手首にある小さなライバル
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どれくらい経っただろうか。
図書館で勉強すると言いつつ、この後待ち構えていることを考えると、緊張して勉強に手がつかなかった。
目の前には、解かれることのなかった大学入試の過去の問題集が積まれている。
いい加減、使わないなら片付けないと。
そう思い始めたとき、私のスマホが震えた。
信介君からだ。
“今終わった。昇降口で待っとる”
余計なことは書かれていない、彼らしい内容。
私は慌てて本を返却し、図書室を後にした。
昇降口へ向かうと、ハンカチで汗を拭っている信介君が立っていた。
「信介君!」
「ごめん、待たせて。今日は長うなってしもうた」
「ううん、全然!お疲れ様」
「じゃあ、帰ろうか」
私たちは2人並んで、校門を出た。
引退してから初めての、2人きりの下校時間。
「春高まで、頑張るんだね」
いきなり誕生日の話題は出せず、私は当たり障りのない話を投げかけた。
「インターハイで終わった時に、まだ結果を出せてないって思ってしもうて。呆れたか?」
信介君は口癖のように“結果は副産物”といつも言っている。
そんな彼の口から結果を気にする言葉が出るとは。
何か、心境の変化でもあったのか。
それならば、私が言えることはひとつ。
「そんなことないよ!信介君が決めたことなら、なんでも応援する!」
彼はようやく私の方を見て、少しだけ微笑んだ。
その微笑みに、私の心臓は跳ね上がった。
このまま見つめ合っているのは、恥ずかしい。
「あ、あのね、信介君!」
私は慌てて視線を外し、話題を逸らすように早口で続けた。
「ちょっとだけ寄り道しない?この先に公園があるんだけど……」
私の唐突な提案に、信介君は不思議そうな顔をしたものの、すぐに静かに頷いた。
「かまへんよ」
いつもの通学路を少し外れ、私たちは公園へと立ち寄った。
誰もいないベンチに2人並んで腰を下ろす。
「静かやな」
「時間が時間だもん……」
「ほうか……」
「……」
「……」
勢いで公園に誘ったけど、プレゼントを渡すのに絶好のタイミングだと言うことに気が付いた。
私は意を決した。
「あのね、信介君」
鞄から小さな手提げ袋を取り出し、信介君の前に差し出す。
「お誕生日、おめでとう!」
信介君は一瞬目を丸くした後、ゆっくりとそれを受け取った。
「ありがとう」
彼は袋の口をそっと開け、中から現れた木目の箱をじっと見つめた。
その箱を開けると、濃い茶色のウッドウォッチが姿を現す。
信介君の白い指が、そっと木製の文字盤に触れた。
「これ……腕時計か」
「うん。静電気が起きにくいらしいの」
「……ええな」
信介君は少し照れたように笑い、そのウッドウォッチをそっと自分の手首に巻いた。
濃い茶色の木目が、彼の引き締まった白い手首に映える。
「ぴったりや。●●、ありがとう」
「よかった!」
信介君は何度も手首を回して確認し、本当に気に入ってくれたようだ。
「大切にする」
そう言って、彼は宝物のように腕時計を撫でた。
このプレゼントを選んで、本当に良かった。
図書館で勉強すると言いつつ、この後待ち構えていることを考えると、緊張して勉強に手がつかなかった。
目の前には、解かれることのなかった大学入試の過去の問題集が積まれている。
いい加減、使わないなら片付けないと。
そう思い始めたとき、私のスマホが震えた。
信介君からだ。
“今終わった。昇降口で待っとる”
余計なことは書かれていない、彼らしい内容。
私は慌てて本を返却し、図書室を後にした。
昇降口へ向かうと、ハンカチで汗を拭っている信介君が立っていた。
「信介君!」
「ごめん、待たせて。今日は長うなってしもうた」
「ううん、全然!お疲れ様」
「じゃあ、帰ろうか」
私たちは2人並んで、校門を出た。
引退してから初めての、2人きりの下校時間。
「春高まで、頑張るんだね」
いきなり誕生日の話題は出せず、私は当たり障りのない話を投げかけた。
「インターハイで終わった時に、まだ結果を出せてないって思ってしもうて。呆れたか?」
信介君は口癖のように“結果は副産物”といつも言っている。
そんな彼の口から結果を気にする言葉が出るとは。
何か、心境の変化でもあったのか。
それならば、私が言えることはひとつ。
「そんなことないよ!信介君が決めたことなら、なんでも応援する!」
彼はようやく私の方を見て、少しだけ微笑んだ。
その微笑みに、私の心臓は跳ね上がった。
このまま見つめ合っているのは、恥ずかしい。
「あ、あのね、信介君!」
私は慌てて視線を外し、話題を逸らすように早口で続けた。
「ちょっとだけ寄り道しない?この先に公園があるんだけど……」
私の唐突な提案に、信介君は不思議そうな顔をしたものの、すぐに静かに頷いた。
「かまへんよ」
いつもの通学路を少し外れ、私たちは公園へと立ち寄った。
誰もいないベンチに2人並んで腰を下ろす。
「静かやな」
「時間が時間だもん……」
「ほうか……」
「……」
「……」
勢いで公園に誘ったけど、プレゼントを渡すのに絶好のタイミングだと言うことに気が付いた。
私は意を決した。
「あのね、信介君」
鞄から小さな手提げ袋を取り出し、信介君の前に差し出す。
「お誕生日、おめでとう!」
信介君は一瞬目を丸くした後、ゆっくりとそれを受け取った。
「ありがとう」
彼は袋の口をそっと開け、中から現れた木目の箱をじっと見つめた。
その箱を開けると、濃い茶色のウッドウォッチが姿を現す。
信介君の白い指が、そっと木製の文字盤に触れた。
「これ……腕時計か」
「うん。静電気が起きにくいらしいの」
「……ええな」
信介君は少し照れたように笑い、そのウッドウォッチをそっと自分の手首に巻いた。
濃い茶色の木目が、彼の引き締まった白い手首に映える。
「ぴったりや。●●、ありがとう」
「よかった!」
信介君は何度も手首を回して確認し、本当に気に入ってくれたようだ。
「大切にする」
そう言って、彼は宝物のように腕時計を撫でた。
このプレゼントを選んで、本当に良かった。
