青春の匂いはパンの香り
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「ただいま戻りました」
仕事を終わらせ、店の裏口を開けると、発酵した生地の独特な匂いが漂っていた。
私はこの臭いが苦手だ。
焼き上がったパンの香りとは違い、どうしても好きになれなかった。
そのため、ほとんど工場には足を踏み入れない。
だけど、今日は違う。
奥の釜の前では、父が焼き色を確かめながら集中した眼差しを向けている。
ほどよく日に焼けた腕と、エプロンは粉まみれ。
背中で語るその姿は、職人だった。
「おう、●●。配達ご苦労さん」
父はチラりと私の顔を見ると、作業へと意識を戻す。
そんな父に、今日は頼み事がある。
「ねえ、お父さん」
名前を呼ぶと、父はもう一度視線を私に向け、不思議そうに眉をひそめた。
「ん?なんだ?」
「ちょっとお願いがあるんだけど……私もパン作ってみたい」
そう言うと、父の目が大きく見開かれた。
「●●がついに……!店を継ぐ気になってくれたのか?!」
その顔は期待と喜びで輝いて見えた。
だけど、期待させてはいけない。
私はすぐに首を横に振った。
「いや、違う」
「じゃあ、なんで急にそんなことを」
父は不貞腐れたように私から視線を外した。
「別に何だっていいでしょ。それで、作らせてくれるの?ダメなの?」
つい強い口調で尋ねると、
「営業時間外ならいいぞ」
父は静かに、しかし優しくそう答えた。
「ありがとう、お父さん」
だけど、安堵したのもつかの間。
「あとは、お店の手伝いもちゃんとすること!」
当たり前だろ、と言わばかりの顔で父は言い放つ。
「分かったわよ」
こうして、私は人生で初めて、自分の手でパンを作ることにした。
仕事を終わらせ、店の裏口を開けると、発酵した生地の独特な匂いが漂っていた。
私はこの臭いが苦手だ。
焼き上がったパンの香りとは違い、どうしても好きになれなかった。
そのため、ほとんど工場には足を踏み入れない。
だけど、今日は違う。
奥の釜の前では、父が焼き色を確かめながら集中した眼差しを向けている。
ほどよく日に焼けた腕と、エプロンは粉まみれ。
背中で語るその姿は、職人だった。
「おう、●●。配達ご苦労さん」
父はチラりと私の顔を見ると、作業へと意識を戻す。
そんな父に、今日は頼み事がある。
「ねえ、お父さん」
名前を呼ぶと、父はもう一度視線を私に向け、不思議そうに眉をひそめた。
「ん?なんだ?」
「ちょっとお願いがあるんだけど……私もパン作ってみたい」
そう言うと、父の目が大きく見開かれた。
「●●がついに……!店を継ぐ気になってくれたのか?!」
その顔は期待と喜びで輝いて見えた。
だけど、期待させてはいけない。
私はすぐに首を横に振った。
「いや、違う」
「じゃあ、なんで急にそんなことを」
父は不貞腐れたように私から視線を外した。
「別に何だっていいでしょ。それで、作らせてくれるの?ダメなの?」
つい強い口調で尋ねると、
「営業時間外ならいいぞ」
父は静かに、しかし優しくそう答えた。
「ありがとう、お父さん」
だけど、安堵したのもつかの間。
「あとは、お店の手伝いもちゃんとすること!」
当たり前だろ、と言わばかりの顔で父は言い放つ。
「分かったわよ」
こうして、私は人生で初めて、自分の手でパンを作ることにした。
