手首にある小さなライバル
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〜手首にある小さなライバル〜
6月に行われたインターハイを最後に、私は部活を引退した。
悔いはないけれど、もう少しだけ長く続けたかった気持ちもある。
だけど、くよくよしていても仕方がない。
なにせ、私は受験生なのだから。
ただ、本格的に勉強モードに入る前に、大切な寄り道をしなければならない。
それは彼氏である信介君の誕生日プレゼントを用意すること。
7月5日まで1週間を切っている。
週末、誕生日プレゼントを買うために、1人で街へ出かけた。
何かを熱心に探しているワケではなかった。
ただ、信介君にぴったり合うような、実用性がありながらも、少し特別なものが欲しいと思っていた。
ふと、細い路地裏に建つ、自然素材を扱った小さな雑貨店が目に留まった。
店の窓には、温かみのある木製の腕時計が飾られている。
……これだ!
私の直感が、静かにそう告げたのだ。
店の古い木の扉を開けて、店内のガラスケースを覗き込むと、様々なデザインの腕時計が並んでいた。
その中で目を引かれたのは、シンプルな文字盤と、落ち着いた濃い茶色の木目が特徴のウッドウォッチだった。
じっと見ていたからか、店員さんが微笑みながら話しかけてきた。
「そちらが気になりますか?よければ試着してみます?」
自分用ではないけれど、せっかくなので使用感を試すために、着けてみることに。
「えっと……はい。お願いします」
私がそう言うと、店員さんは静かにガラスケースの鍵を開けた。
取り出した腕時計をトレイの上に載せる。
「失礼します」
そして、店員さんは丁寧な手つきで私の腕に時計を巻いてくれた。
温かみのあるウッドウォッチだけれど、肌に触れた瞬間は冷たかった。
それから、意外と軽い。
私は手首を少し回し、様々な角度から確認した。
今は私の手首に着いているけれど、きっと信介君ならもっと似合うだろうな。
彼の白く細い手首に、この濃い茶色が映える様子を想像して、私の口角は自然と上がる。
「いかがでしょうか。こちらは静電気が起きにくく、着けていることを忘れるほど軽いんですよ」
「そうなんですね」
店員さんの言葉に頷きながら納得した。
本来の腕時計は静電気が苦手な彼にとって天敵。
だけど、店員さんの説明を聞いて、迷いは消えた。
価格だってリーズナブル。
それに、受験生の私たちには必須アイテムだ。
「これ、ください」
「ありがとうございます。では、お包みしますね」
店員さんは、優しく手首から時計を外した。
そして、私の手首から離れたウッドウォッチは、専用の木箱のケースに入れられた。
会計を済ませ、お店を出た私は、包装されたウッドウォッチをぎゅっと胸に抱きしめた。
これで準備は万端。
あとは7月5日を待つだけだ。
「信介君、喜んでくれるかな」
そう呟きながら、私は少しだけ早足で帰路についた。
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