似た者同士
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駅構内はこれから彼、もしくは彼女の家へ向かおうとするカップルが同じ改札をくぐっている。
羨ましい。
そんな人たちを横目に、私は信介さんとお別れの挨拶をする。
「今日はありがとうございました」
「ほな、また」
「はい……」
軽く会釈をした信介さんは、彼が乗る電車の路線の方へと翻した。
ああ、信介さんが行ってしまう。
「……あの!」
私は思わず信介さんの元へ駆け寄り、コートを掴んで引き止めていた。
自分自身でもその行動に驚いてしまった。
でも、離したくない……。
離したら次がいつ来るか分からないから。
引き止めてしまった以上、もう後戻りはできない。
私は信介さんを真っ直ぐに見つめた。
「あの、よければ家に寄っていきませんか?ほら、結局クリスマスプレゼントのお返しができなかったので……」
最もらしい理由を並べる。
すると信介さんは少しだけ考える素振りをしたかと思えば、
「なら、少しだけ」
と、柔らかい表情になってくれた。
勇気を出して良かった。
こうして私は信介さんと一緒に同じ改札口をくぐった。
ーーーー
「どうぞ、入ってください」
「おじゃまします」
「今何か飲み物を用意しますので、適当に座っていてくださいね」
信介さんをリビングに通した後、キッチンへ向った。
彼を家に入れたのは今回で2回目。
前は夜遅くにゴキブリ退治をさせるために呼び出した。
あのときは何のお構いもできずに帰してしまったため、次はちゃんとしようと思っていた。
だけど、今回も急に招待したため、冷蔵庫の中には碌なものがない。
おまけにお茶も切らしている。
……仕方がない。
頂いたものを振る舞うのもどうかと思ったけれど、お客様に水を出すのもなんだと思い、綺麗にラッピングされている袋を開けた。
いつもスーパーで買っている安い茶葉とは違う、ちゃんとしたやつ。
袋から取り出した茶葉は仄かに香ばしい匂いがした。
「確かこの辺に……」
棚の奥から急須を取り出して、茶葉と沸かしたお湯を注ぐ。
トレーに急須と耐熱カップを乗せる。
本当は耐熱カップよりも湯呑の方が合うだろうけれど、あいにく家にはない。
私はそれらを持って、信介さんの待つリビングの扉を開けた。
「お待たせしました」
「そない構わんでええのに」
「私が好きでやっているので」
クリスマスプレゼントを貰ったときに言われた言葉と、同じ言葉を返した。
コップにお茶を注ぎ、信介さんの前に置いた。
「いただきます」
それを一口口にすると、信介さんは直ぐに何のお茶か察した。
「このお茶……」
「すみません。頂いたお茶、早速淹れてみました」
さすがにこれ以外の飲み物が水しかなかったから、とは言えなかった。
「うん、旨い。やっぱりプレゼントしてよかったわ」
どれどれ、と私も一口飲んだ。
「……」
確かに美味しい。
だけど、どことなく信介さんが淹れてくれたのとは違うようにも感じた。
「美味しいですけど……。信介さんみたいに、もっとちゃんと淹れられるように頑張りますね」
苦笑いしながら返すと、信介さんから意外なことを言われてしまった。
「俺、●●さんが思うてるほど、ちゃんとしてへんよ」
「えっ……?」
信介さんがちゃんとしていないのであれば、私はどうなるんだろう。
さながらズボラと言ったところか。
自分で考えていて悲しくなってきた。
「……」
黙り込んでいると、信介さんは話を続けた。
「本当 はこないなことするつもりなかったんやけど……。●●さんが悪いんやで」
コップをテーブルに置いた信介さんは私との距離をズイっと縮めてきた。
何かと思い、そのまま信介さんを見つめていると、彼の顔がどんどん近づいてきて、終いにはチュッと軽い音を立てて私の唇に彼のそれが重なった。
「あ……え……っと、……っ?!」
突然の出来事に茫然としていると、信介さんは穏やかな笑みを浮かべたまま言った。
「今までぎょうさんええ子にしてたから、今日くらい神さん見逃してくれんかな」
妖艶に微笑む信介さん。
彼は私の頭に手を伸ばして、そのまま自分の方へと引き寄せた。
