鏡よ鏡よ鏡さん
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翌日の授業終わり。
「今日は一緒に帰れるんだよな?」
いつものように昇降口でケンが待っていた。
だけど私は彼に言わないといけないことがある。
メッセージアプリではなく、しっかりと自分の口から。
「……もう一緒には帰らない」
「はあ?」
ドスの利いた低い声。
だけど、怯んでたまるか。
私には木兎君が見守ってくれているから。
「あのね話があるの。私、ケンと別れたい。もう理不尽に怒られるのも、暴力を振るわれるのも嫌なの」
「誰に言われた……俺の知っている●●はそんな事言わない」
「誰にとかじゃなくて、これが本当の私」
「そんなの許さない」
「許さなくてもいい。でも、私はそうするから」
ケンの目を見てしっかりと言った。言ってやった。
口から出すと、案外あっさりとしている。
ケンを見ると拳がプルプルと震えていた。
もしかして泣いているの?
そう思ったけれど、大きな間違いだった。
「人が大人しく聞いていれば調子に乗りやがって……」
血走った目で拳が上げられた。
これは、殴られるやつだ。
ケンは外では決して暴力を振るわないのに、それほど余裕がないのか。
「っ……!」
私は咄嗟に目を瞑った。
いつも殴られているから、今日だけ耐えれば開放される。
そう思っていたのに、一向に痛みはやってこない。
目を開けると、そこには木兎君がケンの腕を掴んでいた。
「木兎君……」
「いや〜間一髪だったな!」
「またお前かよ!」
「おう、俺だ!」
自信満々な木兎君はケンの腕を離すと、私とケンの間に割って入ってきた。
「◯◯の腕の痣、やっぱりお前の仕業だったんだな!」
「……ちっ」
コイツにバラしたな、と言わんばかりの顔でケンに睨まれたけれど、別れを言った今では痛くも痒くもない。
だけど、怖いと思う感情は隠せないわけで、少しだけ木兎君の後ろにそっと身を隠した。
大きくて頼もしい背中。
足元を見ると昨日と同じ室内シューズを履いていた。
ああ、また急いで私を助けるために駆け寄ってきてくれたんだ。
まるでヒーローみたいだと思った。
「あのなー痛いだけだと、何も伝えられないぞ?」
「……っ」
「ケンだっけ?◯◯のことが好きなんだったら、ちゃんと言葉で伝えないと」
「お前に何が分かるんだよ!」
「分かんねぇから言ってんだよ。少なくとも俺は◯◯をこんな顔にさせないし、思ったことは口で伝える自信はある」
確かに木兎君は思ったことを脳を通さずに口から出す。
それが仇となるときもあるけれど、今回ばかりは正しいことを言っていると思う。
「ほらほら、暴力なしで伝えてみなよ?なっ!」
そんな木兎君の真っ直ぐな言葉に当てられたのか、ケンは静かに話し始めた。
「俺、不安だったんだ。●●が俺から離れていくと思ったら耐えられなくて、縛り付けることをした。それが裏目に出てこのザマだけど……」
「ケン……」
確かに付き合い立てのケンは暴力とは無縁だった。
むしろ暴力どころかどこか自信のない人だった。
それがいつの間にか手を出すと思ったら、そんな理由があっただなんて。
なんだか、ケン1人が悪いわけではない気がしてきた。
「私も最初から向き合っていればこんなことにならなかったと思うの。ごめんね……」
「それじゃあ……」
「でも、私の気持ちは変わらないから」
「そうか……」
「最終的にはこんな結果になっちゃったけど、私はケンと付き合えて良かった。今までありがとう」
「そう言って貰えると救われるよ」
ケンはそれだけ言うとどこか寂しそうな表情を浮かべて去って行った。
「……」
「暗い顔すんなって!」
別れの現場に居合わせてしまったと言うのに、何故か木兎君は元気だった。
いや、居合わせたからこそ元気なのかもしれない。
「木兎君はいつも明るいね」
「んなことないって!しょぼくれモードがあるって部活内では言われてる!」
部活限定のモードなのかな?
「ちょっと気になる……」
「そんじゃ、また今日も部活見ていくか?」
ケンとの別れを紛らわそうとしてくれているのか、はたまた素で誘ってくれているのか。
どちらにせよ、今はありがたかった。
私は元気いっぱいの返事をした。
「うん!」
鏡よ鏡よ鏡さん、目の前で笑っている人は誰?
