上手な甘え方
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
〜上手な甘え方〜
隣を見ると、スースーと気持ちよさそうに寝息を立てる光太郎の穏やかな寝顔があった。
口元に光る小さな雫。
「ふふ、ヨダレ垂れてる」
彼のこんな無防備な顔を毎日見られるなんて、少し前までは考えられなかった。
私と光太郎は1ヶ月前から同棲を始めた。
この新しい生活にも、だいぶ慣れてきた気がする。
寝顔を眺めた後、私は彼を起こさないように静かにベッドから抜け出した。
身支度を済ませ、キッチンに立つ。
トースターにパンを入れ、スイッチを押す。
次に、取り出したフライパンをコンロにかけ、油を薄くひく。
温まった頃にウインナーを並べる。
香ばしい匂いが、部屋にゆっくりと広がっていく。
ウインナーが焼き色をつけ始めるのを待ちながら、卵を手に取る。
コンコンと卵にヒビを入れ、フライパンめがけて割り入れると、
「あっ……!」
2つのうち、片方の目玉焼きが失敗した。
黄身の膜が、割り入れた瞬間に小さく破れてしまい、鮮やかな黄色が白身の部分を汚すように流れ出る。
やってしまった。
「……まあ、いいか」
味は変わらないんだから。
フライパンの上で広がる黄身を眺めながら、そう自分に言い聞かせる。
失敗した目玉焼きをそっとお皿に乗せた。
その横に、こんがりと焼きあがったウインナーを添える。
もう1枚のお皿には、完璧な形の、ぷるんとした黄身を持つ目玉焼きを。
それから、焼けたばかりの香ばしい食パンと、コーヒーの豊かな香りが立ち上る2人分のマグカップを用意して、食卓へと並べた。
「光太郎ー!朝ご飯できたよー」
寝室で寝ている光太郎に、少しだけ声を張り上げて呼びかける。
しばらくして、彼がドアを開け、キッチンに入ってきた。
まだ寝ぼけているのだろう、細められた瞳には微かな光しか宿っていない。
頭には寝癖がフワフワと立っている。
「んー、はよぉ……。作ってくれてありがとう」
だけど、そんな状態でも、彼はいつも感謝の言葉をくれる。
その一言が、毎日を頑張れるエネルギーになる。
光太郎はテーブルの椅子に座り、皿を眺める。
上手に焼けた、綺麗な形の目玉焼きが彼の前にある。
私は、少し割れてしまった方を自分の前に静かに引き寄せた。
時間が経つに連れ、割れた黄身が白身に広がり、よく見ると、なんだか不格好だけれど、ハート型に見えなくもない。
これはこれで可愛いかも。
そんなことを思いながら手を合わせた。
「いただきます」
明るく声を出し、箸を取る。
「……」
光太郎の箸が、動かない。
彼は目の前の朝食ではなく、私のお皿をじっと見つめている。
まだ寝ぼけているのだろうか。
「どうかした?」
「あ……いや、なんでもない。いただきます」
彼はすぐに箸を取った。
気にはなったけれど、その後はパクパクと、いつものようにあっという間に完食してくれたから、私の杞憂だったのだろうと安心した。
……。
…………。
「夜ご飯は何が食べたい?」
食器を洗いながら尋ねると、
「肉ー!」
光太郎は目を輝かせて即答した。
その子供っぽい笑顔に、光太郎らしさを感じる。
「じゃあ、ハンバーグにしようかな。スーパー寄ってから帰るね」
「やったー!」
こんなに喜んでいる光太郎のために、今日は残業せずに帰れるといいな。
そう願いながら、私は最後のお皿に手を伸ばした。
1/4ページ
