上手な甘え方
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なんとか残業を終えたときには、外はすっかり闇に包まれていた。
オフィスの外へ出ると、星が明るく瞬いていたけれど、私の体は鉛のように重く、空の眩しさを楽しんでいる余裕がなかった。
光太郎はご飯を済ませただろうか。
家事のできない彼のことだから、きっといつものバレーのチームメイトと外食したに違いない。
そんなことを考えながら自宅の扉を開け、玄関に足を踏み入れた。
「ただい、ま……?」
そう声をかけた途端、嗅ぎ慣れない匂いが鼻を突いた。
それは、何かが焦げ付いた臭い。
「火事?!」
心臓がドクンと跳ねた。
慌ててキッチンへと駆けつける。
そこには、エプロン姿の光太郎が、しょんぼりとした様子で立ち尽くしていた。
「何してるの……?」
「あ、おかえり……。●●が残業だって言うからさ、せめて夜ご飯くらいは作っておこうと思って……」
光太郎は、申し訳なさそうにガスコンロの上のフライパンを指差した。
そこには炭のように真っ黒になったハンバーグらしき塊が、無残な姿で乗っていた。
「●●みたいにうまく作れなかった。ごめん……」
光太郎は肩を落とし、細い声で謝った。
そのあからさまなしょんぼり具合に、私は責める気持ちなんて微塵も湧かなかった。
焦げ付いたフライパンはダメになったかもしれない。
でも、あの連絡を見てすぐに、私のために立ち上がってくれた彼の優しい行動と気持ちが、何よりも嬉しかった。
「ちょっと貸して?」
私は彼の気持ちを受け止めるように微笑みかけ、光太郎からフライパンを受け取った。
そして、包丁でハンバーグの表面を少しだけ削いでみる。
すると、その内側からは、まだ赤みを帯びた、充分食べられそうな色が現れた。
「このくらいなら大丈夫だよ。気になる焦げを削って、ソースと一緒に煮込めば、美味しく食べられるよ」
私の言葉に、光太郎の淀んだ瞳に光が戻る。
「本当か?!」
「うん。だから、そんなに落ち込まないで?」
その瞬間、光太郎は勢いよく私に抱きついてきた。
「●●、ありがとう!」
「うわ、危ないよ!」
突然の衝撃に思わず笑ってしまう。
「ご、ごめんっ!だけど、このくらいしないと感謝の気持が伝わらないと思って」
「ふふふ、充分伝わってるよ」
その温かい抱擁に、今日一日の疲労が溶けていくのを感じた。
……。
…………。
私は部屋着に着替えてから、再びキッチンに立ち、救出されたハンバーグをリメイクする作業に取り掛かった。
焦げを丁寧に削ぎ落とし、デミグラスソースでじっくりと煮込む。
部屋に満ちていた焦げ臭さは消え、やがて、芳醇な煮込みソースの香りに置き換わった。
そして、完成した煮込みハンバーグと、ツヤツヤのご飯、瑞々しいサラダを食卓に並べる。
「うおお!あの真っ黒だったのが、こんなにうまそうに変身するなんて!●●はやっぱり天才だな!」
光太郎は歓声を上げ、食卓の前で小躍りをしながら喜びを表現していた。
「あはは、大袈裟だな~。さ、温かいうちに食べよう?」
ハンバーグを削いだため、だいぶ歪な形になってしまっていた。
私は迷うことなく、そのより酷い方の形のハンバーグを自分の前に静かに引き寄せた。
「いただきます」
手を合わせながら、チラリと向かい合う光太郎の顔を見ると、今朝と同じように、私のハンバーグが乗ったお皿をじっと見つめていた。
やはり、何かあるのだろうか。
気にはなったけれど、お腹が空いていた私は、その違和感に蓋をして、食事を始めた。
オフィスの外へ出ると、星が明るく瞬いていたけれど、私の体は鉛のように重く、空の眩しさを楽しんでいる余裕がなかった。
光太郎はご飯を済ませただろうか。
家事のできない彼のことだから、きっといつものバレーのチームメイトと外食したに違いない。
そんなことを考えながら自宅の扉を開け、玄関に足を踏み入れた。
「ただい、ま……?」
そう声をかけた途端、嗅ぎ慣れない匂いが鼻を突いた。
それは、何かが焦げ付いた臭い。
「火事?!」
心臓がドクンと跳ねた。
慌ててキッチンへと駆けつける。
そこには、エプロン姿の光太郎が、しょんぼりとした様子で立ち尽くしていた。
「何してるの……?」
「あ、おかえり……。●●が残業だって言うからさ、せめて夜ご飯くらいは作っておこうと思って……」
光太郎は、申し訳なさそうにガスコンロの上のフライパンを指差した。
そこには炭のように真っ黒になったハンバーグらしき塊が、無残な姿で乗っていた。
「●●みたいにうまく作れなかった。ごめん……」
光太郎は肩を落とし、細い声で謝った。
そのあからさまなしょんぼり具合に、私は責める気持ちなんて微塵も湧かなかった。
焦げ付いたフライパンはダメになったかもしれない。
でも、あの連絡を見てすぐに、私のために立ち上がってくれた彼の優しい行動と気持ちが、何よりも嬉しかった。
「ちょっと貸して?」
私は彼の気持ちを受け止めるように微笑みかけ、光太郎からフライパンを受け取った。
そして、包丁でハンバーグの表面を少しだけ削いでみる。
すると、その内側からは、まだ赤みを帯びた、充分食べられそうな色が現れた。
「このくらいなら大丈夫だよ。気になる焦げを削って、ソースと一緒に煮込めば、美味しく食べられるよ」
私の言葉に、光太郎の淀んだ瞳に光が戻る。
「本当か?!」
「うん。だから、そんなに落ち込まないで?」
その瞬間、光太郎は勢いよく私に抱きついてきた。
「●●、ありがとう!」
「うわ、危ないよ!」
突然の衝撃に思わず笑ってしまう。
「ご、ごめんっ!だけど、このくらいしないと感謝の気持が伝わらないと思って」
「ふふふ、充分伝わってるよ」
その温かい抱擁に、今日一日の疲労が溶けていくのを感じた。
……。
…………。
私は部屋着に着替えてから、再びキッチンに立ち、救出されたハンバーグをリメイクする作業に取り掛かった。
焦げを丁寧に削ぎ落とし、デミグラスソースでじっくりと煮込む。
部屋に満ちていた焦げ臭さは消え、やがて、芳醇な煮込みソースの香りに置き換わった。
そして、完成した煮込みハンバーグと、ツヤツヤのご飯、瑞々しいサラダを食卓に並べる。
「うおお!あの真っ黒だったのが、こんなにうまそうに変身するなんて!●●はやっぱり天才だな!」
光太郎は歓声を上げ、食卓の前で小躍りをしながら喜びを表現していた。
「あはは、大袈裟だな~。さ、温かいうちに食べよう?」
ハンバーグを削いだため、だいぶ歪な形になってしまっていた。
私は迷うことなく、そのより酷い方の形のハンバーグを自分の前に静かに引き寄せた。
「いただきます」
手を合わせながら、チラリと向かい合う光太郎の顔を見ると、今朝と同じように、私のハンバーグが乗ったお皿をじっと見つめていた。
やはり、何かあるのだろうか。
気にはなったけれど、お腹が空いていた私は、その違和感に蓋をして、食事を始めた。