それは────。
ーーFinーー
「今日は一緒に帰れるんだよな?」
いつものように昇降口でケンが待っていた。
だけど私は彼に言わないといけないことがある。
メッセージアプリではなく、しっかりと自分の口から。
「……もう一緒には帰らない」
「はあ?」
ドスの利いた低い声。
だけど、怯んでたまるか。
私には木兎君が見守ってくれているから。
「あのね話があるの。私、ケンと別れたい。もう理不尽に怒られるのも、暴力を振るわれるのも嫌なの」
「誰に言われた……俺の知っている●●はそんな事言わない」
「誰にとかじゃなくて、これが本当の私」
「そんなの許さない」
「許さなくてもいい。でも、私はそうするから」
ケンの目を見てしっかりと言った。言ってやった。
口から出すと、案外あっさりとしている。
ケンを見ると拳がプルプルと震えていた。
もしかして泣いているの?
そう思ったけれど、大きな間違いだった。
「人が大人しく聞いていれば調子に乗りやがって……」
血走った目で拳が上げられた。
これは、殴られるやつだ。
ケンは外では決して暴力を振るわないのに、それほど余裕がないのか。
「っ……!」
私は咄嗟に目を瞑った。
いつも殴られているから、今日だけ耐えれば開放される。
そう思っていたのに、一向に痛みはやってこない。
目を開けると、そこには木兎君がケンの腕を掴んでいた。
「木兎君……」
「いや〜間一髪だったな!」
「またお前かよ!」
「おう、俺だ!」
自信満々な木兎君はケンの腕を離すと、私とケンの間に割って入ってきた。
「◯◯の腕の痣、やっぱりお前の仕業だったんだな!」
「……ちっ」
コイツにバラしたな、と言わんばかりの顔でケンに睨まれたけれど、別れを言った今では痛くも痒くもない。
だけど、怖いと思う感情は隠せないわけで、少しだけ木兎君の後ろにそっと身を隠した。
大きくて頼もしい背中。
足元を見ると昨日と同じ室内シューズを履いていた。
ああ、また急いで私を助けるために駆け寄ってきてくれたんだ。
まるでヒーローみたいだと思った。
「あのなー痛いだけだと、何も伝えられないぞ?」
「……っ」
「ケンだっけ?◯◯のことが好きなんだったら、ちゃんと言葉で伝えないと」
「お前に何が分かるんだよ!」
「分かんねぇから言ってんだよ。少なくとも俺は◯◯をこんな顔にさせないし、思ったことは口で伝える自信はある」
確かに木兎君は思ったことを脳を通さずに口から出す。
それが仇となるときもあるけれど、今回ばかりは正しいことを言っていると思う。
「ほらほら、暴力なしで伝えてみなよ?なっ!」
そんな木兎君の真っ直ぐな言葉に当てられたのか、ケンは静かに話し始めた。
「俺、不安だったんだ。●●が俺から離れていくと思ったら耐えられなくて、縛り付けることをした。それが裏目に出てこのザマだけど……」
「ケン……」
確かに付き合い立てのケンは暴力とは無縁だった。
むしろ暴力どころかどこか自信のない人だった。
それがいつの間にか手を出すと思ったら、そんな理由があっただなんて。
なんだか、ケン1人が悪いわけではない気がしてきた。
「私も最初から向き合っていればこんなことにならなかったと思うの。ごめんね……」
「それじゃあ……」
「でも、私の気持ちは変わらないから」
「そうか……」
「最終的にはこんな結果になっちゃったけど、私はケンと付き合えて良かった。今までありがとう」
「そう言って貰えると救われるよ」
ケンはそれだけ言うとどこか寂しそうな表情を浮かべて去って行った。
「……」
「暗い顔すんなって!」
別れの現場に居合わせてしまったと言うのに、何故か木兎君は元気だった。
いや、居合わせたからこそ元気なのかもしれない。
「木兎君はいつも明るいね」
「んなことないって!しょぼくれモードがあるって部活内では言われてる!」
部活限定のモードなのかな?
「ちょっと気になる……」
「そんじゃ、また今日も部活見ていくか?」
ケンとの別れを紛らわそうとしてくれているのか、はたまた素で誘ってくれているのか。
どちらにせよ、今はありがたかった。
私は元気いっぱいの返事をした。
「うん!」
鏡よ鏡よ鏡さん、目の前で笑っている人は誰?
それは────。
ーーFinーー
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