青春の匂いはパンの香り
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生徒たちの波は、お昼休みギリギリまで途切れることなく続いた。
きっとみんな、お昼ご飯だけでなく、部活動の前に小腹を満たすためにもパンを買っているのだろう。
やがて、最後の1人がパンを手に駆け去っていくと、ようやく静寂が訪れた。
それが、私にとってのお昼休みの合図だ。
売れ残ったパンが入っている番重をトラックに積み込み、その中から1つのコッペパンを手に取った。
「いただきます……」
一口噛じると、思った以上にふわりとしたパン生地が、口の中のわずかな水分を素早く吸い取っていく。
パサついた感触が残り、喉に張りついた。
午前中、何十人もの生徒と笑顔でやり取りを続けてきた喉は、すでに限界を迎えていた。
「お茶、お茶……」
渇ききった喉を潤すため、私は鞄の中から水筒を探す。
しかし、底まで探しても、見慣れた水筒の感触はない。
「……忘れた」
がっくりと肩を落とす。
思い返せば、用意した水筒を机に置きっぱなしにしていた気がする。
仕方なく、私はトラックを降り、体育館前の自動販売機を目指した。
駐車場から中庭を通り抜ける。
卒業してまだ1年も経っていないのに、そこへ行くまでの道のりが、なんだか懐かしく感じた。
体育館に近付くにつれ、人のざわめきと響くホイッスル音が聞こえてくる。
体育の授業でもしているのか。
ふと、扉の合間から覗いてみた。
男子生徒たちがバレーボールのゲームに夢中になっていた。
何人もの中でひときわ目立ったのは、声がよく通る、あの明るい男子生徒。
彼は高く跳び上がると、きゅっと手首を返して強烈なスパイクを放った。
ボールが床に叩きつけられると、軽快な音を立てて遠くへ跳ねる。
その一瞬だけ、空気が震えたような気がした。
「うわ……凄っ」
思わず口元に漏れてしまう。
いつも見かける無邪気な彼とは違う、真剣な姿が格好良かった。
呆気にとられていると、彼の声が響いた。
「ヘイヘイヘーイ!見たか俺のスパイク!」
彼の威勢のいい声に、対戦相手の生徒が一斉に叫ぶ。
「木兎、少しは手加減しろよな!」
木兎……。
思いがけないタイミングで彼の名前を知ることができた。
私は忘れないように何度も頭の中で繰り返した。
そのおかげで、飲み物を買うことを忘れてトラックに戻ってしまったのは言うまでもない。
再度買いに行くのは面倒で、その日はそのままお店に帰ることにした。
喉は相変わらず乾いたまま。
きっとみんな、お昼ご飯だけでなく、部活動の前に小腹を満たすためにもパンを買っているのだろう。
やがて、最後の1人がパンを手に駆け去っていくと、ようやく静寂が訪れた。
それが、私にとってのお昼休みの合図だ。
売れ残ったパンが入っている番重をトラックに積み込み、その中から1つのコッペパンを手に取った。
「いただきます……」
一口噛じると、思った以上にふわりとしたパン生地が、口の中のわずかな水分を素早く吸い取っていく。
パサついた感触が残り、喉に張りついた。
午前中、何十人もの生徒と笑顔でやり取りを続けてきた喉は、すでに限界を迎えていた。
「お茶、お茶……」
渇ききった喉を潤すため、私は鞄の中から水筒を探す。
しかし、底まで探しても、見慣れた水筒の感触はない。
「……忘れた」
がっくりと肩を落とす。
思い返せば、用意した水筒を机に置きっぱなしにしていた気がする。
仕方なく、私はトラックを降り、体育館前の自動販売機を目指した。
駐車場から中庭を通り抜ける。
卒業してまだ1年も経っていないのに、そこへ行くまでの道のりが、なんだか懐かしく感じた。
体育館に近付くにつれ、人のざわめきと響くホイッスル音が聞こえてくる。
体育の授業でもしているのか。
ふと、扉の合間から覗いてみた。
男子生徒たちがバレーボールのゲームに夢中になっていた。
何人もの中でひときわ目立ったのは、声がよく通る、あの明るい男子生徒。
彼は高く跳び上がると、きゅっと手首を返して強烈なスパイクを放った。
ボールが床に叩きつけられると、軽快な音を立てて遠くへ跳ねる。
その一瞬だけ、空気が震えたような気がした。
「うわ……凄っ」
思わず口元に漏れてしまう。
いつも見かける無邪気な彼とは違う、真剣な姿が格好良かった。
呆気にとられていると、彼の声が響いた。
「ヘイヘイヘーイ!見たか俺のスパイク!」
彼の威勢のいい声に、対戦相手の生徒が一斉に叫ぶ。
「木兎、少しは手加減しろよな!」
木兎……。
思いがけないタイミングで彼の名前を知ることができた。
私は忘れないように何度も頭の中で繰り返した。
そのおかげで、飲み物を買うことを忘れてトラックに戻ってしまったのは言うまでもない。
再度買いに行くのは面倒で、その日はそのままお店に帰ることにした。
喉は相変わらず乾いたまま。
