青春の匂いはパンの香り
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この日は珍しく客足が少なく、お昼休みまではまだ時間がたっぷり残っていた。
いつもの慌ただしさと違って、どこか空気も緩やかだ。
すぐに帰れるようにと、空になった番重を拭いたり、少なくなったパン同士をまとめたり、簡単な片付け作業を始めた。
そんな時、パタパタと足音が近付いてきた。
「お姉さーん!」
元気な声が飛んでくる。
「はいはー……ぁ」
顔を上げると木兎君がいた。
今日もお昼時間になって真っ先に買いに来たはずなのに、何の用だろうか。
「どうしたの?お昼足りなかった?」
そう尋ねると、木兎君は軽く首を横に振った。
「今日は感謝の言葉を伝えたくて」
「感謝?」
そうは言われても心当たりがなく、首を傾げてしまう。
「そう、お姉さん、いつも美味しいパンをありがとう!俺、お姉さんが勧めてくれたパンを食べると、なぜか調子が良くなるんだ!この間だって部活で活躍したんだぜー!?」
楽しそうに喋る木兎君。
だけど、それはキミの元々のポテンシャルのおかげなのでは?
そう思ったけれど、感謝されるのは素直に嬉しかった。
これが、自分が作ったパンならもっと嬉しく感じるんだろうな。
残念ながら、私の仕事は配達と販売だけで、製造には携わっていない。
「そう、よかった。それなら、また買いに来てね」
だから、今の私にはこれくらいしか返せる言葉がなかった。
そんな意図があるとは知らず、木兎君は、
「もちろんだ!」
と、元気よく頷いた。
けれど、その勢いのまま話を続けるかと思いきや、唐突に言葉に詰まり、口元をもぞもぞと動かしはじめた。
「それでさ……」
「ん?」
少し俯きがちになっているのを見て、自然と声のトーンも落ちる。
「どうしたの?」
「あのさ……良かったらお姉さんの名前教えてくれないかな?……ほら、実際の姉じゃないのにお姉さん呼びって変かなって……」
「あー……」
別に変ではないと思うけれど、一方的に知っているのもなんだし、教えることにした。
「●●だよ」
「●●……さん」
「うん、好きに呼んで、木兎君」
すると彼は、目を丸くして驚いたような表情を見せた。
「うぇ?!何で俺の名前知ってんの?!」
「キミの友達が呼んでいるのを聞いたからね」
「そっか……そっか、そっか……」
どこか照れたように笑う木兎君。
変なの。
いつもの慌ただしさと違って、どこか空気も緩やかだ。
すぐに帰れるようにと、空になった番重を拭いたり、少なくなったパン同士をまとめたり、簡単な片付け作業を始めた。
そんな時、パタパタと足音が近付いてきた。
「お姉さーん!」
元気な声が飛んでくる。
「はいはー……ぁ」
顔を上げると木兎君がいた。
今日もお昼時間になって真っ先に買いに来たはずなのに、何の用だろうか。
「どうしたの?お昼足りなかった?」
そう尋ねると、木兎君は軽く首を横に振った。
「今日は感謝の言葉を伝えたくて」
「感謝?」
そうは言われても心当たりがなく、首を傾げてしまう。
「そう、お姉さん、いつも美味しいパンをありがとう!俺、お姉さんが勧めてくれたパンを食べると、なぜか調子が良くなるんだ!この間だって部活で活躍したんだぜー!?」
楽しそうに喋る木兎君。
だけど、それはキミの元々のポテンシャルのおかげなのでは?
そう思ったけれど、感謝されるのは素直に嬉しかった。
これが、自分が作ったパンならもっと嬉しく感じるんだろうな。
残念ながら、私の仕事は配達と販売だけで、製造には携わっていない。
「そう、よかった。それなら、また買いに来てね」
だから、今の私にはこれくらいしか返せる言葉がなかった。
そんな意図があるとは知らず、木兎君は、
「もちろんだ!」
と、元気よく頷いた。
けれど、その勢いのまま話を続けるかと思いきや、唐突に言葉に詰まり、口元をもぞもぞと動かしはじめた。
「それでさ……」
「ん?」
少し俯きがちになっているのを見て、自然と声のトーンも落ちる。
「どうしたの?」
「あのさ……良かったらお姉さんの名前教えてくれないかな?……ほら、実際の姉じゃないのにお姉さん呼びって変かなって……」
「あー……」
別に変ではないと思うけれど、一方的に知っているのもなんだし、教えることにした。
「●●だよ」
「●●……さん」
「うん、好きに呼んで、木兎君」
すると彼は、目を丸くして驚いたような表情を見せた。
「うぇ?!何で俺の名前知ってんの?!」
「キミの友達が呼んでいるのを聞いたからね」
「そっか……そっか、そっか……」
どこか照れたように笑う木兎君。
変なの。
