼氏とまでは言っていないけど。
「大方、身の丈にあってないところばかり受けてんだろ」
「このクソガキが!」
「そのクソガキだって就職できたのに、お兄さんは何をしているんですかね?」
最高に悪い顔をしてマサキを見下す堅治君。
マサトだって背は高い方なのに、それを上回る背の高さ。
「くっ……!もうこんなコンビニ来ねぇから!」
マサトは捨て台詞を吐いて、ドスドスと乱暴に歩いてコンビニから出ていった。
「はぁ〜」
緊張がほどけて力が抜けた。
「●●さん、大丈夫だった?」
「うん、助かった。ありがとう」
「でも、手震えてる……」
「こんなの少ししたら収まるから」
私は咄嗟に手を後ろに回して隠した。
「本当は側にいたいけど、俺このあと夜勤だから……」
「気を遣わせちゃってごめんね。私なら大丈夫だから」
堅治君は名残惜しそうにコンビニを出ようとしたところで、
「あっ」
と何か言い忘れがあったのか、顔だけこちらに向けた。
「勝手に彼女って言って悪かった。でも、そうなったらいいな、とは思ってるから」
「えっ……」
「じゃあ、お疲れ様です」
彼女になったらいいな……。
あれは嘘だけど、嘘じゃなかったってこと?
もう頭がいっぱいいっぱいで、しばらく佇んでしまった。