そこには真面目で几帳面でちゃんとしている信介さんではなく、私と同じ、ただお互いを求め合う男と女しかいなかった。
ーーFinーー
羨ましい。
そんな人たちを横目に、私は信介さんとお別れの挨拶をする。
「今日はありがとうございました」
「ほな、また」
「はい……」
軽く会釈をした信介さんは、彼が乗る電車の路線の方へと翻した。
ああ、信介さんが行ってしまう。
「……あの!」
私は思わず信介さんの元へ駆け寄り、コートを掴んで引き止めていた。
自分自身でもその行動に驚いてしまった。
でも、離したくない……。
離したら次がいつ来るか分からないから。
引き止めてしまった以上、もう後戻りはできない。
私は信介さんを真っ直ぐに見つめた。
「あの、よければ家に寄っていきませんか?ほら、結局クリスマスプレゼントのお返しができなかったので……」
最もらしい理由を並べる。
すると信介さんは少しだけ考える素振りをしたかと思えば、
「なら、少しだけ」
と、柔らかい表情になってくれた。
勇気を出して良かった。
こうして私は信介さんと一緒に同じ改札口をくぐった。
ーーーー
「どうぞ、入ってください」
「おじゃまします」
「今何か飲み物を用意しますので、適当に座っていてくださいね」
信介さんをリビングに通した後、キッチンへ向った。
彼を家に入れたのは今回で2回目。
前は夜遅くにゴキブリ退治をさせるために呼び出した。
あのときは何のお構いもできずに帰してしまったため、次はちゃんとしようと思っていた。
だけど、今回も急に招待したため、冷蔵庫の中には碌なものがない。
おまけにお茶も切らしている。
……仕方がない。
頂いたものを振る舞うのもどうかと思ったけれど、お客様に水を出すのもなんだと思い、綺麗にラッピングされている袋を開けた。
いつもスーパーで買っている安い茶葉とは違う、ちゃんとしたやつ。
袋から取り出した茶葉は仄かに香ばしい匂いがした。
「確かこの辺に……」
棚の奥から急須を取り出して、茶葉と沸かしたお湯を注ぐ。
トレーに急須と耐熱カップを乗せる。
本当は耐熱カップよりも湯呑の方が合うだろうけれど、あいにく家にはない。
私はそれらを持って、信介さんの待つリビングの扉を開けた。
「お待たせしました」
「そない構わんでええのに」
「私が好きでやっているので」
クリスマスプレゼントを貰ったときに言われた言葉と、同じ言葉を返した。
コップにお茶を注ぎ、信介さんの前に置いた。
「いただきます」
それを一口口にすると、信介さんは直ぐに何のお茶か察した。
「このお茶……」
「すみません。頂いたお茶、早速淹れてみました」
さすがにこれ以外の飲み物が水しかなかったから、とは言えなかった。
「うん、旨い。やっぱりプレゼントしてよかったわ」
どれどれ、と私も一口飲んだ。
「……」
確かに美味しい。
だけど、どことなく信介さんが淹れてくれたのとは違うようにも感じた。
「美味しいですけど……。信介さんみたいに、もっとちゃんと淹れられるように頑張りますね」
苦笑いしながら返すと、信介さんから意外なことを言われてしまった。
「俺、●●さんが思うてるほど、ちゃんとしてへんよ」
「えっ……?」
信介さんがちゃんとしていないのであれば、私はどうなるんだろう。
さながらズボラと言ったところか。
自分で考えていて悲しくなってきた。
「……」
黙り込んでいると、信介さんは話を続けた。
「
コップをテーブルに置いた信介さんは私との距離をズイっと縮めてきた。
何かと思い、そのまま信介さんを見つめていると、彼の顔がどんどん近づいてきて、終いにはチュッと軽い音を立てて私の唇に彼のそれが重なった。
「あ……え……っと、……っ?!」
突然の出来事に茫然としていると、信介さんは穏やかな笑みを浮かべたまま言った。
「今までぎょうさんええ子にしてたから、今日くらい神さん見逃してくれんかな」
妖艶に微笑む信介さん。
彼は私の頭に手を伸ばして、そのまま自分の方へと引き寄せた。
そこには真面目で几帳面でちゃんとしている信介さんではなく、私と同じ、ただお互いを求め合う男と女しかいなかった。
ーーFinーー
