手首にある小さなライバル
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あの日から、信介君は肌身離さず時計を着けるようになった。
もちろん嬉しい。
時間をかけて選んだプレゼントを、彼がこんなにも気に入ってくれている証拠だから。
……だけど、見過ぎである。
廊下で見かけた時も、信介君の教室を覗いた時も、自習室で勉強している時も、彼は時間を確認するワケでもなく、頻繁に左手首に視線を落とす。
流石にモヤモヤを通り越して、少しだけ嫉妬のような感情さえ芽生え始めた私は、ある日の帰り道、ついにその想いを口に出してしまった。
その日は、プレゼントを渡した時と同じく、図書館で信介君の部活が終わるのを待っていた。
連絡が来てから昇降口へ向かうと、やっぱり彼は腕時計を眺めていた。
ああ、また見ている。
そっと彼に近付くと、時計に集中しているのかと思いきや、直ぐに私に気が付いてくれた。
「あ、●●。帰ろうか」
本当なら、労いの言葉をかけるはずだった。
それなのに、私の口からは不機嫌な声が出た。
「ねえ、ちょっと時計見過ぎじゃない?」
校門へ向かう足を止め、信介君は不思議そうに私を見た。
「ほうか?まあ、●●が選んでくれたプレゼントやし」
その言葉は、私への愛情と、プレゼントを大切にしてくれている誠実さが詰まっていた。
……嬉しい。
嬉しいけど、私の本心は違った。
だって、私が本当に見つめてほしいのは……。
「時計じゃなくて、もっと私を見て!」
拗ねた子供みたいなことを言っている自覚はある。
だけど、この小さな嫉妬を言わずにはいられなかった。
私は彼の顔を見つめることができず、きゅっと唇を結んだ。
すると、信介君は少し困ったように、けれど、いつも通りの優しい声で答えた。
「見てたんは時計やけど、思い出しとったんは●●やで」
そんな優しい声色で言われたら、何も言い返せなくなる。
彼の言葉は、私の浅はかな嫉妬を一瞬で溶かした。
「ごめん……私、変なこと言って……」
私は思わず俯いた。
自分の言動が恥ずかしくて、顔が熱くなる。
すると、彼はそっと手を伸ばし、私の頭に触れた。
彼の指先が、私の髪を優しく撫でる。
「変やないよ。それだけ俺を想ってくれとるんやろ。おおきに」
触れられた場所から、じんわりと彼の温かさが伝わってくる。
視線は腕時計に譲るけど、心までは渡さない。
その温もりが、私にそう確信させてくれた。
ーーFinーー
もちろん嬉しい。
時間をかけて選んだプレゼントを、彼がこんなにも気に入ってくれている証拠だから。
……だけど、見過ぎである。
廊下で見かけた時も、信介君の教室を覗いた時も、自習室で勉強している時も、彼は時間を確認するワケでもなく、頻繁に左手首に視線を落とす。
流石にモヤモヤを通り越して、少しだけ嫉妬のような感情さえ芽生え始めた私は、ある日の帰り道、ついにその想いを口に出してしまった。
その日は、プレゼントを渡した時と同じく、図書館で信介君の部活が終わるのを待っていた。
連絡が来てから昇降口へ向かうと、やっぱり彼は腕時計を眺めていた。
ああ、また見ている。
そっと彼に近付くと、時計に集中しているのかと思いきや、直ぐに私に気が付いてくれた。
「あ、●●。帰ろうか」
本当なら、労いの言葉をかけるはずだった。
それなのに、私の口からは不機嫌な声が出た。
「ねえ、ちょっと時計見過ぎじゃない?」
校門へ向かう足を止め、信介君は不思議そうに私を見た。
「ほうか?まあ、●●が選んでくれたプレゼントやし」
その言葉は、私への愛情と、プレゼントを大切にしてくれている誠実さが詰まっていた。
……嬉しい。
嬉しいけど、私の本心は違った。
だって、私が本当に見つめてほしいのは……。
「時計じゃなくて、もっと私を見て!」
拗ねた子供みたいなことを言っている自覚はある。
だけど、この小さな嫉妬を言わずにはいられなかった。
私は彼の顔を見つめることができず、きゅっと唇を結んだ。
すると、信介君は少し困ったように、けれど、いつも通りの優しい声で答えた。
「見てたんは時計やけど、思い出しとったんは●●やで」
そんな優しい声色で言われたら、何も言い返せなくなる。
彼の言葉は、私の浅はかな嫉妬を一瞬で溶かした。
「ごめん……私、変なこと言って……」
私は思わず俯いた。
自分の言動が恥ずかしくて、顔が熱くなる。
すると、彼はそっと手を伸ばし、私の頭に触れた。
彼の指先が、私の髪を優しく撫でる。
「変やないよ。それだけ俺を想ってくれとるんやろ。おおきに」
触れられた場所から、じんわりと彼の温かさが伝わってくる。
視線は腕時計に譲るけど、心までは渡さない。
その温もりが、私にそう確信させてくれた。
ーーFinーー
